サメがクソみたいなCGで襲ってくる映画「BAD CGI SHARKS 電脳鮫」 映画祭で上映拒否されまくった怪作、堂々配信開始(2/3 ページ)
コペルニクス的発想のサメ映画。
「BAD CGI SHARKS 電脳鮫」に登場するクソCGザメは本作をメタ・サメ映画たらしめている重要なキャラクターだ。数多のサメ映画の情報をネットで収集した彼女(多分メス)はサメ映画におけるサメの扱いに怒り狂い、サメによるサメの為のサメ革命を企てるに至る。
MaJaMaの3人がそれぞれ演じるキャラクターも非常に魅力的である。マッテオが演じるバーナードは映画を現実にする魔法の力を持つキーマンでありトリックスターだ。彼はわれわれ観客に「直接」語りかける、いわゆる “第四の壁” を自覚したデッドプール的存在である。
どこまでも自分の夢を信じてやまない兄ジェイソンと夢を諦めてしまった現実主義者マシュー(実際に2人は兄弟)、そして“3人目の兄弟”であるサメのぬいぐるみチャムレー達が見せる兄弟愛にも注目してほしい。
本作はサメ映画であるにもかかわらず、ちゃんとしたテーマがある。それは「夢と創作の力」だ。フィクションはどこまでも行ってもフィクションだが、そこからメッセージを受け取った人々は時に現実を変えるほどの力を得る。
不幸にして人喰いザメを呼び寄せてしまう元凶となった兄弟の脚本は、ジェイソンとマシューの子ども時代の夢がたっぷりと詰まっていたからこそ強烈な力を発揮する。しかし彼らのかつての夢は今の、そしてこれからの夢へと変わっていく。
「クオリティーなど関係ない。創造する事をためらうな」というのがぶっ飛んだサメ映画たちの重要なメッセージだと私は勝手に解釈しているが、本作はそれを最も分かりやすい形でわれわれに提示してくれているのではないかと思う。
この作品が世に出るまでにかなりの紆余曲折があった事も知っておいてほしい。情熱に満ちたチームMaJaMaは数々の映画祭に本作を出品し、ことごとく上映を拒否された。その数は60以上に及ぶ。最終的にイギリスの国際コメディ映画祭で受賞した時は喜びもひとしおだっただろう。
日本上陸を達成するまでにも長い道のりがあったが、それを一番待ち望んでいたのは他の誰でもない監督達である。監督の1人ジェイソンはもともと日本の怪獣映画をこよなく愛しており、日本のサメ映画ファンの層の厚さと熱量の高さも知っていた。日本配給が決まる前から日本向けのプロモ映像を作ってしまう程の気合の入り様である。
しかし、私やSRSの社長の必死の営業努力も虚しくあらゆる日本の配給会社は全く興味を示さなかった。だが最後の最後でコンマビジョンが手を挙げてくれたのだ。サメ映画に関してはもはや「コンマビジョンしか勝たん」と言っても過言ではない状況である。
自分の作品の一部がアダルトサイトに無断転載されているのを喜ぶような狂人達が作った狂ったサメ映画ではあるが、中身は確かだ。誰にでもオススメできるというわけではないが、アレな感じのサメ映画が好きなら本作もきっと気に入るはずである。どうかその目で彼らの大冒険の行く末を見届けてほしい。
(サメ映画ルーキー)
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