助けてください 「ファイナルファンタジーVII REMAKE」は「龍が如く」なんじゃないか? という妄執にとらわれています
PCゲームや海外ゲームをこよなく愛するライター、文章書く彦さんによる不定期コラム。
最近僕がずっと考えていることがある。きっと君は笑い飛ばすだろう。でも、僕はそれなりにシリアスだから、ひとまずは怒らずに聞いてほしい。僕が考えているのは「ファイナルファンタジーVII REMAKE(以下、FF7R)」は「龍が如く」なんじゃないか? ということだ。は? いや、そうだよね、分かる。きっと困惑する。そんな顔になるのも当たり前だ(驚いた顔を想像しています)。
「FF7R」は「FF7R」であって「龍が如く」ではないのだから当然のことだ。多分、これは枝葉の話だけをしても分からないだろうから、根っこから話さなければいけない。そしてその話は少々長くなるだろうし、最後まで聞いても何も分からない場合もあるかもしれない。でも、ともかく、今僕は「ファイナルファンタジーVII REMAKE」は「龍が如く」なんじゃないか? という妄執にとらわれ、夜も眠れないというありさまになっている。うそだ。よく寝ている。寝てはいるが、この題材についてよく考えているというのは本当だ。だから、我慢して聞いてほしい。
発売まで1週間をきった「FF7R」、原作ファンやシリーズファンのみんなはさぞや楽しみにしていることだろう。原点である「ファイナルファンタジーVII(以下FF7)」が発売されたのはもう20年以上も前のことだけれど、当時「FF7」がもたらしたインパクトのことは鮮明に覚えている。「オープニングムービーの容量だけで『ファイナルファンタジーVI』のソフト容量を超えている!!!」という宣伝文句が謳われていて、当時まだ小学生だった僕は素直に「スゲー!!!」と関心したものだった。今から考えれば「そりゃ動画ファイルの容量は大きいでしょ」って話なんだけど。ともかく、「FF7」のインパクトは「ゲーム新時代の始まり」の象徴のように感じられたし、事実「プレイステーションではこんなことができますよ!」という最新技術のショーケースみたいな側面のあるゲームだったように記憶している。ファンタジーとサイバーパンクSFが混ざったような世界観も斬新だったし、キャラクターも美男美女ぞろいで(それが原因かは分からないが)女性ファンもかなり多い作品だ。
ところで、「FF7R」は3月2日から体験版が配信されている。長年待たされた期待のリメークだということもあって体験版ですら大きな話題になったし、配信開始したタイミングでは一時「TOBAL No.1」がトレンド入りするなど一種のお祭り騒ぎがSNS上では起こっていた(一応補足説明をすると「TOBAL No.1」とは「FF7」の体験版を同梱していることで当時話題になった3D格闘ゲームで、いまだにその印象が強いせいか「実質体験版」「体験版についてくるオマケ」「鳥山明の無駄遣い」「ドリームファクトリーが元気だったころ」などといった不当な誹りを受け続けているかなりふびんなゲームだ。)。僕はそんなにやるつもりなかったんだけど(正直言って買うつもりもなかった)「まあ、SNSで話題になっとるし、やるか~」ぐらいのテンションで遊び始めたのだった。そしたらなんとこれが、「龍が如く」だったのである。
さて「龍が如く」シリーズの説明をしよう。「龍が如く」シリーズは恐らく世界で最も有名なヤクザが題材のゲームシリーズで、ついこの間最新作である「龍が如く7 光と闇の行方(以下龍が如く7)」が発売されたばかりだ。人並み以上に聡いねとらぼの読者諸君であれば察したかもしれないが、くしくも「7」である。一致……しちゃってるんだよね。
「龍が如く7」は(システムなどに賛否両論あるが)ストーリーやキャラクター描写が非常に巧みでべらぼうに楽しいゲームに仕上がっており、これまで多くのファンの中でシリーズ最高傑作とされてきた「龍が如く0 誓いの場所」に匹敵する、との声もちらほら上がっている(僕もそう思う)。まったくの余談だが、ゲーマーの間で「『FF』シリーズの最高傑作はどれか」などという話を始めようものなら血みどろの抗争に発展するのに対して、「龍が如く」シリーズのファンの前で「0が最高傑作だよね~」と軽率に言っても多分怒る人はいない。
と、こう書くと「FF7R」と「龍が如く」は最新作が「7」である点を除いてまったく似ていないように感じるだろう。似ているところをあえて書いてこなかったからだ。言い換えるなら、今まで書いてきた要素以外全てが同じである。もしかしたら「すべて、は大げさだ!」と思うかもしれない。はい、大げさです。全てが同じというわけではないですが、ここから「この部分が同じだ」と特に感じた部分をピックアップして紹介していこうと思う書く彦なのであった。
コマンドバトルRPGとアクションRPGのすれ違うところ
まずはちょっと真面目っぽいポイントから。「FF」シリーズは長きにわたってコマンドバトル形式を採用してきたシリーズだ。対して「龍が如く」シリーズは恐らく「アクションRPG」に分類されるであろうシリーズである。いや、あった、というのが正しいだろうか。「龍が如く7」では今までのアクション的な戦闘が、コマンドバトル形式へと変更されている。そして「FF7R」はかなり(コマンドバトルも選択できるが)アクション寄りの戦闘スタイルになっている。
