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「コイツさえ倒せば、俺が世界一だ」 快進撃を続けるプロ格闘ゲーマー・GO1は”全米史上最高の天才”をどうやって倒したのか(2/2 ページ)

悟空とベジータのようなライバル関係。

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GO1: いや、大会に出ることはあるんですが「ドラゴンボール ファイターズ」以外のタイトルを積極的に練習することはないですね。

――GO1さんは「ストリートファイターV」でも実績を残していましたが、「ストリートファイターV」への復帰は考えていますか?

GO1: 「ストリートファイターV」は本気でやりこんでいない期間が2年くらいあるんです。今からはもう思い切りプレイしても最上位に追いつけるかどうか分からない。2つのタイトルをプレイすると、どっちのタイトルでも活躍できなくなるリスクがあるんですよね。サラリーマン思考の人間なので、安定を取りたいです(笑)。

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――なるほど。では活動を「ドラゴンボール ファイターズ」一本に絞るとき、迷いはあったと?

GO1: そうですね、「プロゲーマーだからストリートファイターもやらなきゃなー……」とは思ってたんですよ。この業界って「2D格ゲーのプロだったらストリートファイターVをやらなきゃいけない」という風潮があるじゃないですか

――(笑) 選手側もそういうプレッシャーは感じるんですね。

GO1: まず、この業界の空気がそうなんですよ。「プロ格闘ゲーマー=ストリートファイター」みたいな。某匿名掲示板でも「ストリートファイターが一番」という雰囲気がありますし、他のゲ―ムで活躍しても「有名プレイヤーがいないのに何を空き巣(※)してるんだ」みたいなこと言われるじゃないですか(笑)。そういうのが「ストリートファイターをやらないといけない」という空気につながってるかもしれませんね。

※空き巣:競争率の低い大会などで結果を出すことを指す格闘ゲーム界のスラング。

――少し分かる気がします(笑)。でも他の有名プレイヤーにも「ドラゴンボール ファイターズ」をプレイしてほしいという思いはあるんですよね?

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GO1: もちろんありますけど、もう複数のタイトルで勝てるような世界じゃないですから。実際僕も「ストリートファイターV」と両立しようとしたんですけど、絶対に片手間で勝てる世界じゃない。というか、一本に絞っていても勝てるかどうか怪しいですからね。

――ときどさんも「昔は今より全体のレベルが低いのでTOP8に入りやすかった」と仰ってました(関連記事)が、今はマルチゲーマーとして活躍できる時代じゃないのかもしれないですね。

GO1: そうですね、プレイヤーのゲームに取り組む姿勢が変わってきていますから。昔と違って情報が開放されていますし、インターネットで攻略情報がガンガン流れてくるので、そこまで知識上の差は無いんですよ。今は一本に絞っているプレイヤーがおのずと勝てるようになっているので、マルチで活躍するのはとても大変だと思います、やれたとしても……2タイトルいけたらすごい。

――話が戻っちゃいますけど、ソニックフォックスはそんな中でもほとんどの格闘ゲームで結果を出し続けているのがすごいですね……。

GO1: エグいですよね(笑)。僕らも頑張ればある程度上位にはいけると思うんですよ。例えば「2つのタイトルで両方TOP8に残りました」ということはあり得る。でも、「3つのタイトルで優勝」とかになってくると話が違います。“上位”と“最上位”の間には何枚も壁があって、1つに絞っているかどうかで最後の壁を破れるかどうかが変わってきますから。

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――なるほど。ただ、ソニックフォックスがすごいのはもちろんですが、彼に最も勝つ可能性が高いプレイヤーがGO1さんであるとも思います。GO1さんは自分に格闘ゲームの才能はあったと思いますか?

GO1: いやー……どうなんでしょうね。格闘ゲームは強くなるまでにものすごく時間がかかりましたし、普通の人よりも努力してきたと思っています。今はガードの上手さが褒められることが多いですけど、それも他のゲームでの経験値があるからこそなんです。自分で「強くなれた」と思えるまで、何年もかかっていますから。

GO1選手はガードの固さが最大の持ち味。あまりにガードが固いため「ガードでハメる」という言葉が生まれるほど

――ちなみに、今まででGO1さんがもっとも才能があると感じたプレイヤーは?

