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クリエイターに聞く「今、どうですか?」 声優の収録、漫画家、トークライブハウス、音楽家、ライター──それぞれの実情(2/2 ページ)

収入に加えて、創作活動自体への影響もあります。

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手も創作意欲も止まってしまう

高田なみさん──シンガーソングライター。高田さんは、舞台演劇やミュージカルを経て、2007年に初のソロアルバム“nami ~The good days J-pop~”をリリース。その後コンスタントに音楽制作、ライブ活動を行うアーティスト。名曲「夢で逢えたら」ばっかりを収録した異色のトリビュート作品集『大瀧詠一作品集Vol.3』にも参加し、またボーカルトレーナーとして『「声」磨きは「自分」磨き ~生まれ持った声を生かすレッスン~』という著作も発表なさっています。音楽もまた、かなり影響が大きそうな分野ですが……(高田さんとのやりとりは、メールで行いました)。

『Nami Oto』(日本を代表するジャズバイオリニスト・中西俊博との初コラボが出色)

『「声」磨きは「自分」磨き ~生まれ持った声を生かすレッスン~』


 新型コロナウイルスの影響は一言、「ど真ん中に直撃」という感じです。

 歌手としてはライブスポットの休業、イベントの中止などで活動休止。ボイス・ボーカルレッスンのお仕事も密閉、密接なので自粛、レッスン担当の大学や専門学校も休校ですから、見事にすべてストップしています。

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 ソングライターとしては自宅で曲作りなどはしていますが、今回、このコロナによる心理的な影響もあってなかなか思うように進みません。

 普段はカフェや出先で作詞をする(雑踏の中で人の声・表情・空気感を肌で感じながら書く)スタイルが私の定番のやり方だったのですが、今のように静かな家で一人で作詞するとなると、どうしてもテレビやネットでコロナの情報を見てしまい手も創作意欲も止まってしまう、集中できない、という状況になっていました。時間ばかり過ぎて創作が進まない……、これも現在悩みどころですね。

――そうした状況に、どう対応していますか?

 歌手活動では、人を集めてライブが出来ない分、動画コンテンツの配信や、オンラインライブなど。

 今まではわりと現場主義というスタンスで活動して来たので、動画のことは考えつつも実現を先延ばしにしてきたんです。皆がすでにやってたことをやっと今、真剣に考えてるという感じですね。やり始めるとこだわるタイプなので、実用が早いか、コロナ終息が早いか、というところでもありますが。

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 曲作りについてはひたすら心をクールダウンさせることを試みています。たまには情報から離れる時間を作って自分のペース&スペースをつくることも必要。

 テレビも携帯もオフにして、窓を開けて新鮮な空気を吸ったり、ベランダで思い切り背伸びしたり。

――新型コロナが終息したら、どのような活動をしたいと思いますか?

 もし新型コロナ以前のような環境で仕事ができるようになったら、新しいアルバムを完成させて色々なところでライブをしたいです。

 また、今回の経験を活かして動画コンテンツも使い、幅広く活動できたら、さらにうれしいですね。

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 レッスンにおいても、オンラインレッスンも取り入れ、遠隔地の方にもレッスン受講してもらえたらいいなと思います。

 最終的には歌もレッスンも、今回の「特別な不自由」との闘い方次第では、きっと先々の更なる飛躍に繋がるんじゃないでしょうか。

――フリーランスへの助成については、どのようにお考えですか。

 私個人としては、職種や所属、仕事のスタイルに関係なく、皆相応の助成(給付)を受ける権利があると思いますし、みな受け取ればいいと思います。不要な人は辞退できるようにすればいいのではないでしょうか。

――自粛の日々を過ごしている、みなさんにひとこと!

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 気持ちが負けそうになったら窓を開けて外の空気を吸い、いつか必ず来る夜明けを楽しみに待ちましょう!

