生徒会、これにて解散! 「かぐや様は告らせたい?」3話 会長が会長ではなくなった日(1/2 ページ)
一生に一度のわがまま。
恋愛は告白した方が負け! 「かぐや様は告らせたい?~天才たちの恋愛頭脳戦~」(原作/アニメ)は、相手から自分に告白させるためにあらゆる知力体力を用いて戦うエリートたちを描いたラブコメディーの第二シーズン。とってもいとしくてとっても面倒くさい少年少女の、青春の無駄遣い物語。距離はどんどん近づきます。
1年の任期を終え、生徒会活動もついに終了。4人のつながりは一度リセットされることに。御行会長は、会長ではなくなります。
団子より星、そしてかぐや姫
財閥の令嬢にして生徒会副会長、四宮(しのみや)かぐや。努力家の生徒会会長、白銀御行(しろがね・みゆき)。2人は自らの意地とプライドにかけて、自分からは告白しない、相手に告白させる、と心に決めて戦い続けている間柄。
3話の1本目は原作の56話にあたる、御行のロマンチストっぷりが見られる回。普段は冷静沈着なのに、十五夜のお月見で異常にテンションがあがりまくり。実は天体好きでかつての夢が学者だった、という御行はお餅もうさみみ(藤原書記用)もしっかり準備万端。
本来は生徒会の面々全く興味を持っていませんでした。藤原書記ですらローテンション。そもそも祝い事に興味がない御行が突然言い出した十五夜イベント。他の3人がこの話に乗ったのは生徒会が間もなく解散だからでした。
かぐやは月や星には興味ゼロです。「月なんか見て何が楽しいのかしら」と風情のかけらも感じない。彼女がお月見に参加したのはムードがある中なら会長を照れさせて追い込めるのではと考えたからです。月よりお餅な藤原書記。月より恋愛なかぐや。
御行は今回、プライドも羞恥心もなく星に心を委ねています。そのくらい真剣に天体が好きなんです。かぐやは「私より星にご執心だっていうの……?」と仰天していますが、そうじゃないんだよなあ、好きの枠が別なの、男の子だもの。一度夢中になったら一切ぶれないのは、御行の魅力の一つ。
普段だったら絶対しないような、寒がっているかぐやに上着フワァ、かぐやを星が見やすいように抱き寄せ、見上げるために密着して寝そべり……と恋愛視点だとかなり勢いよく上限突破した行動を取ります。でもこれ例えば親子で星を見る場合なら至って普通の行動だったり。視点の違い。
月の話を二人がし始めたとき、かぐやは「月は嫌い」と語ります。「夜空を見上げれば 愛する人を残し 月に連れ帰された女の物語を想わずには居られません」
それに対しての御行の見解。不死の薬は「いつか私を迎えに来て」というメッセージだったのではないか、と考えます。「私はいつ迄も待ち続けます」という思いだったのではないかと。
「俺なら絶対 かぐやを手放したりしないのに」「俺なら月まで行って奪い返す 絶対に」「これが俺たちの物語だったら 言葉の裏をこれでもかと読んで あんな結末にはならないだろうにな」
御行、かぐやをオーバーキル。そういえば花火のときも真顔で超かっちょいいことしれっと言いましたね。
彼のロマンチスト気質は、テンションが上がったときに唐突に発揮されます。今回は大好きな天体のおかげで蓋が開きました。いうなれば、この一見かっこつけのように聞こえる発言こそが、彼の普段見えない本心の部分です。本当に彼は、かぐや姫を「俺達の物語」だと重ねることができる情熱の持ち主。
この恥ずかしい、でも頼もしい「かぐや姫絶対奪い返す」思想は、以降の御行の情熱っぷりにちらほら見えるようになっていきます。飾っているように見える彼の飾らない思いが描かれる際、このエピソードは彼の思いを探るヒントの一つになるはず。
さらば楽しかった日々
1年の生徒会任期終了は、夏休み明けすぐの出来事。今まで生徒会役員だった御行、かぐや、そして藤原書記、石上はこれにてお役御免。藤原書記は何をしたのかよく分かりませんが、他の3人は超優秀な役員でした。
御行とかぐやの恋愛ゲームと、藤原書記のせいでしっちゃかめっちゃかだった生徒会の日々。それも今日にてさようなら。御行は次期会長に立候補しない予定です。
みんなドタバタ笑いながら生徒会室を去ろうとしたとき、こらえきれず涙をこぼしてしまったのは藤原書記。それでも彼女なりに、我慢はしようとしていました。でもおさえられなかった。ポロポロ流れる涙と垂れる鼻水。藤原書記はこういうときにうそ偽りがないので、見ていて本当に切ない。原作でつられて泣いちゃった人、多いと思います。
4人それぞれ、自分たちの気持ちを胸に抱えて、生徒会に背を向けます。このときの石上の表現が絶妙。彼がなぜ生徒会にいたかのルーツを知ればさらに味が出てくる、非常にエモーショナルな描写です。
とはいえ何もかもをやりきり、後腐れなく生徒会を去れるのが優秀な彼らの生き方。後悔はせず次のステップに踏み出します。
そうなると気になるのが呼称。今まで特に御行のことは、全員が「会長」と呼んでいました。でもこれから先は会長ではなくなります。なんと呼べばいいのだろう?
