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好きなのは外見? それとも中身? 「かぐや様は告らせたい?」5話 君は恥ずかしがらずに「本物の愛」と言えるか(1/2 ページ)

あんまり言うと黒歴史になるやつ。

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(C)赤坂アカ/集英社

 恋愛は告白した方が負け! 「かぐや様は告らせたい?~天才たちの恋愛頭脳戦~」(原作アニメは、相手から自分に告白させるためにあらゆる知力体力を用いて戦うエリートたちを描いたラブコメディーの第2シーズン。とってもいとしくてとっても面倒くさい少年少女の、青春の無駄遣い物語。距離はどんどん近づきます。

 御行の生徒会選挙対抗馬として現れた、伊井野ミコ。多分負けないだろう、と思いつつ万全を期すためにかぐやがどうやら暗躍しているようです。

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(C)赤坂アカ/集英社・かぐや様は告らせたい製作委員会

あなたが好きなのは顔?それとも中身?

 財閥の令嬢にして生徒会副会長、四宮(しのみや)かぐや。努力家の生徒会会長、白銀御行(しろがね・みゆき)。2人は自らの意地とプライドにかけて、自分からは告白しない、相手に告白させる、と心に決めて戦い続けている間柄。

 生徒会解散後、御行も多忙な日々に少し余裕ができるようになりました。今まで削っていた睡眠がより多くとれるようになりました。ということは体調がよくなるわけで、見た目からして思いっきり変化しました。

きれいな御行(7巻より) (C)赤坂アカ/集英社

 目の隈が取れてすっかり好青年に。別人やんけ。御行の今までのきつい目つきは実は寝不足によるものだったため、こちらが本来の顔らしい。正直違和感半端ないのですが、おかげさまで、今まで話しかけづらかった生徒たちからの反応は上々。かぐや以外にはあのきつい目つきは評判悪かったようです。

潰れた大福てあんた(7巻より)

 かぐやだけは、この優しい御行の顔が大いに気に入らなかった様子。もともときつい目フェチに近いかぐや。御行の顔の変ぼうを見て激しく動揺し、誰にも分からないように隠していました。今までの御行の吊り目は自分にとって「かっこよかった」とあらためて認識しなおします。

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「まあ別に外見は本質じゃありませんし 中身は変わってないので問題はないのだけれど……普通にショック……」

 見た目の変化でがっかりするのは仕方ないこと。ただ彼女はそこだけではなく、御行本人じゃなくて見た目が好きだったんじゃないか、という自分の恋愛の在り方にショックを受けているようです。

 恋愛経験なしでお互い告ってくるのを待っているくらいにこじれている御行とかぐや。特にかぐやは人に対しての接点が今までほぼなかっただけに、相手を信じて良いのか、自分はどう感じているのか、間違っていないか、と常にビクビクしているのを隠して生きている節があります。今回も、見た目が変わったからと言って揺らぐようでは、自分の恋はその程度のものなんじゃないかとおびえています。

即バレ(7巻より) (C)赤坂アカ/集英社

 取りあえず友人というか、恋愛の達人である柏木に、友達の話なんだけど、という体で相談することに。

 「美醜で揺らぐ程度の想いなんて 本物の愛じゃ無いのではないかと思い詰めていて……」

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 質問自体はとても青春していて共感できる、かわいらしいものだと思います。誰もが悩んだ経験のありそうなものです。ただ、彼女が用いたワードを見て欲しい。

黒歴史の味がする(7巻より) (C)赤坂アカ/集英社

 「本物の愛」。言うてしまった。ある程度年齢を経ていれば口に出すのも恥ずかしいやつ。言った後何年か後に後悔する黒歴史。トゥルーラブという言葉で相手をメロメロにできるのは藤井フミヤくらいだ。高校生の場合なら恋愛をしたことがあまりなかった、恋愛に幻想をいだいているからこその発言ではあります。

