付き合ってデートやキスをしたいのはいけない事ですか? 「かぐや様は告らせたい?」2話 かぐや脳内法廷は大騒ぎ(1/2 ページ)
かぐや様、がんばりましたね。
恋愛は告白した方が負け! 「かぐや様は告らせたい?~天才たちの恋愛頭脳戦~」(原作/アニメ)は、相手から自分に告白させるためにあらゆる知力体力を用いて戦うエリートたちを描いたラブコメディーの第2シーズン。とってもいとしくてとっても面倒くさい少年少女の、青春の無駄遣い物語。距離はどんどん近づきます。
下賤(げせん)の女
財閥の令嬢にして生徒会副会長、四宮(しのみや)かぐや。努力家の生徒会会長、白銀御行(しろがね・みゆき)。2人は自らの意地とプライドにかけて、自分からは告白しない、相手に告白させる、と心に決めて戦い続けている間柄。
今回はかぐやが以前から約束していたウィンドウショッピングに挑戦。御行のための誕生日プレゼントを買うのにももってこいのタイミング。
とはいえ、かぐやは超箱入りお嬢様。実は今まで自分で服を買ったことすらない。なので今回の彼女の興味は、御行の妹・圭に向かいます。妹に聞けば御行の欲しい物も分かるはず……と思っていたのですが……。
圭の凛とした様子からにじみ出まくる、御行的オーラ。適切に話しかけてくれる距離感や、さりげない気遣いはまさしく御行の妹。かぐや、メロメロです。
御行と圭の兄妹はいい塩梅な関係なのがこの作品全体を通じて描かれています。一応圭は「私は兄とはそんな仲良くないですよ」とは言っていますが、それは思春期的なサムシングに見えます。話題には頻繁に出てくるあたり、関係は良好。
ろくでなしの父親の元、節約しつつバイトでお金を稼ぎ、コツコツ真面目に勉強をする。2人とも正義感が強く、気配り上手です。兄の振る舞いを見て自然と学び育ったから、なんでしょうか。
ショッピング中、圭とかぐやの目の前を歩いていた女の子が転んでしまいました。それをとっさにかばう圭。擦りむいた膝を、自分が買ったばかりのハンカチでしばって、手当をしてあげます。
圭と御行の家は本当に貧乏です。自分たちが日々生きていくのに精いっぱいで、爪に火をともして生活しています。けれども彼女は、買ったばかりの大切なハンカチを惜しげもなく、少女のために使いました。
「でも これが一番良い使い方でしょう」という一言を、顔色を変えずしっかり信じて語る圭。御行に似ている!
御行はどんな行動でも論理的に考えて動くので、基本焦ってたじろぐことがありません。自分が間違いないと思ったら、一切迷わず行動に出ます。その際優先されるのは、自分のことではなく人のためになること。割と博愛精神なところがあるのですが、その際に自分の感情をあまり出しすぎず、クールにこなすのが御行スタイル。圭の行動は紛れもなく御行に近いものでした。ここまで来ると、似ているを通り越して血なのかもしれない。
学校であらゆる人に優しい御行。「家では酷いもの」という圭の話によると、御行が圭の誕生日にこっそり財布に千円入れるプレゼントをして、ウソをつくのが許せないらしい。
かぐやの中の御行と圭の株は爆上がり。圭の存在は「家庭での、会長ではない素の御行」を知ることができる貴重なルートになっています。今回はまだ「圭=御行」みたいに見ている部分がありますが、次第に圭本人の魅力にもかぐやはどんどん引かれていくのも、見どころの一つ。割とでき愛しています。
一緒に買い物に来ていた藤原書記。普段からスキンシップ過多な彼女ですが、今回圭にすりすりするのはかぐやの逆鱗(げきりん)に触れた様子。「なんの躊躇いもなく男に躰を預ける性欲の化身」って、御行と圭の境界線曖昧になってないかい。もっともかぐやは、心がプラスマイナス問わず大きく動いた時、そこに割り込む藤原書記に感情のゆらぎを全部恨みに変えて、ぶつけるのがくせになっているような気はちょっとする。
なお今回はあまり描かれませんが、圭はかぐやにものすごい憧れを抱いている子です。できればかぐやと2人でお出かけしたい、と願っているほど。かぐやに「圭」と呼び捨てにしてほしいと圭は伝えているのですが、これがかなったのがうれしかったらしく、家に帰って兄に「かぐやさんに下の名前で呼び捨てにされちゃう仲になっちゃってえ」と自慢。兄妹そろってかぐや大好き。好みのタイプも似るんだろうか。
かぐや脳内法廷
かぐやは時折客観視できず、極端な思考になりがち。今回もいざ二人きりの誕生日パーティーを決意した後、すっかり舞い上がってウェディングケーキばりの巨大ケーキを作ってしまうかぐや。我に返ったのは、御行にプレゼントを渡せるタイミング、二人きりになってからです。お祝い事は準備中が一番楽しいし、仕方ないね。
客観視が苦手だと理解しているからなのか、彼女の脳内では思考が入り乱れると、脳内法廷が開催されるようです。
弁護人かぐや(アホ)「会長の誕生日は盛大に祝わないと! その為なら多少恥ずかしくても我慢しなきゃ!」
検察官かぐや(氷)「そもそもそれが間違ってるのよ どうしてあの人の誕生日を私が祝わなければいけないの…」
ケーキを準備していた時のかぐやが「アホ」の方です。冷たい視線で感情を封じている状態が「氷」。
