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震災で落下した大量の“活字” 落ちずに残った活字を「おみく字」にする取り組みに「素晴らしい」と反響(1/2 ページ)

活版印刷の記憶と物語を感じさせるアイテムに。

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 地震で棚から落ちた大量の“活字”。阪神・淡路大震災を振り返って、大量の落ちた活字の写真と、落ちなかった活字の活用法を投稿した印刷会社のツイートが注目を集めています。

阪神・淡路大震災の揺れで崩れ落ちた活字。すでに衰退傾向にあった活版印刷に大きな打撃となったようです
大阪北部地震での2度目の落下。落ちずに残った活字は「おみく字」として販売

 投稿したのは、1968年創業の大阪市の印刷会社・山添の代表、野村いずみ(@Izumi_Nomura)さん。1995年1月17日に起こった阪神・淡路大震災で、活版印刷に使う活字が活字棚から崩れ落ちました。当時は活字はほとんど使われていなかったものの、山添では崩れた活字をなんとか拾い集めたといいます。

「活字」への強い想いが感じられるエピソード

 しかし2018年の大阪北部地震で再び活字が崩落。活字は柔らかくて落ちただけで欠けてしまい、印刷してみないと使えるか分かりません。2度目の崩落のときは、使えるか分からない活字を再度拾うのは負担が大きく、復旧は断念して処分することとなりました。

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 地震でも落ちなかった活字もありました。同社は今、それを「おみく字」として販売しています。たくさんの引き出しから引くタイプの神社のおみくじのように、活版印刷の工場で使われていた薬箪笥の引き出しから「おみく字」を引くことができます。活字が1つと、活版印刷についての説明書きが入っています。

「おみく字」を包む紙にも、こだわりが感じられます

 野村いずみさんに、「おみく字」商品化に込められた想いなどを聞いてみました。

―― 阪神・淡路大震災で活字が落ちた時、すべて拾い集めるのにどれぐらいの日数がかかりましたか。

野村さん 当時会社にいた現役の職人と、父と私との3人で、毎晩3時間活字を拾って半年かかりました。

2度目の大阪北部地震での落下で、拾い集めることを断念

―― Twitterに投稿されていた写真に写っていた活字はどれぐらい前から使われていたものなのですか。

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野村さん 活字は創業時の53年前に買ったものです。1990年ごろまでは名刺や年賀状を印刷していたのですが、その後は昔からの名刺の注文と私の名刺などでたまに使うくらいになっていました。

―― どのような想いで、活字を「おみく字」として販売することにしたのですか。

野村さん 阪神淡路大震災のころにはあまり使わなくなっていた活字。活字を馬棚から文選箱に拾い戻すときの音は、遅くまで仕事をしていた父の背中が記憶に蘇る音。共に働き、残してくれた活字をこのまま捨てたくない気持ちと、震災を乗り越えて落ちずに残っている活字は、落ちない幸運の活字だなあと思い眺めていて「おみく字」として販売することにしました。

―― 投稿後、どのような反響がありましたか。

野村さん 当時を振り返ったり、活版印刷への想いを話してくださる方、欲しいと言ってくださる方。たくさんの応援の言葉をいただき感謝と、感慨深く思います。店舗「THE LETTER PRESS」へも足を運んでくださる方が増え、Twitterの反響の大きさに驚いています。遠方の方からもリクエストがあり、オンラインストアで販売を開始したところ、30分も経たないうちに完売となりました。一度に大量を準備出来ないため少しづつではありますが、一人でも多くの方に活字からのメッセージと想いが届くように、継続していきたいと思います。

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店舗ではこのように販売されています

 「おみく字」の価格は550円。店舗では常時販売、オンラインストアでは限定数で販売し、完売ごとに追加販売するとのことです。

オンラインストアでは「行」と「列」を選んで「引き」ます

 「おみく字」の販売について、Twitterでは「素晴らしい」「欲しい」という声が多数寄せられました。「落ちなかった活字」ということで、「受験生に良さそう」というコメントも。落ちた活字を見て、「どんなに衝撃的だったかと思います」「一文字一文字を拾うなんて本当に骨の折れる作業だろうな」など、胸を痛める人もいました。

 凹凸やインクの濃淡が魅力として再注目される活版印刷。新しい印刷技術を取り入れつつも、活版印刷を続ける老舗ならではの、活版印刷に携わる人と道具の物語を感じさせる商品と言えるのかもしれません。

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