「鳥たちを守るため、吉祥寺閉店を決断」 “ことりカフェ”が直面する今とこれから―― 代表者に聞いた
継続を支援するクラウドファンディングが実施中です。
都内に2店舗(上野本店、吉祥寺店)を運営する「ことりカフェ」は、“小鳥たちをながめながら、まったりコーヒータイム”をコンセプトにした、鳥たちとの触れ合いが楽しめるカフェ。鳥たちが心地よく過ごせる空間を第一に考え、健康管理、衛生管理を徹底した運営を行っています。
しかし、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の感染拡大防止に伴う政府の自粛要請と緊急事態宣言を受け、店舗は5月31日まで休業予定。鳥関連イベントも中止や延期が相次いでいます。
厳しい経営状況の中、鳥たちはどう過ごしているのか。「鳥さんたちの暮らしを守るため、吉祥寺店の閉店を決断しました」と語る代表の川部志穂さん(以下、川部さん)に、ことりカフェが直面する状況と今後の方針について聞きました。
鳥さんたちは今どうしてる?
ことりカフェ上野店と吉祥寺店では、約35羽の鳥たちが暮らしています。休業中は、店舗で過ごす鳥たちと、懐いているスタッフの家にホームステイする鳥たちに分かれているそうです。
「店舗で過ごしている鳥たちは、私と近くに住むスタッフが交代で毎日世話をしています。お客様のいない静かな空間ですが、毎日にぎやかにさえずっていて普段通りの状態です」(川部さん)
「ふれあい担当の鳥や通院中の子は、懐いているスタッフの家にホームステイさせてもらっています。大好きな人と一緒にいられて、楽しく暮らしているようです」(川部さん)
ことりカフェのSNS(Twitter/Instagram)には、休業中も元気に暮らす鳥たちの様子が投稿されています。なかでも、ホームステイ中のタイハクオウムの「タイ」ちゃんは、スタッフに抱っこされながら気持ちよさそうに寝てしまうなど、すっかりリラックスしている様子。鳥さんたちがこれまでと変わらない生活を送れるように、川部さんとスタッフの方たちが愛情を持って接していることが分かります。
3月は売上が半分以下、4月は3割減 休業中の固定費は「月200万円」
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、ことりカフェ吉祥寺店は2月末より営業時間短縮を実施。その後、3月26日に出された東京都の週末自粛要請、4月7日に発表された緊急事態宣言で2店舗ともに休業となり、経営に追い打ちをかけていきます。
「新型コロナウイルスの影響で、ことりカフェ吉祥寺の目の前にある“ジブリ美術館”が2月から休業することになり、人の流れが止まってしまいました。3月に都知事から週末自粛要請が出され、ますます集客が困難に。3月の売り上げは半分以下、4月は通販と催事の売り上げがあったものの、例年より3割以上ダウンしました」(川部さん)
休業中で売り上げが立たない中でも、月々の固定費は出て行く一方。その負担は経営者である川部さんに重くのしかかります。
「休業中も家賃やリース代などの固定費はかかります。店舗家賃、固定費、鳥たちの飼育費で2店舗あわせて月々200万円ほど必要です」(川部さん)
鳥たちの暮らしを守るために、吉祥寺店の閉店を決断
店舗休業やイベント延期による売り上げの大幅ダウン、のしかかる固定費――。鳥たちがこれからも健やかに暮らしていくための環境や人員を確保するため、川部さんは厳しい決断を下します。それは「6年間営業した吉祥寺店を閉店し、上野本店に集約する」ことでした。
「先ほど説明したように、店舗休業中も多額の固定費がかかります。鳥さんたちを継続して飼育するためには1店舗でも残したく、吉祥寺店を閉店し、上野本店に店舗を集約することを決断しました」(川部さん)
「ことりカフェ継続プロジェクト」に970万円を超える支援が
吉祥寺店を閉店して上野本店に集約したとしても、引っ越し費用や店舗の改装費用もかかるため、資金状況の厳しさに変わりはありません。「ことりカフェ」を継続するため、川部さんはクラウドファンディングで支援を募ることに。「ことりカフェ継続プロジェクト」には、1999人の支援者と970万円を超える支援金が集まりました(※支援募集は5月15日で終了)。
「クラウドファンディングで支援いただいた資金は、店舗家賃などの固定費、吉祥寺店の退去費用や店舗の修復費用、鳥さんたちの新しいケージ、クラウドファンディングのリターン費用にあてる予定です。コロナ禍での皆様からのご支援、本当にありがたかったです」(川部さん)
「吉祥寺店の原状回復修理費が約100~200万円かかると見込まれ、プロジェクトリターンや休業中の人件費などの諸経費、クラウドファンディング手数料を差し引くと、おそらく2~3カ月ほどの運営資金になります。その間に売り上げが見込めれば、今後も運営できると思いますが、新型コロナウイルスの影響は計り知れないので……」 (川部さん)
政府や東京都からの補償は? 「都の補償は手厚いが……」
政府や都の自粛要請に早くから従った結果、ことりカフェは売り上げの大幅減少と吉祥寺店を閉店せざるを得ない状況に直面しています。クラウドファンディングの支援は集まっているものの、政府や都からの休業補償はどうなっているのでしょうか。
「都には感染拡大防止協力金を申請中ですがまだ可否のメールが届いていません。借入金の返済は1年猶予ができました。申請中のものが全て助成されれば、都の補償は手厚いと思いますが、複数店舗を展開している会社は厳しいと思います」(川部さん)
「国や都の補償は、申請をより簡単に、入金をスピーディーにしてほしいですね。休業中のスタッフの人件費は雇用調整金を申請予定ですが、入金されるまで全額雇用主が負担するというのも自粛が続くと難しいと思います」(川部さん)
緊急事態宣言解除後の再開に向けて 「ことりカフェ」のこれから
5月15日に39県で緊急事態宣言が解除され、東京を含む8都道府県の解除は5月21日頃に決定されると報道されるなど、収束の兆しが見えてきた新型コロナウイルスですが、第2波、第3波の感染も懸念されており、先行きはまだまだ不透明。ことりカフェは解除後の店舗再開に向け準備をしているものの、油断せず慎重に進めているといいます。
「まずは緊急事態宣言の解除を待ち、6月1日からの上野本店再開を検討しています。再開してもしばらくはお客様が少ないと思いますし、狭いスペースでの触れあい体験を当面中止するなど、お客様やスタッフの感染防止も考えなくてはいけません。感染者数や社会情勢を見ながら、運営方法を検討していきます」(川部さん)
「フランチャイズである心斎橋店も東京同様、自粛期間が長いため運営が厳しくなっているため、クラウドファンディングを計画中です。関西の拠点を守るため、精いっぱい応援したいと思っています」(川部さん)
“鳥さんファースト”を守りつつ、これからも鳥好きな人たちが心休まる空間や鳥グッズを提供していきたいと話す川部さん。
「吉祥寺や巣鴨店の小鳥たちも上野本店に引越したので、お店の中はより一層小鳥の声でにぎやか。再開したらぜひ癒やされに来ていただきたいです。百貨店やフェスも開催し、全国の愛鳥家に喜んでいただけるイベントを、これからも継続していきたいです」(川部さん)
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