GO1: プロではないんですけど「にが」さんですね。2006年のときに「MELTY BLOOD」で日本一、2007年に「GUILTY GEAR」を始めてその年にも日本一になった人です。僕が「電撃文庫 FIGHTING CLIMAX」で活躍できていたころ、絶対の自信があったのに10先でボコボコに負けたりしてました。にがさんはソニックフォックスと同種の才能を持っていますし、今からでも一流のプロプレイヤーになれると思います。

EVO2018で起きた“流れ”を断ち切る盤外戦術

――これまでさまざまな大会に出場してきましたが、印象に残っている試合はありますか。

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 CEO2018のTOP48で当たったレッフェンとの試合は印象に残っていますね。

CEO2018 TOP48の試合:スウェーデンを拠点に活動するレッフェンとの一戦。GO1は最終セットで残り1体かつ体力がワンコンボ圏内の状態から相手の3体を倒しきり、逆転勝利した。3対3のチーム戦が繰り広げられる「ドラゴンボール ファイターズ」は控えキャラクターを呼び出しながら戦うのがセオリーであるため、1対3の状況になると逆転が非常に難しくなる(画像はTwitchより/試合は07:07:06付近から)

――「ドラゴンボール ファイターズ」プレイヤーにとってはとても有名な試合ですね。

GO1: このとき、過去に経験したことがないほど集中できたんですよ。突然それまで反応できなかったものに反応できるようになって、相手の動きが鮮明になって、なんとなく動きがスローになったように感じました。これまでも集中力が高まった状態になったことはあるんですが、あそこまでの状態になったことはないです。普段からあのぐらい集中していればいいんですけど、なんであんな状況になったのか分からないんですよね。

――フィジカルスポーツでよく聞くような「ゾーン」の体験と通じますね。

GO1: そうですね。ソニックフォックスに初めて負けた後の大会で王座奪還も狙ってましたし、EVOに向けて勢いを付けたかったので、このときは誰よりも勝利を狙っていたつもりです。だからこそ、ああいう状態になれたのかもしれないですね。

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格闘ゲームでもまれに「ゾーン」は起こりうるのかも(このツイートは「ももち」選手による2015年のツイート)

――ファンからすると、EVO2018の決勝でリセットしたときに席替えを要求されたシーンも印象に残っていると思います。流れを断ち切る明らかな盤外戦術だったと思うんですが、あの時の心境はいかがでしたか?

EVO2018の決勝:ルーザーズから勝ち上がったGO1は決勝でソニックフォックスと戦ってまずは3セットを先取。その後再び3セットを先取すれば優勝となるシーンで、ソニックフォックスは席替えを要求した。結果的に数分間のインターバルを挟む形となり、先に3セットを取ったGO1は流れを断たれる格好となった

GO1: ……まぁ「このままやらせろや」とは思ってましたよ、正直(笑)。このゲームは1つのミスで一気に逆転されてしまうので精度が大切なのに、いろいろ考えているところを英語でわーっと言われて……まぁ流れが変わったのは確かだと思いますけど、これを言い訳にはしたくないんですし、実際席替えが無くても負けてたと思いますよ。あの時のソニックフォックスはめちゃくちゃ強かったですから

――この時のソニックフォックスの行動には賛否がありましたが、彼も「絶対負けられない」という思いがあったでしょうし、なりふり構っていられない部分もあったのかもしれませんね。

GO1: そうだと思います。EVO2019では「もし逆の状況になったら絶対席変えたんねん」と思ってましたけどね、ウケ狙いで(笑)。ああいう場合は一回クールダウンしたあとなのでとまた熱さを取り戻すのは難しいんですけど、ときどさんみたいな心拍数を上げる動きをしていればまた違ったかもしれないですね。

――「マーダーダッシュ」と呼ばれる試合前のルーティンですね(笑)。有効なんでしょうか?