前作である「ファイナルファンタジーXV」の戦闘もアクションRPG的な要素があったが、体験版をプレイした手触りとして「FF7R」の戦闘は、よりシンプルに□ボタンを連打して戦うような「普通のアクションRPG」っぽい感じがした。かつての「龍が如く」シリーズの手触りにも近い。無論似たような操作のアクションRPGは山ほどあるからこれだけを根拠に両作が似ていると言うことはできないが、出発点はかなり違うはずなのにお互いがお互いのゲームジャンルに近づいていってついにすれ違った、というように感じられる点が面白い。ほら、意外と真面目だった。
一都市が舞台
「FF7R」は分作であり、今作だけでは物語が完結しない。今作で描かれるのは「ミッドガル脱出」までだという。つまり、今作は物語がミッドガルという都市から出ない、一都市を舞台にしたゲームだということだ。
「龍が如く」シリーズも元はといえば新宿歌舞伎町がモデルの「神室町」を舞台としたゲームだ。シリーズ作が続くにしたがって行ける都市が増えたりもしたが大まかに「街」のみを舞台としているところが共通している。あと歌舞伎町なんて海外の人がみたらちょっとサイバーパンクっぽいって思うんじゃないスかね。ちょっと無理やりな感じがするように読めるだろうけど、「FF7R」がミッドガル脱出までを膨らませまくった作品であるなら、ミッドガルの中で街中のお使いクエストを頼まれたりもするだろうし、そうなった場合プレイ感覚はかなり似てくるのではないだろうか。あくまで予想である点ご留意されたし……。
人気シリーズの過去作を現代技術でリメークしている
「龍が如く 極」は1作目「龍が如く」のリメークで、コンセプトが「FF7R」に似ている。過去の人気作を最新の現代技術でリメークというのは珍しい話ではないが、いまだに続く長寿シリーズでナンバリング最新作と並行するように発売されるという例はそれほど多くないように思う。「ポケットモンスター」シリーズぐらいしか後は思い付かない(「ドラゴンクエスト」シリーズでもかつてリメークは行われていたが最近はごぶさたある)。そういえば「龍が如く7」では「ポケットモンスター」のパロディーも行われていたが、そのあたりの文脈を踏まえたものであろうか? 違います。
プロレス
「FF7R」のバレットさんは見た目がかなり蝶野正洋に似ている。蝶野正洋に似ているのでさぞかっこいいんだろうなーと思って体験版をプレイしたらマジで馬鹿みたいな喋り方なのでかなりつらかった。
そして「龍が如く 極2」には蝶野正洋本人が登場している。ガッデム!!!
3D格闘ゲームとうっすら関係している
前述の通り、「FF7」の体験版が3D格闘ゲームである「TOBAL No.1」に付属しいてたことは有名なエピソードである。
間をすっ飛ばして話すが「龍が如く」シリーズのルーツをたどっていくとそこには3D格闘ゲームの草分け的な存在である「バーチャファイター」シリーズがあり、ミニゲームとして遊べたりもする。
美的感覚
これは完全に個人の主観なのですが、「FF7R」の美的感覚は……なんというかこう……ダサ、いや、独特だ。昔のものを当時の雰囲気を残して現代技術にアップデートしたことのズレみたいなものがフルに展開されていて非常に居心地が悪い。
前作「FFXV」はよく「ホストによるスタンド・バイ・ミー」みたいに揶揄(やゆ)されていたが、ホストにしたって一昔前のホストだし、そもそもこのリアルさだとノースリーブなのがいやだし(後日談という設定なのでおかしいことを承知でいうが「ファイナルファンタジーVII アドベントチルドレン」の片袖生えてる服だったらもうちょっと許容できた)……いや、カッコいいと思っている人がいるならそれを否定するわけではないけれど、他のゲームに比べて独特なのは間違いないだろう。
「龍が如く」シリーズにはヤクザのみならず裏社会や水商売なども描くシリーズなので当然ホストも登場する。そういう業界にありがちなちょっとヤンチャなファッションが誇張された形でゲーム内に現れるので、われわれのようなパンピーから見るとかなり独特のセンスに感じられる。「龍が如く」シリーズがダサいのにはきちんとダサいなりの理由もあるし、そういうものだ身構えてからプレイしているのであんまり気にならないけどね。あっ、ダサいってついに言ってしまった。
いやマジな話、前から常々野村(哲也)さんと名越(稔洋)さんのセンスには通底してるものがあると感じていて「龍が如く」における「ゲスト芸能人」と「キングダムハーツ」における「ディズニーキャラクター」って同じことなのでは? みたいなことを考えていたので、「FF7R」の体験版は我が意を得たりみたいな感じだった。
総論
他にも「はしごの上り下りする感じが似てる」とか「会話のテンションが大げさな感じが似てる」みたいな感覚的かつ細かい点もいくつかあったが、ここでは割愛し確度の高い類似点を列挙するに留めた。確かに一つ一つはとるに足らない証拠だが、これだけ挙げると恐らく君にも似ているように思えてきたはずだろうと思う。思えなかったらごめん。
もちろん「一都市モノとしてプレイ感覚が似てくるのでは?」など予測にすぎない点もある。現段階では「FF7R」が「龍が如く」なんじゃないか? というのはまだ確かめようのないことなのだ。発売まであと数日。本作が本当に「龍が如く」なのかどうかは、読者諸君が一人一人、自分の手で確かめてみてほしい!
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