打ち合わせや取材が強制的に電話かオンラインに

石山真紀さん──フリーライター。スーパーやコンビニ、ドラッグストアの店頭で扱う食品や日用品、サービスを、バイヤーや経営層に伝える流通業務系専門誌を中心に執筆する。ちなみに愛猫家でいらっしゃり、猫や旅を主題にしたカレンダーやブックレットも製作なさっています。もともとゲーマーだっただけに、回線環境や機材などを含め、リモートのやりとりは慣れていたといいます(取材はZoomを通して行いました)。

石山さんのTwitter:@juriism


 私がかかわる媒体では主にスーパーやコンビニ、ドラッグストアに並んでいる食品や日用品、市販薬に関する情報を扱っています。この時期は春夏新商品の発表がたくさんあるのですが、新型コロナウイルスの影響で、メーカーさんが新商品を発売しても、その発表や商談ができなくなったりする状況はあります。

 ただ、スーパーやドラッグストアで売られる日用品は、この自粛の状況でも、一般消費者にとって不必要になるわけではないんですね。洋服や化粧品、お酒のように生活必需品からちょっと離れている分野は、あまり動きがよくないですが、逆にとても求められていて、商品供給が追いつかないというジャンルもたくさんあります。

 供給に一生懸命で広告を出している場合ではない、または業績が悪く広告が減ったりするというジャンルもありますが、メーカーにとって業界誌は自慢の商品や販売戦略をバイヤーに紹介できる貴重な場であり、私が扱うBtoB(企業間取引)の案件に関しては仕事はそれほど減っていない印象です。

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――しかし、仕事の量は維持できても、「やり方」は変わったりはしませんか?

 それは、ものすごく変わりましたね。ビルの中で感染者が出たために、そもそも取引先の会社が立ち入り禁止になってしまいました。そのためスタッフ全員テレワークに。打ち合わせも取材も、強制的にみなさん、電話かオンライン上で行う形を取らざるを得なくなったんです。

 私自身はもともと、ビデオ通話の取材は経験していたので、対応自体はそれほど難しくはなかったです。ただ、クライアントさんによってZoom、Skype、MS Teams、Google Meetsなどアプリが毎回変わったりするので、それへの調整は必要になりました。

 オンラインでの取材は、ムダな移動や出張をしなくてよくなるというメリットがありますね。実はこうしたところにかかるコストが大きいのですが、オンラインであれば、海外の方とでも会議や取材ができますし、時間の組み方も変わってくる。隙間時間の5分、10分にコメントをもらうなど、細かいお願いができるようなるかもしれません。社会がもっと開かれていくようなことも、あるかもしれないと思っています。

 逆に、今、ちょっと弊害だなと感じるのは、担当者がオンライン取材に慣れてきて、あたかも電話をかけるくらいの感覚で「今からちょっと参加できる?」と気軽に依頼されることも出てきました。

 デジタルのツールをしっかり活用していると言えば言えるのですが、こちらの都合にあまり忖度してもらえず、あまりに急だと「えっ?」となりますよね。今の時期、特有かもしれませんが、ちょっとしたデジタルの弊害だと思います。

――フリーランスへの助成については、どうお考えですか?

 フリーランスというのは業種によって提供しているサービス、技術はさまざまで、目に見えにくいところもあるかもしれませんが、ようするに個人事業主。分かりやすくいえば町のお店の店主とまったく同じ立場ですよね。だから売り上げが落ちたら同じように助成があっていい。というよりも、ぜひ助成してほしいなと思います。

密集したモブのシーンに「こんなに人集まっちゃダメだよなあ」

「うめ」小沢高広さん──「うめ」は漫画家ふたり組のユニット。「大東京トイボックス」(幻冬舎)、「STEVES」(小学館)、「おもたせしました」(新潮社)などの漫画作品を発表。現在、月刊コミックバンチにてeスポーツを取り上げた「東京トイボクシーズ」を連載中。いち早くデジタル配信や、noteなどクリエーター発のプラットフォームを使った活動に取り込んできたことでも知られます(小沢さんとのやりとりはGoogle ドキュメント上で行いました)


Appleの創業者スティーブ・ジョブズを描いた『スティーブズ』の特別編が公開されている。新型コロナウイルスのワクチン開発に取り組むと発表したビル・ゲイツが登場

 地方のイベントが中止になったり、東京開催になったりしました。今までリアルでやってた打ち合わせは、Zoomにしてます。そういえば、Zoom講義の依頼もいただいたので、減ったり増えたりですね。

――変化には、どう対応していますか?

