連載

意味がわかると怖い話:「首無し峠」(2/2 ページ)

有名な心霊スポットの、秘密の話。

advertisement
前のページへ |       

「首無し峠」解説

 「O夫妻」の死体は腐敗が激しく、死因が特定されなかったにも関わらず、「店主」が「絞め殺されて」とその殺され方を知っていたのは、彼が夫妻を殺した犯人だからです。

 旧道に位置する彼の店は、バイパスの開通以来交通量が減り、利用者といえば「赤いオープンカーの噂」を聞いた肝試しの客ばかり。しかしその怪談がデマだと明かされてしまったことで、「店主」は利用者のさらなる減少に窮していました。

 追いつめられた店主は、常軌を逸した解決方法を取ることにしました。首無し峠の名にふさわしい、新たな心霊スポットを――オープンカーの噂と違って、現実の首切り惨殺事件という「ちゃんとした根拠のある」スポットをつくり、噂を流すことです。

advertisement

 どうやら彼の目論見は、成功したと言えそうです。

白樺香澄

ライター・編集者。在学中は推理小説研究会「ワセダミステリ・クラブ」に所属。クラブのことを恋人から「殺人集団」と呼ばれているが特に否定はしていない。怖がりだけど怖い話は好き。Twitter:@kasumishirakaba

過剰に合理的ゆえ共感されない動機

 私が大好きな、ある有名推理作家の作品に、「犯人ではないある人物が、売却予定の自宅で家族が殺されているのを発見し、事故物件として家の売価が下がるのを恐れて死体を別の場所に移動させた結果、真犯人にアリバイが成立する」という短編があります。「過剰に合理的であるがゆえにかえって共感されない動機」の例として、とても印象的でした。

 ところ変わればといいますか、イギリスでは「幽霊の出る家」は、むしろ希少な物件として高値で取引されることがあるそうです。19世紀末の心霊主義ブームの際には、コナン・ドイルやルイス・キャロル、ノーベル賞物理学者のレイリー卿といった知識人たちがこぞって「心霊現象研究協会」に出入りし、交霊会が上流階級の嗜みであった「おばけ好き」のお国柄らしい話です。「ぜんぜんおばけが出ないぞ!」というクレームは、不動産屋さんは受け付けてくれるのでしょうか……?

前のページへ |       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

記事ランキング

  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. “月収4桁万円の社長夫人”ママモデル、月々の住宅ローン支払額が「収入えぐ」と驚異的! “2億円豪邸”のルームツアーに驚きの声も「凄いしか言えない」
  3. “プラスチックのスプーン”を切ってどんどんつなげていくと…… 完成した“まさかのもの”が「傑作」と200万再生【海外】
  4. 100均のファスナーに直接毛糸を編み入れたら…… 完成した“かわいすぎる便利アイテム”に「初心者でもできました!」「娘のために作ってみます」
  5. 「巨大なマジンガーZがお出迎え」 “5階建て15億円”のニコラスケイジの新居 “31歳年下の日本人妻”が世界初公開
  6. 鮮魚コーナーで半額だった「ウチワエビ」を水槽に入れてみた結果 → 想像を超える光景に反響「見たことない!」「すげえ」
  7. 家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
  8. 「奥さん目をしっかり見て挨拶してる」「品を感じる」 大谷翔平&真美子さんのオフ写真集、球団関係者が公開【大谷翔平激動の2024年 「妻の登場」話題呼ぶ】
  9. 「理解できない」 大谷翔平と真美子さんの“スキンシップ”に海外驚き 「文化は100%違う」「伝説だわ」
  10. 日本人ならなぜか読めちゃう“四角形”に脳がバグりそう…… 「なんで読めるん?」と1000万表示