柏木とてもとても困る(5話より) (C)赤坂アカ/集英社・かぐや様は告らせたい製作委員会

 「大丈夫ですよ 偽物なんかじゃないですよかぐやさん 人間誰しも趣味嗜好はあるんですから! 相手の全てを好きになるなんて不可能なんですから!」「かぐやさんなりの愛し方が本物の愛なんですよ!」

 「本物の愛」の語が飛び交う空気感にメンタルを削られまくりの柏木。必死にかぐやをフォローしまくります。言っていることがどんどん正論からよいしょに変わっていくあたり、同情せざるを得ません。いやだってそんな抽象ワードを出されたら、現実的な話できないもの。

 ではかぐやの「本物の愛」はどこにあるのか、というと、ヒントは原作のおまけイラストに隠されています。7巻では近侍の早坂がかぐやと話すシーンがあります。

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 「それ目付きが悪い人が好きなんじゃなくて 会長が好きだから目付き悪いのが好きなんでしょ」

 「これ絶対不良と付き合ったら自分も不良みたいな格好するタイプの女だ……」

 「本物の愛」なんて大層なものは誰にも分からないけれども、かぐやが御行のことを好きなのは本当で、その一部として目つきが悪いという外見もいつしか含まれるようになった、というのが冷静な見方。目つきの悪さを「ファッション」に置き換えると分かりやすいと思います。ようは慣れと妥協とてんびん。恋というのは隅から隅まで最初から好きになることではない……というもっと現実的な命題は、ずっと後の回で語られます。

土足で踏み荒らす(7巻より) (C)赤坂アカ/集英社

 それを土足で踏み荒らす藤原書記。お前に愛はあるんか?

藤原書記の猛烈レッスン

 4話で伊井野ミコから、実はピアノの実力がピカイチでマルチリンガルだという、隠れた才能を明かされた藤原書記。今までは全然それが発揮されていませんでしたが、今回、思いもよらぬところで彼女の才能がフル活用されることになります。彼女は望んでいなかったのに。

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運動と音楽は壊滅的に駄目(4巻より) (C)赤坂アカ/集英社

 完璧超人っぷりをここまで見せてきた御行。実は運動全般と音楽は手に負えないレベルで駄目です(身体能力自体は低くない)。特に歌唱力はゼロに等しく、全く音程が合わない。歌うと音響兵器と化します。

 それに気づいてしまった藤原書記。普段なら泣きながら逃げるところですが、今回は御行の話を聞いてしまったがゆえに、音楽家の血がたぎります。

藤原書記の最高に熱い魂が見られる貴重なシーン(4巻より) (C)赤坂アカ/集英社

 御行が極端に歌が下手なのはギャグテイストで描かれていますので、笑って良いところだと思う。しかし彼実は中学校の合唱祭でみんなに歌うのを嫌がられており、歌うたいけれども迷惑が掛かるからと我慢していたそうだ。

 音楽の魅力を知っている藤原書記は、歌う幸せを封じ込め我慢している彼の苦しみを、救いたかった。御行の手を取って「なんで……そういう事先に言わないんですか……」と鋭い目をする藤原書記の顔は、この作品でも屈指の真剣さです。

 藤原書記が「ソ」の音を歌い、それにあわせてちょっとずつ御行が「ソ」の音にあわせるよう声をチューニングしていくシーン。「ソ」を歌いながら黒板藤原書記が書く。「これがソのユニゾン 私と会長は今おんなじ音を出してます きもちーでしょ」。音楽経験者ならかなりグッと来る説明だと思います。音の楽しさの核心を突いています。

 藤原書記は楽しいこと、気持ちいいことが大好きな子です。それが行き過ぎて周囲に迷惑を掛けがちですが、基本的に生徒会の面々のことは大好きだし、一緒に楽しいことしたいと常に言っています。自分のみならず、周りの人にも楽しく、気持ちよくあってほしい。正直御行の歌唱矯正は地獄のような訓練が必要でしたが、飽き性な彼女が最後まで付き合ったのは、ユニゾンすることの「きもちーでしょ」を伝えたかったからかもしれない。ユニゾンできないのは、寂しいもんな。