「御行くん」などどう呼ぼうかシミュレーションして悩んでいたかぐや。それに対してあっさりと「みゆき君」呼ばわりする藤原書記。いやそうだけどさ、あってるけどさ、そんな簡単に手のひら返すの軽くて薄すぎない? 石上に至っては「みゅー先輩」呼ばわり。かわいいじゃん。呼びたいでしょうかぐや、「みゅーくん」って。
御行が会長を続けないのは、勉強に専念するためです。そもそも今まで会長を務め、勉強でトップを取り、貧しい家を支えるためバイトをする、という生活に無理があった。彼ほとんど寝ていません。彼の目がきついのは、睡眠不足のため。
生徒会活動に対しての後悔はないけれども、生徒会のつながりに対して寂しさを感じているのがかぐや。冷徹だった自分が心を開き、親しい仲間ができた場所です。生徒会が続けばいいのにな、と感じてしまうのも無理はないし、それがわがままなのも承知の上。
「これまでの日々はもう終わり 毎日夢を見ていたと思えば良い わがままを言っちゃ駄目…」
彼女がいかに、生徒会室での日々を大切に、幸せに感じていたかが分かりモノローグです。このあたりは1期で、彼女が花火大会に家庭の都合で行くことが出来ず、涙を流して耐えていたあたりからも分かります。
そこで、辛くとも我慢しなければと歯を食いしばっていたのが1期のかぐや。しかし2期のかぐやは「御行には甘えてもいい」と、花火大会で救ってもらった経験から成長しています。
「一生に一度のわがままです 私は 会長は 会長が いい……」
言い換えれば、生徒会の日々をもう1年続けたい、ということ。気になるのは「一生に一度」と言ってしまっていることです。かぐやほどの家庭の令嬢であれば、その言葉は軽率に使えないのは重々承知のはず。
恐らく今まで、高校1年から2年の生徒会での日々ほど、幸せなことはなかったのでしょう。そして「わがまま」なんて言ったことなかったのでしょう。ずっと耐えてきたからこその、初めてのわがまま。ぶっちゃけこの後に彼女がわがままを言う機会なんて、大人から見たらどこかであるのは想像できます。ただそれは人間関係が変化していく中での話。彼女にとってこのわがままは、一生分だろうと彼女自身が感じるほど大きい。
これをさくっと引き受ける御行が超かっこいいのですが、会長になるのは簡単じゃないし、1年続けるとなるとさらに心身を削ることになるわけで。彼が申込書を先生に提出する際の「一生に一度 根性見せるときが来てしまったみたいで」という発言にも、重みが見えます。彼もまた、余裕に見せかけて水面下で必死にもがく白鳥のようなもの。
次回、生徒会選挙にあわせて新キャラクター登場です。この作品に出てくる子ですから、普通なわけがない。性格的にも、コミュニケーション面でも問題児。現在連載中の原作を追っている人なら、胸がギューッとなっちゃうあのキャラの登場です。
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