【好きなゲームが世間のクソゲーな人インタビュー】アニメーションを見れば分かる「カラテカ」が“ゲーム界のオーパーツ”である理由(1/2 ページ)
リアルなゲームが作れるようになった現在では当たり前の技術が、35年以上前の作品なのに使われているとか。
年末企画「自分の好きなゲームが世間ではクソゲーと言われている人インタビュー」。今回は「細か過ぎて伝わらない『カラテカ』のアニメーション技術のスゴさ」を伺いました。
企画:好きなゲームが世間のクソゲー
「これはクソゲー」「あれはクソゲー」と世間は気軽に言うけれど、遊び方も感性も人それぞれ。むしろ、そんな風に言われている作品の魅力を知っている人に話を聞いてみよう。Twitterで募集をかけたら、2~3人くらい手を上げてくださるのでは?
……と思っていたら、100人くらいから連絡が来ちゃった企画です。編集部のリソース的に可能な範囲で記事化。1日1本ペースだと公開しきるまでに数カ月かかるので1時間に1本ずつ公開します。
「カラテカ」(ニカイドウレンジさん/@R_Nikaido)
※なお本記事は「Googleドキュメントでまとめていただいた原稿を、編集部が記事として構成する」というプロセスで制作。そのため、読み物らしい雰囲気の文章になっております
ゲーム「カラテカ」と聞いたとき、あなたは何が思い浮かぶだろうか。シュールな礼、構えないと即死、崖から落ちて即死、ギロチントラップで即死といった、要するに「クソゲー」というイメージにつながる要素が出てくるのではないだろうか。
確かに「カラテカ」はそういった分かりやすい部分でネタにされることが多いゲームなのだが、実は数多くのチャレンジと高い技術が詰まった意欲作なのだ。
例えば、当時としては珍しいリアル等身のキャラクター、ロトスコープという技法を用いた滑らかなアニメーション製作手法、カットシーンや場面転換などの映画的演出、環境音を用いたサウンド、体力の自動回復によって生まれる駆け引き……など、語りたいことは山ほどあるのだが、今回は「キャラクターの動き」にフォーカスしたい。
本作の滑らかに動くアニメーションには「複数の動きを組み合わせて、1つの動作を作る」という技術が使われているのだが、これには“より人間らしい、よりリアルな、格闘技らしい動きを実現する”という効果があるのだ。
1:アニメーションが途中で分岐する
蹴りの動作を見てみると、本作では「蹴りの途中でアニメーションを分岐させている」ということが分かる。
- 蹴るだけ:蹴る→上げた足が元の位置に戻る(キャラクターの位置は変わらない)
- 蹴り+動作中に前進ボタン:蹴る→上げた足が前方に下りる→キャラクターが半歩前進する
- 蹴り+動作中に後退ボタン:蹴る→上げた足が後方に下りる→キャラクターがすり足で大きく後ろに下がる
内部処理がどうなっているのかは確認のしようがないが、挙動を見る限り、蹴った後の移動は、すり足で歩くときの動作と同じものを使っていると思われる。例えば「蹴り+動作中に前進ボタン」という操作を行うと「蹴るアニメーション+すり足で前進するアニメーション」の組み合わせになるようだ。
これによって、プレイヤーは「すり足で前進→蹴り→動作中に後退ボタンを押す(蹴った直後に相手から離れる)」のように間合いを考慮した複雑な動作が可能になる。
2:上半身と下半身が独立して動く
次は突き(パンチ)の話だ。AppleII版「カラテカ」では、歩いている最中はいつでも突きが出せる。
歩き始めでも歩き終わりでも、半歩移動でもすり足移動でも、前方移動でも後方移動でも、いつでも構わない。蹴りの途中はさすがに例外だが、上半身が構えポーズであれば下半身がどのような状態でも突きが出せる。
上半身と下半身がそれぞれ独立して個別に制御されていなければ、こんなことはできないだろう。
これを前段で紹介した蹴りの例と組み合わせると「蹴りを繰り出しつつ半歩前進して、間合いを詰めたところで突きを出す」という操作が可能になる(蹴り+動作中に前進→突き)。
「アニメーションが途中で分岐する」「上半身と下半身が独立して動く」という仕組みによって、キャラクターの動きにさまざまなバリエーションを生み出し、現実の格闘技のような連携技を可能にしているのだ。
このような技術は、実写と区別がつかないほどリアルなゲームが作られるようになった現在では当たり前に使われている。しかし、本作が誕生したのは1984年、今から30年以上も昔のことだ。
「カラテカ」は、ゲーム界のオーパーツなのである。
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