ニュース

いまだ破られぬ詰将棋の手数最長記録(1525手詰) 作者に聞く「盤上の『ミクロコスモス』はいかにして生まれたか」(5/5 ページ)

約30年前、22歳の若者が打ち立てた詰将棋界の金字塔。

advertisement
前のページへ |       

「ミクロコスモス」手順解説

 ミクロコスモスにおける玉の旅路を見ていこう。複雑に見える本作品だが、「と金送り」「持駒変換」「香の位置変換」「馬鋸」という4つの技法の組み合わせで構成されている。数学的に書けば「(と金送り+持駒変換)×香の位置変換×馬鋸」だ。技法同士の掛け算が、長手数を生み出す強力な仕掛けになっている。

初手▲4一歩成から、普通詰将棋史上最も長い玉の旅が始まる
軽い序奏を経て玉はと金で作られたベルトコンベヤーの上に。12~72、63の地点を往復し続ける。玉が初めて他の地点(13)に顔を出すのは1500手を超えてから!
ここで△8三桂と合駒をし、攻方の持駒の歩と交換になる。これが「持駒変換」の機構。繰り返し手順の中で歩、桂、香と自在に変換させていく
初手から154手かけて、13にいた香車を23に移動させた。香の位置変換。この香車は13~33を移動し続けることになる。イオニゼーションで導入された香を横に動かすという新機軸
▲7六歩が遠く99にいる馬での王手。この馬は99、89、88、78、77、67、66と移動していく。いわゆる「馬鋸」の動き
馬を66の地点に移動させるまでに1300手! イオニゼーションの機構に馬鋸をかけ算した威力
▲1三歩に△同玉で玉はベルトコンベヤーを脱出し上部に這い出す。条件というダイヤルを回し続け、カチリと鍵が開いた瞬間だ
ここで▲4八馬が詰将棋らしい絶妙手
▲2九金打まで1525手詰。51から始まった玉の旅は19(雪隠)でおわりを告げた。グランドフィナーレ

 現代の長編世界では「べき乗」「指数関数」の構造を持つ作品もあり、研究が進めばミクロコスモス越えの作品も出てくるかもしれないのだという。歴史は新しい記録の更新を静かに待ち続けている。

AMP 非対応のコンテンツです。こちらからご覧ください。

同上。こちらは英語による解説

※本記事の盤面の画像には、将棋GUIソフト「将棋所」を使用しています。



前のページへ |       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

記事ランキング

  1. 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
  2. 元「おニャン子」内海和子、娘・ゆりあんぬの“胃の粘膜ぶっ壊す”食事に激怒! 有名飲食店に謝罪し「出禁にして」「違う星の人そんな気がしてなりません」
  3. 「情報を漏らされ振り回され……」とモデラー“限界声明” Vtuberのモデル使用権を剥奪 「もう支えられない」「全サポート終了」
  4. 「恐ろしい」 北海道の道路標識 → “見落としたら絶望”のとんでもない表示に衝撃走る 「普通にホラーでは?」
  5. 優しそうな“おかっぱ頭”の男性→プロがカットしたら…… “別人級の仕上がり”が470万再生「えっ!? って声出た」「EXILEみたい」
  6. 平愛梨、“夫・長友佑都選手”に眠れなくてLINE送信→“まさかの返信”に「なんやねん」「もう寝るしかない」
  7. “無給餌”で育てたメダカが2年後、驚きの姿に→さらに半年後…… 放置しておいたビオトープで起きた“奇跡”に「ロマンを感じる」
  8. 「天才が現れた!」 森永が教える“秋らしい”お菓子の作り方→たこ焼き器を使ったアイデアに「すごいすごい可愛い」
  9. 固い着物をリメイクしてみたら…… 生まれ変わった“まさかのアイテム”に「しゅげー!」「凄い素敵です」
  10. 「上げ底の先」 その名に偽りなし、高専の文化祭に出現した「限界節約ホットドッグ」が本当に限界だった