アニメの藤原書記の感涙は笑えるシーンなのにちょっと泣ける(5話より) (C)赤坂アカ/集英社・かぐや様は告らせたい製作委員会

 こうして、藤原書記は御行の音楽の母になりました。感受性豊かな子です。問題はこれでおしまいではなく、この後も御行歌下手くそ問題が藤原書記に襲い掛かることなのですが……。

手段を選ばないかぐや

 生徒会選挙間近。御行はもともと学校でも信頼度の高い生徒なのでまあ受かるだろうという安心感はあるのですが、まだまだ油断はできません。御行は基本真っ向勝負ですが、伊井野ミコの登場でちょっとだけ焦りが出てきています。公約がひどかったので大丈夫だろうとは、思っているようですが。

 しかしかぐやは違います。彼女は自分の目的を通すためなら、どんな手段でも行う実行主義です。

怖い怖い怖い(7巻より) (C)赤坂アカ/集英社

 生徒会選挙に出馬する他の生徒を呼んで、手厚くおもてなし。ただし手厚さの圧がすごい。まあね、確かに羅漢果の角砂糖をたくさんいれた紅茶を飲ませるのは別に選挙違反でもなんでもないですよ。後ろから近づいてこそこそ「私は貴方の味方ですよ?」と話しかけるのも違反ではないですよ。でも出馬取り下げちゃいますよね。怖いんだよ。

 同じことを伊井野ミコにも行おうとしたかぐや。もちろん悪事は働かないですが、伊井野ほど鋭い人間なら、圧をかけているのは感じ取れるというもの。「貴方からは目的の為なら手段を選ばない人特有の匂いがします その紅茶は頂けません」。伊井野もまた、過敏人間の一人らしい。

 ここから、天才たちの頭脳戦がスタートします。

かぐやによる伊井野ミコ分析(7巻より) (C)赤坂アカ/集英社

 「人の仕草で多少の感情の動きは読み取れます」というかぐやが嗅ぎ取ったのは、伊井野の「信念と不安」。信念のある人物に圧は効かない。であれば「不安」を攻めよう。己の理念を保ち続けるための補助を申し出ます。「私たちは貴方の選挙戦に協力しましょう」

甘い囁き(5話より) (C)赤坂アカ/集英社・かぐや様は告らせたい製作委員会

 伊井野は「生徒会長」になりたいのだから、今期は諦めて、2年生になったら応援しますよ、というのがかぐやの誘い。直接的には「今年は降りろ」と言わないのが賢くてずるい。これが天才の圧のかけかた。

 この回はかぐやのずるいところが詰まっている珍しい回。悪ではないのですが、手放しには褒められない策士な部分が、自分の利益(これからも自分が御行と一緒にいられること)のために傾きすぎています。だからこそ、わんわん吠える子犬のように見える伊井野の、かっこいいところが引き立つことに。ド真っすぐな彼女、御行とかぐやを自分の生徒会に入れて、性根をたたき直す、と宣言します。伊井野は「小ざかしい」という意味合いで「あなたと白銀元会長…本当にお似合いですね!」とかぐやに言葉を突きつけます。

ちょろい(7巻より) (C)赤坂アカ/集英社

 頭脳戦でピリピリしていたのに、「お似合い」の一言でころっとひっくり返るかぐや。これだからかぐや、憎めない。ちょとかわいい。この後は完全に伊井野のスピーチターンです。かぐやの策に丸め込まれることはありませんでした。

 かぐやの人を落とし込む技術は、毒にも薬にもなるものです。1年時は人をしりぞけるために利用し、今はひねくれた選挙活動にこっそり使用中。でもこの人心を動かす能力を正しい方向に使えば、救うことができる人間は多いはず。今回のかぐやの怖さをどう使うかは、今後の展開でゆっくり見守っていきたいところ。逆に言えば悪い方向に突き進む未来も、あったんだろうなあ、御行に出会わなかったら。

 次回は御行と伊井野の選挙当日。果たして2人の演説はどうなるのか。選挙結果は見えている通りに動くのか? 波乱のにおいがする。

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