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「授業で違法アップロード動画を見せられた」学生がSNSで指摘 法的な問題は? 弁護士に聞いた(1/2 ページ)

憤る生徒も。

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 授業で違法アップロード動画を見せられた――昨今、このような指摘がSNSでちらほらと見られます。このような行為は法的に問題があるのか、弁護士に聞きました。


オンライン授業で指摘が増えた?

 「資料に指定された動画が違法アップロードされたものだった」「授業で違法アップロード動画を流していた」「YouTubeにアップロードされたテレビ番組を見せられた」。SNSでは生徒からと見られるこのような指摘が数年前から見受けられ、コロナ禍でオンライン授業が増えたためか、特に最近はそういった投稿が増えているように見受けられます。編集部では実際に授業で違法アップロード動画の利用があったという学生2人から話を聞きました。

「社会通念上問題があるように思える」と学生

 話を聞いたうちの1人は大学生のAさん。オンライン授業で、レポート課題のために資料として見るよう指示された動画が、違法にアップロードされたものだったといいます。講師は、動画が違法にアップロードされたものだと知っている様子だったそうです。

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 「違法にアップロードされた動画を講師が視聴させているのは社会通念上問題があるように思えます」とAさん。同様の感想を持つ生徒も他にいたと話してくれました。

 もう1人は高校生のBさん。YouTubeに違法アップロードされたと思われる昔のテレビ番組を、体育館のスクリーンで見せられたことが数回あったといいます。普段の授業となんら変わらない様子で、「教師は違法アップロードであると言うことを知らないと思います。知っていたとしても、とても引け目を感じているようには見えませんでした」(Bさん)。

 動画を見ていた他の生徒は特段変わった様子はなく、違法アップロード動画だったということに気づいていないようだったとBさん。しかし一部気付いていた人達は憤りを感じている様子だったと話してくれました。

 Bさん自身、こういった行為についてどう思うか聞いたところ、「教育現場においてこのような事案は絶対にあってはならないと思いますし、実際それが起きてしまっているという現状に怒りを覚えています」との回答。教師が生徒に校則というルールを守らせようとする一方で、ルール違反と言える違法アップロード動画を生徒に見せていることを「これ程までに理不尽な事はないと思います」「教育委員会が正式に調査し、処分すべきです。でなければ我々が校則を守る意味はありません」と怒りを込めたコメントを寄せてくれました。

法的な問題は? 弁護士に聞く

 ではこのように、インターネットに違法にアップロードされた動画を授業で見せることには、法的に問題があるか、著作権法の教育上の特例が適用されるのか、グラディアトル法律事務所の磯田直也弁護士にうかがいました。

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質問1

 インターネットに違法にアップロードされた動画を授業で生徒に見せる行為は法的に問題がありますか?

磯田弁護士の回答

 ご質問のケースでは著作権法上の著作権侵害となるかが問題となるでしょう。著作権者の許諾を得ずに動画共有サイトにアップロードされた動画(違法にアップロードされた動画)は、著作権者の公衆送信権を侵害し、著作権法違反となるものです。

 授業での利用についてはさまざまな態様があると思いますが、例えば、(1)資料として見るように指定するという態様であれば、違法にアップロードされた動画を個々の生徒が個別に視聴しているという状態に過ぎないため、(当該行為の倫理上の是非は別として)それを指示した教師や視聴した生徒の側に著作権侵害等の問題は生じません。

 一方、(2)授業内容に関係したインターネット上の動画を授業中に受信し、教室のディスプレイ等で視聴させることは、著作権法35条第1項に定められる「公の伝達」に当たり、学校その他の教育機関において授業の課程における利用に供することを目的とする場合には利用ができるとされています。

授業における著作物利用にあたっての留意事項(「 授業目的公衆送信補償金制度」の概要から)

 しかし、同項但書において、「当該著作物の種類及び用途並びに当該複製の部数及び当該複製、公衆送信又は伝達の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない」とされていますので、この点の検討が必要です。まず、著作権法35条は違法にアップロードされた動画の利用の可否について明示していません。

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 もっとも、著作権法35条の趣旨は、学校教育の公益性に鑑み、著作権が制限される場面を設ける反面、著作権者が過度に不利益をこうむることのないように調整を図ろうとするものです。このことからすれば、(2)のような利用は、違法に動画をアップロードされた著作権者の受ける不利益が大きく、利用は認められないということになりそうです。また、生徒に対するリテラシーや法教育の観点からも、適切ではないと言えそうです。

 さらに進んで、学校教育現場におけるWeb接続環境は未だ十分ではなく、教室や体育館では接続環境がないことも想像されます。そのような場合に、(3)教師は自らのPCやスマートフォンの端末に動画をダウンロードして、これを教室等で再生しようとすることが考えられます。

 しかしながら、違法にアップロードされた動画をそれと知ってダウンロードする行為は、近年の法改正で違法とされました。これは教師が授業に使う目的であっても同様です。その他、動画共有サイトにアップロードされた動画のダウンロードについては動画共有サイトの規約でダウンロードが禁止されている場合が多いので、著作権侵害のみならず、動画共有サイトからの損害賠償請求等も想定されるところです。違法にアップロードされた動画をダウンロードしたり、ダウンロードするように生徒に指示することのないように注意する必要があります。

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