GO1: 有効だと思います。最近は心拍数を図るようにしてるんですが、心拍数を一度上げて下がってくる途中の状態が一番画面が見える実感があるんです。ときどさんはそういう意味でも先駆者ですね。

マーダーダッシュ:プロゲーマー・ときどが試合前に行うルーティン。その場で走るような動きをして、心拍数を上げ集中力を高めるのが狙いとされている

 もともと集中力を上げるために試合前の速読をやってるんですけど、これからは速読しながら走ろうと思ってます。見た目やばいですけど、本気ですよ(笑)。誰に笑われようとも、勝てたら良いんで。

「ウメハラさんやときどさんのように」

――ところで4Gamerのインタビューで読みましたが、「EVO2019」では試合前日にソニックフォックスと60戦も試合してたらしいですね。

GO1: 普通はそんなにやらないですよね(笑)。でも僕らはトーナメントで完全に真逆のブロックで、当たるとしたら決勝戦だったんです。すぐに戦うことにはならないことが分かっていたので、トップのプレイヤー同士一緒に練習して明日に備えようと思ってたんです。そうしたら、お互い本当に無敗のまま決勝で戦うことになりました(笑)。

 前日に練習した時、ソニックフォックスと「絶対に決勝で戦おう」と話してたんです。まぁ僕は「こっちはこんだけ仕上げて来たけど、お前はどうやねん」みたいな思いもあったんですけど(笑)。実際1200人ぐらいトーナメントに参加して、本当に2人が決勝で戦うなんてできすぎた話ですね。

――プロの格闘ゲーマーは試合中に笑顔をみせることがほとんどありませんが、「ソニックフォックス対GO1」の試合は2人とも笑顔を見せるシーンが本当に多いですよね。EVOの決勝であんなに楽しそうな姿はなかなか見られません。

GO1: めっちゃ楽しかったですね。決勝でソニックフォックスと戦うときは「来たか! 早くリベンジさせろ!」って思ってました(笑)。それに、大会中は怒りや焦りよりも楽しさを優先した方がメンタル的にも良いんですよね。だから相手がすごいプレイをすると笑っちゃうんです。「うますぎやろ!」って。

EVO2019のウィナーズファイナルで2-2のイーブンとなった後、最終セットの前に笑顔を見せる2人(画像はTwitchより)

――EVO2019で優勝が決まった場面、震える手でメガネを外すシーンも印象的でしたね。

GO1: 「プロになったからにはEVOで優勝したい」とずっと思っていたんですよ。いつまで最前線で戦っていられるかもわからないですし、2018年・2019年のEVOが自分にとって優勝の可能性が高いことも理解した上で「ここで勝たんかったらいつ勝つねん」って。

 2018年はギリギリのところで負けて、2019年も決勝まで来たら相手はまたソニックフォックスで、リベンジもしたかった。プレイ中はずっと落ち着いていたんですけど、最後の場面で相手の攻撃がスカってこっちの攻撃が刺さった瞬間から手が震え始めたんです。「このコンボを完走すれば勝てる」って。でも「まだ勝ってない」「ミスっちゃいけない」と思って安定のコンボを選んで、最後の技が確定した瞬間に震えが止まらなくなりましたね。

――あれは感動的な場面でしたね。ところで、もうすぐワールドツアーファイナルが開催されますが、注目の選手はいますか?

GO1: フランスのwawa選手です。アジア圏では僕が、アメリカではソニックフォックスが、ヨーロッパはwawaが地域を代表するプレイヤーなので、この3人に注目してほしいです。wawa選手は反応速度などのフィジカルが特に強くて、彼はすごく若いしまだ経験値が十分ではないですし今はまだ僕の方が勝ててますけど、将来的には厳しいだろうなと思えるほどのポテンシャルを秘めています。

――では最後に、今後の目標はありますか?

GO1: 年内の目標としては、ワールドツアーファイナルでの優勝と、EVOの中でもより注目度が高い3日目での優勝(※EVO2019「ドラゴンボールファイターズ」部門は2日目にファイナルが行われた)。あとは、「eスポーツのプレイヤーと言えば?」という質問に対して、ウメハラさん、ときどさんの次に名前が挙がるような価値のあるプレイヤーになりたいですね。

――順調に実績を積み重ねているわけですけど、ウメハラさんやときどさんの上に……という思いは無いんですか?

GO1: 目指したいです。ただ、昔よりは近づけたという実感はありますけど、まだ雲の上の存在かなと思うんで。

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