白浜駅「弁鶏」(930円)~弁慶生誕のまち・田辺の駅弁屋さん「味三昧」!
毎日1品、全国各地の名物駅弁を紹介! 白浜駅「弁鶏」(930円)です。
【ライター望月の駅弁膝栗毛】(初出:2020年11月24日)
特急「くろしお」号の合間を走る、紀勢本線の普通列車・紀伊田辺行。
バス同様の車載型の機械で、交通系ICカードに対応した227系電車が活躍しています。
紀伊田辺と聞くと、その昔、新大阪~新宮間の夜行列車があったころ、6両の後3両は、真夜中の紀伊田辺で切り離し作業が行われていたことを思い出します。
いまは、世界文化遺産「熊野古道」中辺路(なかへち)の玄関口としてもにぎわいます。
紀伊田辺駅に降り立つと出迎えるのが、大きな武蔵坊弁慶の像。
弁慶の生涯は、不明な点が多いものの、田辺出身という説が有力なのだそうです。
実際、田辺市内には、弁慶ゆかりの地とされる場所も多く、弁慶松や弁慶の父が紅白の鶏をたたかわせたと伝えられる世界文化遺産の闘鶏神社など、エピソードも盛りだくさん。
「弁慶」は、すっかり田辺のシンボル的な存在となっているんですね。
そんな田辺と弁慶にまつわる逸話を予習して、この駅弁を手にすれば納得というもの。
田辺を拠点に駅弁を製造する「味三昧田辺本店」が製造する「弁鶏」(930円)です。
もともと、紀伊田辺駅弁として開発されましたが、駅売店が大手コンビニエンス化されたため、駅弁としては白浜駅での販売、田辺では駅近くの「味三昧田辺本店」で購入できます。
時間と材料に余裕があれば、お店で注文して10分弱でつくっていただくことも可能です。
味三昧田辺本店は、平成6(1994)年のオープンで、創業から25年あまり。
矢野社長は姫路出身で、姫路駅弁としておなじみ「まねき食品」での勤務経験を活かして、この地に弁当屋さんを開いたと言います。
平成20(2008)年ごろ、駅弁屋さん「あしべ」の撤退に伴い、「田辺駅弁の灯を守ろう」と、商工会が行った公募に、「弁鶏」と共に参加したのが、駅弁製造のきっかけとなりました。
【おしながき】
- 醤油ごはん 人参 椎茸 ごぼう
- 鶏肉の紀州備長炭炙り焼き
- 鶏そぼろ
- 錦糸玉子
- 山菜
- 栗
- 奈良漬け
- ガリ
「弁慶」の秀逸な点は、矢野社長も「想像以上に美味しくなった」と自負する、お店秘伝のたれでじっくりと煮込んで、さらに地元の紀州備長炭で炙り焼きにしたという鶏肉です。
炭で炙った独特の風味がとても心地よく、鶏肉のうま味がギュッと閉じ込められています。
もともとは紀州のブランド鶏の使用を前提に開発されましたが、業者の破綻に伴って、入手不可能となり、現在は他地域の鶏を仕入れて、弁当屋の技で乗り切っているとのこと。
もしも、地元のブランド鶏が再興したら、再びぜひ駅弁に使いたいと話しています。
目下、紀勢本線・紀伊田辺~新宮間の普通列車は、国鉄生まれの105系電車。
来年(2021年)春ごろには、この区間にも新型の227系電車が走り、合わせてICOCAなど、交通系ICカードの利用可能エリアとなる予定と発表されています。
ロングシートの車両ですが、普段は駅弁をいただいても、まず問題ないのどかな雰囲気。
落ち着いた時期には、のんびりと南紀の風を感じて、駅弁を味わいたいものです。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/
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