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子どもの方が、作り手より「心がエリート」 映画「クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園」高橋渉監督&脚本うえのきみこインタビュー(4/5 ページ)

コロナ禍に生きる子どもたちへ伝えたいことがあった。

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コロナ禍の子どもたちへ届けたい

――大人にも支持される劇場版「クレヨンしんちゃん」シリーズですが、今回はしっかり子どもに向けたメッセージを投げかけていて、「青春」という言葉を知らなくても大切なことを学べる内容だと思いました。この物語を届ける上で、心掛けていたことはありますでしょうか。

高橋 企画当初の気持ちとしては、もっとくだらないギャグが満載の、笑って見終われる映画になればいいな、と思っていました。でも、このコロナ禍で子どもたち、特に小学校や中学校や高校と学校に通っている子たちは、本当にかわいそうな目に遭っています。授業も対面でできなくて、運動会も修学旅行中止で、自由そのものが奪われて……やむを得ないこととはいえ、痛ましくて仕方がありませんでした。

 そのことが物語そのものに影響を与えたということではないですが、制作の後半では、そういう子たちにエールを届けたいと思うようになりましたね。大人もまた、社会全体から押さえつけられるような、自分の力だけではいかんともしがたい悩みがあると思います。そういう暗い気持ちに効くような作品にしたいと思っていました。

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(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2021

うえの 私も、ちょうど脚本を書いている時に、甲子園や修学旅行の中止といった、悲しいニュースをたくさん聞いていたので、映画の中だけでも楽しく暴れ回って、「楽しかったね」って思って、家に帰れる映画にしたいと思っていました。

――作家として大切にしていること、矜持(きょうじ)のようなものはありますでしょうか。

高橋 クレヨンしんちゃんに長いことたずさわってきたので、それ抜きの作家性は自分でもぜんぜん想像がつかなくなっています。とにかく、クレヨンしんちゃんは楽しく笑ってもらえるような作品にしようとはずっと考えています。

うえの 現実につらいことがいっぱいあるので、物語の中だけでも、楽しくなってもらえる作品を作って行けたらなとは思っています。そう言いながら、今後どこかで、とてつもなく暗い話を書いていたらすみません。

(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2021

――最後に映画を見た人へ、何か伝えたいことはありますか。

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高橋 今回の映画は、ある意味で「心のワクチン」となるような物語になっていると思いますので、2回3回と見てもらって、今の大変な現実に対する免疫力をつけてもらえたらなと思います。

うえの ネットでろろちゃんの絵を描いている方がいらして、スミコ先生のように優しく見守るような、「ろろちゃんよかったね」という気持ちになっています。愛のこもった絵をたくさん描いていただいてうれしいです。これからも「天カス学園」をよろしくお願いいたします。

心がエリートな大人たちがつくった大傑作

 インタビューを通じて、クレヨンしんちゃん映画でコロナ禍で生きる子どもたちにエールを届けたいという、クリエイターの真摯な思いを受け取った。多様な「青春」をテーマにした本作は、思うような学校生活を送れずにいる子どもたちにとっても、高橋監督が言うような「心のワクチン」になると信じている。それをもって、「本当に優しい、心がエリートな人たちがつくった大傑作だったんだ」と再認識できた。

 現在、「映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園」は大ヒット公開中。真相につながる伏線があちこちに込められているので、2度3度と見ることでさらに面白く見られる、その完成度の高さを再認識できる内容でもある。ぜひ、また劇場で楽しんでほしい。

ヒナタカ

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