 Zoomの打ち合わせは、前からやっていたので、とくに対応したというほどのことはないです。背景画像を増やしたくらいで。

 あー、スタッフは完全に在宅にしてもらってます。Discordでサーバ立てて、作品ごとにチャネル作って、やりとりしてますね。基本チャットです。話が込み入ってきたら、音声で確認しよう、とは言っているのだけれど、今のところチャットで済んでます。

――今後の展望は、どうお考えですか?

 他の方もおっしゃってますが、物語への影響をどうするかは考えどころですね。3.11の直後、節電で街中が薄暗かった頃に、煌々と光るコンビニを作中で描いたときに感じた違和感と同じ種類の違和感です。密集したモブのシーンを描いてるときに「こんなに人集まっちゃダメだよなあ」と感覚的に思ってしまう。

 この辺は編集部とも相談してます。もし3カ月で収束するなら、なかったこととして描ける気もするけれど、年をまたいだあげく、収束後も「外出はマスクが基本」みたいな文化が残りそうなら、考えなくちゃいけないかもしれない。

 とはいえ、登場人物にみんなマスクしちゃうと、描き分けがめんどくさそうですが。マスクに名前書くわけにもいかないだろうし。

 職業としては、外出しないで個人できる仕事で、かつ、読者も外出せずに基本1人で楽しめるエンタメなので、大人数や対面のリアルタイムが基本のエンタメの方々にくらべたら、まだ影響は少ないと思っています。

 それでも大型書店が休業したり、Amazonあたりも生活必需品や衛生用品を優先的に入荷し、他の商品は納品を制限する措置が取られているため、初版部数が大きく削られた、という声も聞こえてきました。ウチも6月に出す予定の単行本をどうしたらいいのか、悩みどころです。

――フリーランスへの助成については、いかがお考えですか?

 いちおう厚生労働省に電話したんですよ。例の「小学校等の臨時休業に伴う保護者の休暇取得支援のための新たな助成金」っていう舌かみそうな助成金の相談窓口に。

 そこで「在宅のフリーランスなので、完全な休暇ということは、土日含めてまずない。合間が5分でもあれば仕事できる。でも、ものすごくパフォーマンスが落ちてる。これは助成金の対象になるのか」ということを相談したんです。

 そうしたら「(案件ごとの判断になるけれど)パフォーマンスの落ち方を証明してくれたら大丈夫だと思う」ということなので、現場では、あるていどの柔軟性は持ってくれてるのかな、と感じています。手続きの煩雑さは、なんとかしてほしいですけどね。

――リモートワークを始めた人に、アドバイスをひとこと!

 通勤時間にしていた読書、SNS、ゲームなんかは、意図的に時間を取らないと、気がつくとまったく疎遠になってしまうので、要注意!


 ライブハウスや歌手のように「リアル」に関わる人ほど影響が大きく、情報や物語分野の人は、直接の影響は比較的少ない。しかし、取材がすべてオンライン化したり、学校の休みがあったりと働き方への影響は「みんなある」。

 しかしこの変化を、仕事の効率化や、新たな発信につなげることができたら。みなさんのお話から、そうした意図が伝わってきますね。

 私ごとですみませんが、私(堀田)も、食にまつわる連載をやっていたのですが、もろコロナ直撃で休止。また講演や講師の仕事も延期になったり、なくなったりしています。

 ただ、もともとひきこもりのリモートワーカーなので、ライフスタイル自体は、そんなに変わっていません。そんな「ヒッキーのプロ」としてひとつアドバイスすると、とにかく昼間に太陽の光を浴びておくことが大事。

 知り合いのマンガ家さんは、とことんピンチのとき、右手でマンガを描きながら、左手だけ窓の外に出して「手のひら日光浴」をするそうです。これがけっこう、効果があると。

 生活のリズムを整えて、乗り越えていきましょう!

堀田純司 大阪生まれ。作家。主な著書に「僕とツンデレとハイデガー」「オッサンフォー」、シナリオを担当した「まんがでわかる妻のトリセツ」(以上講談社)、「メジャーを生み出す マーケティングを超えるクリエーター」(KADOKAWA)、編著に「ガンダムUC証言集」(KADOKAWA)などがある。日本漫画家協会員。Twitter @h_taj

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