インスタを投稿しただけなのに世界を揺らしたテイラー・スウィフト Netflixドキュメンタリー「ミス・アメリカーナ」がすごい(2/2 ページ)
2018年、アメリカの音楽界で起こった“事件”。
映像を見ているだけでこうしたスケールのデカい体験ができるのは“主役”がテイラー・スウィフトだからだろう。ひとりの女性が人生を賭けた勝負に出る瞬間の表情を捉え、現実が変わっていくさまを見せる……これぞドキュメンタリーの醍醐味だ。
しかし、すでにニュースにもなっているように、テイラーが応援していた候補者は敗北。マスコミはテイラーをあおりまくり、テイラーは落胆するが、すぐに気を取り直して、新曲のレコーディングに向かう。そして自分の呼びかけに応じてくれた若者たちへ向けて、速攻でメッセージソングを収録するのだった。
ここにテイラーの2つ目の魅力がある。1つ目の見せ場が音楽性や政治的な立場などを「変える」ことなら、2つ目の魅力は、彼女がデビューから「変わっていない」ことだ。情熱的に音楽を作り、日常や自分の気持ちを歌に変えていくスタイルはまったくブレない。
テイラー、君に幸せあれ
ところで私は、かねてテイラー・スウィフトはアメリカの長渕剛なのではないか? と思っていたのだが、本作を見てその思いは確信に変わった。
2020年現在の長渕剛といえば、コワモテでギラギラしたイメージだが、60歳くらいの世代に長渕剛について聞いてみると、「出てきたときは爽やかで、かわいらしい感じだった」と、なかなか信じがたい話が返ってくる。私には長渕がテイラーとダブって見えて仕方がない。人間として見た目も考え方もドンドン変化していき、その人生が音楽にも反映される。この点が共通しているように思う(あとライブでアレンジしまくるところも)。
思えば若手カントリーシンガーだった頃から、テイラーの歌には長渕剛的な、熱い一面もあった。たとえば「Mean」の歌詞を引用したい。この曲は3枚目のアルバム「Speak Now」に収録された曲で、イジメについて歌っている。テイラーはイジメっ子に対して「イジメなんてやっていてもロクな大人になんないから、イイ加減にしとけよ」というスタンスで、こんなふうに歌っていたのだ。
Someday I'll be living in a big old city / And all you're ever gonna be is mean / Someday I'll be big enough so you can't hit me / And all you're ever gonna be is mean / Why you gotta be so mean?
「いつか私は、歴史ある大きな街に住む そして、あなたはイジメっ子のまま いつか私は、あなたが触れることもできないほどビッグになる そして、あなたはイジメっ子のまま なぜあなたは、イジメっ子なんてやってるの?」
変わる部分もあれば、変わらなくてもいい部分もある。とにかく人としてのスジを通して、後悔しないように生きろ――本作のテイラーからは、そんな本当の意味での自由を感じることができる。「ミス・アメリカーナ」はテイラー・スウィフトの変化の過程を切り取った映画であり、彼女が持っている熱い一面を見せてくれる1本だ。
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