「高瀬舟」や「山月記」 シュールな“浮世絵風あるあるネタ”で人気のイラストレーターが名作を漫画化、その狙いは?(1/3 ページ)
教科書に載っていた「高瀬舟」「山月記」、映画の題材になった「風立ちぬ」「人間失格」など幅広い作品を漫画に。
「何となく習っていた高瀬舟が大人になって初めて分かった」「文学の入門としてとても良い」――およそ1年前、森鴎外「高瀬舟」を漫画化した投稿がTwitterで話題になり、6万件を超えるいいねを集めました。その「高瀬舟」の漫画を収録した日本文学のコミカライズ本『山田全自動の日本文学でござる』がこのほど発売されました。難解なイメージのある「文学」を身近に感じられる取り組みについて、出版社に狙いを聞きました。
同作の著者は、Twitterで16万人、Instagramで100万人を超えるフォロワーを持つイラストレーターの山田全自動(@y_haiku)さん。浮世絵風イラストで日常の「あるある」を描いて人気を博しています。
収録されているのは「高瀬舟」「山月記」など多くの人が教科書で出会った作品や、「風立ちぬ」「人間失格」など映画のモチーフとなった作品など20作。「原作に忠実でありながら随所に全自動さんならではのユーモアや配慮が感じられる」「読んだ方がいいだろうけど少し苦手だな、と思っていた部類の内容を、スーっと入らせてもらえる」と反響があり、発売直後に重版が決まるほどの人気となっています。
シュールな作品で人気の山田さんの新機軸でもあり、「文学初心者にもわかりやすく、日本文学の魅力を再発見できる」とうたう同書。その狙いや工夫について、辰巳出版の担当者に聞いてみました。
「挫折した人でも文学を楽しめるように」
これまで『山田全自動の落語でござる』『山田全自動の懐かしあるある』など山田さんの著書を刊行してきた辰巳出版。かねて山田さんに注目していた同社の担当者が、山田さんのSNSやブログで公開された、日本文学を題材にした漫画を読んだことがこの企画のきっかけとなったと話します。「名作といわれる文学作品を、気軽に漫画で楽しめる本ができると考えました」
「有名な文学作品でも、実際には読んだことがない人も多いと思います。また、近代の文学作品となると、文体が現代とは少々異なっているため読みづらく感じたり、作品の時代背景などをよく知らないために、内容についていけないこともあるかもしれません。いざ読み始めても、その面白さを感じる前に挫折してしまった人も少なくないのでは。そんな方にとっても、気軽に文学の魅力を感じてもらえるような本にできればと考えました」
また、これまでの山田さんの「あるあるネタ」や「落語漫画」と違った魅力を感じたことも、書籍化企画の背景にあると担当者は述べています。「山田さんの作風は、イラストとしてのタッチは独特ながらシンプルで、シュール、かわいい、やわらかい……などの印象が強いと思います。特に『あるあるネタ』では、江戸時代の町人風というキャラクターが際立つため、固定したイメージを抱かれがちでした。本作では、時代やジャンルも横断した、新たな山田全自動ワールドが誕生すると考えました」
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