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どす黒いのはゲームではなく自分のプレイスタイルなのだ “闇のアイマス”こと「Idol Manager」を遊んで自分の良心と向き合ってみようモバクソ畑でつかまえて

モバクソゲーサークル「それいゆ」発起人、怪しい隣人さんによるゲームコラム。今回はスマホゲームではなく、PLAYISMからリリースされた「Idol Manager」を遊びます。

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 2カ月ほどのごぶさたでした。怪しい隣人です。注目していた新作スマホゲームがあまりにも普通な感じで、インパクトに欠けるものをどう料理したものかと思っていたらすっかり旬が過ぎてしまっていました。もうアイドルゲームはそこまで驚きのあるものも出てこないのかな、と思っていたところに「あるよ! インパクトのあるゲーム!」とばかりに飛び出してきた「Idol Manager」。ロシアのインディーゲームスタジオが手掛けたというあまりに未知の世界からのコンテンツ。たまにはスマホゲー以外の世界も見てみよう、という意味も込めて購入してみることにしたのですが、なかなかに興味深い作品でした。

Idol Manager」タイトル画面

ライター:怪しい隣人

出来の良くないソーシャルゲームを勝手に「モバクソゲー」と名付けて収集、記録、紹介しています。モバクソ死亡リストは500件を超えました。年々ソーシャルゲームが複雑になり、ダメさを判定するのに時間がかかるのが最近の悩みです。本業はインフラエンジニア。そのためソーシャルゲームの臨時メンテは祭り半分胃痛半分な気分です。

 「Idol Manager」はアイドル事務所経営シミュレーション。自分は事務所の代表兼プロデューサーになるのですが、今まで私がプレイしてきたアイドル育成ゲームと違うのは「アイドルを育てる」のではなく「事務所を経営する」のがメインになっていること。自分でお客にあいさつに行って名刺を渡したり、現場でアイドルのご機嫌を取ったり。マネジャーかプロデューサーか分かりゃしねえ、というような仕事はしません。事務所にどっかり構えてマネジャーを採用して仕事を差配し、アイドルの採用や解雇、グループの方針を決めるのが自分のお仕事です。昨今アイドルもののゲームは育成ゲームより音ゲーが主流になっていますが、そんな中で個々のアイドルではなく、事務所そのものを育成するというゲームなのが実に興味深いです。

スタッフの採用を行う。基本的にゲームはこの画面をずっと見ることに

 ゲームは不二本という男と契約し、アイドル事務所の雇われ社長兼プロデューサーになるところから始まります。具体的に何をするのか、チュートリアルに従って行くことに。チュートリアルは開始時にON/OFFできるのですが、初回なので取りあえず指針を求めてみました。まずは事務所に自分の部屋を作り、採用を開始。アイドルとマネジャーを採用して、アイドルの仕事をマネジャーに取らせる。シングルを作るために作曲家とダンストレーナーを採用し、曲をリリース。シングルを売ってお金を稼ぎ、シングルが複数枚出たらいよいよ待望のライブ。さあいよいよアイドルたちの晴れ舞台! となるわけです。ただ、そう簡単には行きません。結果的にファーストプレイは大失敗。会社は資金繰りに失敗して倒産することになりました。

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出資者の不二本氏
アイドル採用画面。今の主流とは程遠いこの絵柄も慣れると可愛く見えてきます
シングル作成画面
リリース結果画面。驚くほど売れませんでした

 倒産の主な原因は、収入と支出のバランスを全く気にしていなかったことでした。チュートリアルの途中でシングルを作らされるのですがこれが大きなワナ。シングルを作るためには振り付けのトレーナーと作曲家を雇う必要があり、彼らの人件費、仕事部屋の初期費用と家賃でドカンと初期所持金が減ります。加えてアイドルたちの給料をマネジャー任せにしていたため、稼ぐ以上にすごい勢いでお金が出ていってしまいました。もちろん「シングルを売れば一発逆転じゃい!」と考えていたのですが、ぽっと出のろくに宣伝もしていない新人の曲が早々売れるわけもありません。破産が近くなると「ローンを組みましょう」とメッセージが出てきてお金があっさり借りられます。不二本さんは無利子でお金を貸してくれるのですが、それでも週にいくばくかは返済しないといけません。返済がかさんでさらに赤字が出てきます。

見れば分かりますが大赤字です。ローンの返済がエライことになっているのがお分かりでしょうか

 すると、いよいよもう駄目か、と思ったところに不二本さんがやってきて「アイドルたちを特別なデートに連れ出せばお金をくれるという人がいたらどうする?」と聞いてくるのです。こ、これは枕営業……二つ返事でハイお金欲しいですと返事をすると、とても悲しそうな顔で不二本さんに止められます。君がどんなにアコギな働かせ方を強いていても彼女たちは君を信頼しているんだ、と。「良心は金に換えられても金で良心は買えない」と心に染み入る事を言ってお金を置いていってくれます。その流れに思わず感動してしまいました。ありがとうございます不二本さん、でもお金がないのでもう1回お金貸してください、とその直後にさらにローンを組んだ自分は本物のクズだと思いました。

