「マスクをつけた2000人の前でマスクなしの僕が1人で歌うという経験が自分を変えた」　城田優が語る新型コロナとの新しい暮らし（3/3 ページ）

GLAYのTERU・HISASHIとのコラボでも話題の楽曲「それでも」

　Stay Home期間中、「外に出ること自体が悪」というような状況が続いたことで気分が落ち込むことも多い中、「動物たちが街に降りてきた」「排気ガスが一気に減った」と普段の暮らしでは考えられないようなニュースも度々報じられました。そんなニュースを見た城田さんはふと、「こんなに静かな世界って今まであったんだろうか」と我に返ったと言い、「騒音まみれ、排気ガスだらけだった世界がすごく静かですごく平穏になったように思えるんだけど、1人ずつ隔たれたことで感情や愛とか希望も遮断されてしまったような感覚」を持ちました。

　そうした気持ちを飾らない言葉でつづり、完成させたのが、Instagramから話題になった楽曲「それでも」です。「みんな苦しんでる。みんな行き止まりな日々の中で明日を夢見てる。それでも僕たちは強く生きていかなくちゃ。という気持ちを届けたかったんです。ただただポジティブな言葉を並べるのではなくて、今の状況を踏まえながら“それでも”という部分を皆さんに伝えたかった」と、同曲を弾き語りした投稿はInstagramで17万回以上再生されるなど大きな話題を呼びました。

　「この曲が少しでも誰かの支えになれば」との思いで作られた同曲には、城田さんの考えに賛同した音楽プロデューサーのUTA（ユウタ）さんがアレンジで参加。またインスタライブでコラボしたGLAYのTERUさんにも楽曲を聞いてもらったところ、翌日にはTERUさんがデモテープを送ってくれたほか、TERUさんが呼びかけてHISASHIさんも参加することになりました。

　そしてこの楽曲が世界中の人に届けばとの思いから、シンガーソングライターのJamil Kazmiさんが英訳を、城田さんの姉でクリエイターのMaria Niwaさんがスペイン語訳を担当。「アーティストの掛け算で何倍もの大きさの愛を届けられることになった」と城田さんは話します。同楽曲はYouTubeでも公開されており、「あの頃の日常がもう戻ってこないんじゃないかって不安もある。それでも光が何処かにあると信じる支えになる曲」「すごく心に響く歌、鳥肌立ちました」と多くの人の心に思いが届いているようです。

　また発売が延期されていたカバーアルバム「Mariage」の発売が今秋に決定したこともうれしいニュース。

【2020年6月21日追記】発売日が今秋へ変更されたので記事を一部修正しました。

　先行配信される平井堅さんの「even if」については、「15歳のころに出会った曲」だと言い、この曲をカラオケで歌ったところクラスメイトから「優に合ってる」と褒められた思い出があるとのこと。しかし当時うぶだった城田さんは、「彼がいる女性に恋をする」というストーリーやバーボンやカシスソーダといったアイテム、「言葉をさえぎるために煙草に火をつけた」というフレーズなどが理解できないまま、「ただただステキな歌だな」と感じていたそうです。

　そこから時がたち、今回のアルバムを制作するにあたって「大人になった今だからこそ、楽曲に登場するアイテムのにおいや感覚まで楽曲の世界観を理解したからこそ、何倍も魅力をお届けできるのでは」とセレクトしたのが、「even if」だといいます。

　城田さんは「これまで愛されてきた楽曲や自分が子どものころから大好きな楽曲、最近自分が好きになった曲を自分なりにアレンジしてたくさんの才能と一緒に“マリアージュ”することで1枚のアルバムを完成させられたらなと今現在作業進行中です。僕自身楽しんで取り組んでいきたいですし、音楽好きの皆さんにもぜひ聞いていただきたいと思っています。何度も聞いて楽しんでいただけたら幸いです」と笑顔を見せていました。

取材後記

　新型コロナウイルスという未知の脅威に対して多くの人がストレスを抱える中、「自分だけが」という考えにとらわれてしまう人も少なくはないのではないでしょうか。そんな中、リモート取材させていただいて感じたのは「城田さんも同じ思いだったんだ」ということでした。

　城田さんのInstagramには、押しつけがましくないポジティブなメッセージや歌、城田さんなりの考えなどが多く投稿されていますが、そうした投稿の背景には私たちと同じような悩み、不安があり、それらを飾らない言葉で昇華させていく城田さんの姿勢が、99万2000人というフォロワーの支持を集めているのかもしれないとあらためて知ることができたような気がします。

（Kikka）