頭の上で天使と悪魔がせめぎ合うのに雰囲気は似ていますが、それよりも少々複雑。善悪ではなく、それぞれがかぐやの持っている人格・ペルソナになっています。なので答えはこの法廷では出すことができないのが特徴。
弁護人かぐや(アホ)「会長の喜んでる顔が見たいでしょ? お話出来たら嬉しいでしょ?」「付き合ってデートもしたいしキスだってしたい その先だって…でもそれってそんなにいけない事?」
検察官かぐや(氷)「私たちは由緒正しい四宮家の人間なのよ 人を使い従えるのが家憲 逆に籠絡され献身するなんてあってはなりません」
双方の人格は、成長の過程で現れたもののようで、「氷」は「アホ」を「新参者」と呼んでいます。厳格な由緒正しき家の厳しさの中育つ際に生まれたのが「氷」、昨年から御行を好きになってすっかり乙女化してから生まれたのが「アホ」のようです。それ以前の純朴なかぐやの人格は「幼」として、中立的裁判官の姿で登場しています。
自らを客観視しようとしすぎた結果、自分を押し殺してしまったのが「氷」の意見。社会に出てより多くの人間と関わればよりいい男性に出会える、というのは極めてまっとうな意見であると同時に、現在進行形な恋愛感情そのものの否定にもつながります。
こうして見ると、自分の優柔不断な部分を、家のせいにして逃げているようにも聞こえます。理屈としての「氷」は正しいけれども、真意としての「アホ」は「会長よりかっこいい人なんてこの世に居ないから」と理屈もへったくれもない反論でブチギレ。今の思いを言葉にしたものとしては極めてシンプルで正直。
結局この法廷では、裁判長かぐや(幼)は結論は出してくれませんでした。アホも氷も全て自分の意見。決めるのは被告人かぐやです。
巨大ケーキは封印、派手さのひとかけらもない道をかぐやは選択しました。御行に渡したケーキは一切れ。誕生日プレゼントは扇子。渡してすぐ彼女は生徒会室を去ります。
もし仮に他の人に流されてよそよそしくお祝いしていたとしたら、自分の思いに向き合うことはできなかったはず。かぐやが自分で御行に対してのお祝いを選択し、準備し、決断し、渡した。この一連の努力が伝わったのか、御行は赤面して「うわ嬉しい!! なんだこれ!!」と一人で大喜び。
なお「磨穿鉄硯」の字入れは、かぐや本人が行ったとのこと。どんな顔で書き込んでいたんだろう。
今まで自分から好意を伝えることはできなかったけど、今回はかなり直接的。近侍の早坂の「がんばりましたね」の言葉にうなずくしかない。
面倒くさい脳内法廷で戦って選択をし続けてきたかぐや。今回はきちっと自分で選択できましたが、この複数のかぐやの人格は原作では非常に重要なものになっています。この回はちょっとだけ頭の隅に置いておくと、より「かぐや様」ワールドを楽しめるはずです。
ピンチの時に便利な藤原書記
「かぐや様」で楽しいのは、ちょっとロマンチックな出来事があった場合、その後日談もちゃんと描かれること。クライマックスな事件のあとも、日常は続きます。
今回は「かぐやが一人で御行の誕生日をお祝いした」というとてもいい話で終わればいいのに、そこから「告らせ」合戦がはじまってしまったから面倒くさい。
かぐやは「私には誕生日を教えてくれたのに他の人には教えてなかった」「会長は自分にだけ祝ってほしかったのでは」というネタフリを藤原書記に吹聴してしまいます。一方御行は「かぐやは1年前生徒会名簿を見て知っていただけ」「みんなに内緒にしていたのでは」と反論。せっかくのかぐやの頑張りを台無しにするような、必要のない頭脳戦スタート。
かぐやが「好きだから一人でお祝いした」というのは事実だし、御行が「かぐや一人にお祝いされて嬉しかった」というのも事実。だからこそここで気を抜くと「告る」側に確定で回ってしまう。
今回のトラブルを収束させたのは、藤原書記の存在でした。
恋バナ大好きな藤原書記。2人の関係に興味津々で大騒ぎしておきながら、実は誕生日を知らなかったのは藤原書記だけだった(もう一人の生徒会役員・石上は知っていた)、という悲しいオチ。土俵際の2人の戦いはあえなく終わったのでした。
藤原書記は空気が読めないし、読まない子です。そのためかぐやと御行には邪魔になることが非常に多い。パックマンを追ってくるモンスターみたいな「避けるべき相手」扱いのことが多々あります。
ウザかわいさが極まっているからこそ、痛い目にあうことでより輝けるバランスのキャラクター。正直今回の「藤原先輩だけが!?」はかなりかわいそうなシチュエーションで、何も悪いことはしていないことを考えるとちょっと痛々しくはあります。ただ「藤原書記」というキャラの強さと、今回の表現のうまさ(原作のこの顔もインパクトがあるし、アニメでの演出の力の入れ方もすごい)で、より藤原書記が愛らしく見えるおいしいシーンにまとまっています。
コメディーリリーフとして作品のシリアス度のバランスをうまく調節してくれる、愛されキャラ藤原書記。周囲に巻き起こる恋の嵐をぶった切るキャラとして二期目も大活躍の予感。また踊ってくれないですかね……?
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