「G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ」レビュー 忍者と極道がバイクと日本刀で戦う超絶アクション問題作(1/3 ページ)
「未曾有の忍者テロを阻止せよ!」というキャッチコピーは本当だった。
映画「G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ」が10月22日より公開されている。
本作は玩具を原作とした実写映画「G.I.ジョー」シリーズの最新作。その中でも屈指の人気を誇るキャラクター、12種の格闘技に精通する最強の忍者ヒーロー「スネークアイズ」を主人公に迎えた内容となっている。
本作は、そのスネークアイズの「起源」を描く物語であるため、過去作をいっさい見ていなくても問題なく楽しめる。加えて、「日本人がいちばん面白く見られる」ポイントがたくさんある愉快な大作アクション映画に仕上がっていた。さらなる魅力を記していこう。
ヤクザ集団が日本刀で襲ってくる!
日本人にとってまずうれしいのは「日本が舞台」であること。新型コロナウイルス感染拡大直前の2020年2月にハリウッド映画史上最大規模の日本ロケ撮影が東京、大阪、兵庫、茨城などで行われており、世界遺産の姫路城や岸和田城などが登場するのだ。
ここで、同じく大作アクション映画で「なんだかちょっとだけ違うけどリスペクトがたっぷりあるニッポン」を描いた「007は二度死ぬ」(1967)「キル・ビル Vol.1」(2003)「ウルヴァリン:SAMURAI」(2013)などを思い出す方も多いだろう。公式サイトではロケ地のマップも掲載されているので聖地巡礼をしてみるのも楽しそうだ。
ちなみに、当時の撮影クルーが国内の数カ所でロケを行って落とした金額は約19億円にのぼっているそうで、この映画が公開されて日本が注目を浴びると今後の経済効果は数百億円にも上る見込みがあるとも言われている。
しかも、その日本でバトルを繰り広げるのは「忍者と極道」である。ヤクザ集団はデフォルトで日本刀を持ったまま襲ってきて、トラックに黒ひげ危機一発のように大量にぶっ刺しまくる。対して忍者はアクロバティックな動きで敵を翻弄し、時には同じく日本刀でタイマンバトルに躍り出る。
さらに、バンクーバーにセットを建てることで実現した、雨降りしきるネオンサインが怪しく光る路地裏で、刀が振り上げられるたびに水滴が飛ぶ見た目にも美しいバトルも展開する。
終盤のバイクチェイスはさらに圧巻で、運転しながらの攻防戦や、巨大な自動車運搬車の上での激しいつばぜり合いなど、規格外のアクションがぶっ続くのでたまらない。とあるスペクタクルシーンでは、「未曾有の忍者テロを阻止せよ!」という耳慣れなさすぎる単語が出てくるキャッチコピーがウソではないことが分かり驚愕することだろう。
主演のヘンリー・ゴールディングはこれまで正式なファイトトレーニングを受けたことがなかったが、そもそもの鍛え抜かれた肉体もあってかメキメキと上達。最初の撮影の2カ月前からスタートしたアクション指導は過酷なもので、1度に7~8人との振り付けを行うこともあったが、最終的には本人もスタッフも満足の行く仕上がりになったという。
しかも、ライバルとなる男を演じたアンドリュー・小路、保安責任者のくノ一となった安部春香、試練を与える「ハードマスター」役のイコ・ウワイスは、それぞれがマーシャルアーティストでありキレキレのアクションを披露。さらに人がいっぱい死んじゃう系アクション映画「ガンズ・アキンボ」のサマラ・ウィーヴィングが凄腕の女性エージェントに扮しており、殺し屋の女の子2人による青春アクション映画「ベイビーわるきゅーれ」の伊澤彩織もメインキャストのスタントダブルを担当していたりもする。
これら実力派キャストたちのアクション監督を手掛けたのは、実写映画版「るろうに剣心」シリーズなどで知られる谷垣健治。アジア映画で築き上げた技術が、ハリウッドのケレン味たっぷりのアクション映画で見事に昇華されことにも喜びを禁じ得ない。
最高峰のスタッフが日本へのリスペクトを全力で示した作品であることに加え、「こういう忍者バトルが見たかったんだよ!」と心の中の中学2年生が大暴れするアクションの盛り盛りぶりは、一部で熱狂的な支持を得た実写映画版「モータルコンバット」も彷彿とさせるものだ。
ジョジョみたいなNINJA修行が始まる!
突然だが、マンガの「ジョジョの奇妙な冒険」の第1部に「グラスに入ったワインをこぼさないようにしながら敵を倒す」ことを命じられる名シーンがある。この「漆黒のスネークアイズ」でも同様に、「器に入った水をこぼさないようしながら戦う試練」が与えられるため、「もはやジョジョじゃん…!」と思わせてくれるのも愉快だった。
ちなみに、ここで戦う相手の「ハードマスター」役のイコ・ウワイスは、高層ビルでSWATとギャングが戦う映画「ザ・レイド」(2011)でも「シラット」という格闘技を用いたすさまじいアクションを繰り出しているのでおすすめである。
さらに、続く試練では「穴の底での心の鍛錬」を余儀なくされる。ここでも、「ジョジョ」の第2部で穴の底からの脱出を試みる「ヘルクライム・ピラー」という修行シーンがあったじゃないか……! と思い出す。もっとも、登ることそれ自体が目的ではないので厳密にはジョジョとは違うのだが。
関連記事
映画「モータルコンバット」レビュー R15+指定だけど中学2年生の心が燃え上がるゲーム原作映画の理想系
「グロいのが大丈夫な、中学2年生の心を持つ大人」は絶対に映画館で見てほしい。殺し屋女子2人vsヤクザ 日常系アサシン映画「ベイビーわるきゅーれ」レビュー
アクションとだるっだるな日常のコントラストがすごい。映画「シャン・チー」レビュー シリーズで1、2を争う面白さにぶっ飛ばされる傑作
主演に大抜擢されたシム・リウに惚れた。“外見至上主義”に切り込むトラウマ級サイコホラー アニメ映画「整形水」レビュー
「因果応報」のレベルが半端じゃなかった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.