枕営業の暗示
枕営業に乗ろうとした自分を諭してくれる藤本さん。こんな真面目な説教が読めるゲームはじめてプレイしました

 コンサートをやれば客も入るだろうという算段だったのですがこれも大失敗。考えてみればシングルが売れないアイドルのコンサートに来る客なんているわけもありません。またしてもやってきた不二本さん、今度は「知り合いの社長が娘をアイドルにしたいと言っている」とこれまたどこかで聞いたようなことを言ってきました。喜んでコネ入社のアイドルを受け入れたのですが、それも破産までの時間を伸ばしただけでした。最後にやってきた不二本さんいわく「君にできる仕事がまだある」と。これ以上何があるのかと聞いてみると「スタッフとアイドル全員に自分で倒産と契約終了を言い渡しなさい」と。最後は自分で幕を引け、というその態度が大変素晴らしいと思いました。

コネアイドルを採用するときの生々しい契約
何も知らない社長の娘
自分にできる最後の仕事とは……

 と、散々な結果に終わった初プレイでしたが、まさかチュートアリアル通りにプレイするのがワナになっているとは思いませんでした。痛くなければ覚えませぬ、ということなのでしょうか。何度かやり直した結果、私がたどり着いたのは、シングルを出すと費用がかかるのなら、収入が増えるまでシングルを出さないという手段でした。まずは削れるところから削ろうということでアイドルたちの給料を週給1000円に下げました。そして、ひたすら単発の撮影仕事を発注することに。低コストでお金を稼ぐ手段としてWeb配信番組があるので、それを大量生産してしばらく待つとお金が稼げるようになっていきます。1年弱、雑誌のグラビアを飾り続けた女の子たちにWeb配信番組でマニアックな趣味について語らせるというグラビアアイドル事務所みたいな仕事を続けた結果、無事に黒字のままCDを出すためのスタッフを雇い、曲を配信することに成功しています。ただこのゲーム、いろいろな条件を満たすことでストーリーが進んでいくのですが、その条件を満たすのが遅くなるため話が全く読めません。今のところ「シングルを5位以内に入れる」が達成できずに悩んでいるところです。

赤字に見えますが単発の撮影仕事で収入は得ている状態です
配信番組が軌道に乗り、黒字になりました
シングルのためのスタッフを雇っても黒字が続く状態です

 給料の激減については現在「給料を下げすぎるとアイドルのメンタルが低下する」という修正が行われているのですが、今のところあまりデメリットが見つかりません。アイドルのメンタルが下がると「ふさぎ込み」という状態になり、全能力値が半分になります。そうなったら「明日から来なくていいよ」って言って次を雇うだけなので、特に大きな問題にはならないのです。解雇すると友好度が激減するのですが、辞めていく人間の友好度が激減するのに何の意味があるのかはいまだに謎です。また、アイドルを休ませずにいるとケガをしてしまうのですが、こちらはステージに立てなくなるので明確なデメリットとなります。もちろん、この場合も「明日から来なくていいよ」で何も問題はありません。

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クビにするのはとても簡単

 こんなプレイでの感想ですので、ストーリーについての感想はまとまったことはいえません。ですが、合間合間に挟まるアイドルたちの会話は読み応えがあるものでした。あるアイドルが田舎と都会のどっちが有利かを話すイベントが発生したのですが、スクールアイドルについて言及されたり、はてはふるさと納税という単語まで。どこまでローカライズで変更されているのかは分かりませんが、芸の細かさに感心しました。

スクールアイドルについての言及
まさかのふるさと納税にまで

 そのようなお話以外にもこまごましたトラブルが発生するのですが、そのテキストもなかなかエゲツないものがそろっています。「他のアイドルユニットに衣装をパクられた」「パンフレットの日にちを間違えた」あたりはともかく「衣装がドイツのある愛国主義政党にそっくり」というのはあまりにもやばいと思いました。また「歌詞が若者に反抗を促している」「歌詞が政府権力への反発を促している」というイベントが複数出てきたときは、「これがロシア製ってこと?」という気分にもなりました。先に進めばこのクオリティーのテキストが読める、というのは十分にゲームを進めていく駆動力になっています。

具体的な党名は書かれていないので大丈夫!
革命の歌とか作ってないんですが!

 システム面については、慣れてくるまでは少々操作系が煩雑だなと思うところもありました。やることなすこと全部に待機時間があるのですが、最初はこれがとても気になっていました。ですが、複数の作業をマルチタスクですすめる事が必要なのだと気付いてしまえば特に問題なくゲームは進められます。最初はシングルタスクでいろいろなことを実行していたため、待ち時間が妙に長いゲームだと勘違いしてしまいました。

 最後になりますが「Idol Manager」はどす黒いゲームだという人もいました。ですが、どす黒いのはゲームではなく、自分のプレイスタイルなのだと思わされるゲームでもあります。いずれ慣れてくればアイドルたちにまっとうな給料を支払ってもやっていけるのかもしれません。ですが、今の私にはそれで会社を運営する方法がまだ見つかっていないのです。落ちてしまえば悪くはない奈落の底、みなさんも一度自分の良心と向き合ってみるのはいかがでしょうか。私は心のバランスを取るため、「アイドルマスタースターリットシーズン」の体験版を遊んでこようと思います。

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