インタビュー

「ストリップは自分が辛い時ほど心に残る」――『女の子のためのストリップ劇場入門』作者に聞く“劇場という場所”(2/2 ページ)

作者・菜央こりんさんにインタビュー。【後編】

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――あとは、これは同人誌『何でアイドルじゃなくてストリップに通うんですか?』にある記述ですが、「ストリップは自分が辛い時ほど心に残る」という。

 これ、何となくわかりますよね?

――「これを見たあとに自殺しようと思っていたけど、心を打たれて引き返した」という話を聞きますよね。以前、私が何気なく見ていたステージから、おじさんが丁寧にストーリーを読み取って泣いていたことがあって。ストリップは、音楽は流れるけれど、基本的には無言で行われているから、演目の中からそれぞれが見出している物語が違う。見ている人の感受性を映し出す芸能なのかと思います。「傷ついたときこそ心に迫る」というのは、そういうところなのかなと。

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 悲しいことを背負って、ずっと回復できずにいる人が行き着く場所でもあるのかなって。女の人の裸が見たければほかの風俗でもいいかもしれないし、もっとキラキラした空間はいくらでもあると思うんです。行くきっかけはエロという人が多いですが、残る人は感情豊かな人たちが多いように思います。

「スケベな自分」を受け入れてくれる場所

――最終話の話になりますが、「社会的にどんな人でも劇場内では『女の裸を観に来たスケベな人』として座っているのはなんだか心地よい」というモノローグが印象的です。芸能やサードプレイスとしてのストリップの話がある一方で、「理想の裸が見たい」とか「Hな気持ちになりたい」という気持ちで行く人ももちろんいて、そのあたりの曖昧さが持つ魅力が伝わります。


「女の裸を観に来たスケベな人」であることが許される。それがストリップ劇場

 ストリップって、よく「エロか芸術か」で揉めるじゃないですか。

――ありますね。「ストリップはエロなんて低俗なものじゃない! 芸術だ」という。

 それ、答えのない問いだと思うんですよ。見た人が何を感じるかは一人一人違うから。メディアに出るときは「ストリップはアート」とコーティングされることが多いですが、歴史的に見ればエロを満たすためのものだし、それを忘れたくない。もし踊り子さんや劇場の方たちが「エロじゃない」と言っているのであれば、そうかもしれないけど、エロを追求されている方もいるし、「芸術のみ」と捉えている人も全然いない。

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 スケベな気持ちを認めてくれる場所って世の中にあんまりない。特に、女性がそういう気持ちを持つことって、恥ずかしいこととされたりするじゃないですか。でも、スケベな気持ちを持ちながら、芸術的なもので感動する心や、その感動を伝えたいという心があることに気が付ける。そして、それを演者に伝えることができる場所。

 帯に神田伯山さんが「ストリップは会いに行ける芸術だ」という言葉を寄せてくださっているんですけど、「会いに行ける」っていうところが風俗っぽいというか、エロを包括してるのを柔らかく書いてくださってるのかなと勝手に想像しています。一般の目からしたら矛盾している場なんですけど、それが成立してる。アートだってエロいものだし、エロいって思うことは全く悪いことじゃないというもわかってほしくて、最終話はそういう表現を入れました。

――今後描いてきたいものはありますか?

 性風俗で働く人のことを描きたいです。ストリップを通して、風俗で働いている方やAV女優さんを、人としてリアリティーを持って知れるようになったところがあるので。最近AV女優さん原案のマンガ『AV女優たかしょーのないしょ話』を描かせていただいているんですが、AV女優さんの中には本当にセックスが大好きで、AV女優という仕事を楽しんでいる人がいます。ストリップも、「人前で裸を見せることも含めて、仕事として心から楽しんでいる」という人がいる。

 もちろん、そうでない立場の人もいると思うんですが、風俗の仕事はウソ偽りなく職業として存在していて、たとえばパティシエやエンジニアと同じように、その仕事に就きたいと思っている人もいる。あるいは、お金儲けとして割り切って働いている人もいる。そして、働き方や向き合い方もそれぞれ違う。そういうことを知ることで社会の見方が変わるというのも伝えられたらと思います。もし、それがストリップだったら万々歳ですね。

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『女の子のためのストリップ劇場入門』冒頭一部試し読み

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