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“マックス”は死んでも“メタル”は死なず 「メタルマックス ワイルドウェスト」の開発中止と「メタルサーガ ~叛逆ノ狼火~」への期待(6/6 ページ)

30周年を迎えた直後に開発中止となった「メタルマックス」最新作をしのんで。

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新作のためにアーリーアクセスを始めた「メタルドッグス」だったが……

 そして2021年。「メタルマックス」30周年である5月24日に先駆けて、3月14日に「メタルマックス30周年 生誕プレ生放送 ~心から全門感謝!!~」が放送されました。この放送では、メインスタッフに加えてゲストとして進行役の男色ディーノ氏、「メタルサーガ」シリーズのIPを持つサクセスのKAZプロデューサーを招き、30周年に向けたさまざまな企画が発表されたのです。

メタルマックス30周年 生誕プレ生放送 ~心から全門感謝!!~

 ゲームに絞ると、一番の目玉は「ゼノリボーン2(仮)」のタイトルが変わり、新たに「メタルマックス・ワイルドウェスト」として正式名称が発表されたことでした。そして、もう1つ。「メタルサーガ」シリーズの完全新作の開発が進んでいることが明らかに。さらに、3つ目の隠し球として、犬の「ポチ」を主役にしたスピンオフのカジュアルなローグライトアクション「メタルドッグス」Steam)が発表されました。

 これらの正式な続報は5月23日と24日に行われる公式生放送で明らかとなりましたが、まさかの新たな3タイトル。「ゼノリボーン2」が生まれ変わって「ワイルドウェスト」になったのはともかく、「メタルサーガ」シリーズ新作の発表に加え、「メタルドッグス」が出てきたこと自体が予想外。4gamerの座談会だと、マーケティングの観点からすれば犬より猫だといわれていたような記憶もありますが、こちらは「ゼノリボーン」の素材を使ったスピンオフ。「ゼノリボーン」には猫がいなかったのでポチが主役です。当初は肩の力を抜いたスピンオフなのかと思ったら、あまりにも悲壮な覚悟があって作られるものだということも分かりました。

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「メタルマックス」シリーズ座談会。原作者・宮岡 寛氏や初代プロデューサー・桝田省治氏ら4名が反主流RPGの成り立ちを語る(4Gamer
【METAL DOGS】制作発表直後!自腹借金でのゲーム制作を完全暴露ドキュメント!

 現「メタルマックス」シリーズのディレクターを務める友野祐介氏の動画にて、本人自らが「メタルドッグス」を作った狙いについて語っています。それによると、続編である「ワイルドウェスト」を作る前に、チームとしての経験を詰んで課題だった部分を克服しておきたい。続編の製作の前に1本挟み、本家のナンバリングでは試せない見下ろし視点であったり、UIの挙動を徹底的に快適にしたりといったことをしておく必要が1度ある、と。そうした狙いで始めたそうです。そのために他者の手を借りずに自社で数千万円の資金を調達し、自社開発&販売で「メタルドッグス」を出すという内容が語られました。より正確なニュアンスと内容に関しては、実際に動画を見ていただく方がよいでしょう。

 な、なるほど……。確かに自分も「ゼノリボーン」の時点からアーリーアクセスかクラウドファンディングで作るべきだと思っていたので、現状のやり方としてアーリーアクセスを挟むのはアリだったと思います。結果としては「ワイルドウェスト」が開発中止になったので、借金をしてまで作った「メタルドッグス」の存在は浮いてしまいました。育成を始めるのが、一手遅かった印象です。

 自分も続編の資金調達ということで購入し、実際に配信当初の段階からアップデートするたびに遊んで、最終的にクリアしています。なぜか、いまだにアーリーアクセスのままですが……。Steam版も家庭用版と同じくエンディングまで実装されていますが、Ver0.5.0。なんとなく、「ワイルドウェスト」の開発中止と合わせたゴタゴタを感じてしまいました。

 借金をしてスタッフ育成のためにローグライクを作るという冒険には驚きましたが、今の時代のやり方としてアーリーアクセスやクラウドファンディングは現実的。今になってスタッフを育成するといわれても「ゼノリボーン」の前にやっておくべきだったとは思いますし、むしろ本編自体もアーリーアクセスやクラウドファンディングで資金を調達しながら作り込む、くらいでも良かったのではないかと思いましたが、「メタルドッグス」自体はそこそこ遊べて身の丈にあった作品になっていたと思います。カジュアル方面に寄せて「犬カワイイ」だけで遊んでくれるファンを取り込むというのも、苦肉の策とはいえ悪くはなかったです。スタッフ育成のためのゲームという前提も事前に明言しているので、ユーザーを実験台にするような悪印象も「ドッグス」に関してはなかったと思います。

ノーマルは非常にカンタンで、カジュアル寄りのバランスな「メタルドッグス」

 

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メタルシリーズの未来は「メタルサーガ」にかかっている

 ただし、現在はインディーゲームでいくらでも良質な作品がある時代。この時代に「メタルドッグス」の内容と値段で勝負をかけられるのかと言われれば、そこはなんとも言えません。結局「ワイルドウェスト」が開発中止になってしまった現状では、「ワイルドウェスト」のために作られたと言ってもいい本作そのものの存在意義が宙に浮き、悲しい作品と化しているのも事実です。明らかに「ワイルドウェスト」に続く伏線も張っていただけにもったいないですね。シナリオも外伝とはいえ、Dr.ミンチのセリフがノリノリで悪くなかったのですが……。

 「メタルマックス」の新作が開発中止になることは珍しくないのですが、正直に書くと「ゼノ」「ゼノリボーン」「メタルドッグス」。そして「ワイルドウェスト」の開発中止に至るグダグダな流れからも、どこかズレたシリーズの良さを引き出せる人が必要に思えます。ユーザーの意見の何を取り入れ、何を無視するべきなのか。新規をどうやって入れればいいのか。開発の予算をどこに投入すべきなのか。4Gamerの座談会では桝田省治氏が外側の視点から問題点を指摘していましたが、素人目でも客観的に宮岡氏やメタルシリーズの魅力を引き出せる外部の目が必要だと痛感しています。良い物を作っても広められず、売れない理由をゲームの中身やデザインに求めていたとしか思えない変化を続け、どうしようもない迷走を続けているように見える現状では、遅かれ早かれ終わったとしか思えません。とても歯がゆく、残念な思いです。今回の開発中止で「コードゼロ(仮)」がどうなるのかは分かりませんが、メタルマックスは事実上3度目の死を迎えたと言っていいでしょう。いつか「メタルマックス」シリーズが復活できることを願っています。

実際、このラストにある桝田さんの発言のあと本当に最高傑作の桃鉄が出ました(4Gamerの座談会記事より)
新作の開発中止が発表された翌日の6月10日。Steam版のゼノリボーンが発売されました。レビューを見ると好評ですが、翻訳して中身を読むと作品の評価というより国内外問わず「メタルマックス」シリーズへの期待を寄せる意見が多く、このシリーズがまだ期待されていることを伺わせます

 むしろ、現状ではそうしたしがらみが少ない「メタルサーガ」新作への期待が大きくなっています。「砂塵の鎖」時代からブラウザゲーム、ソシャゲの時代まで、キャラクターや現代的な方向性での売り方としては「メタルマックス」よりも「メタルサーガ」シリーズの方が積極的でした。恐らくは、今回も大きく外すことはないはず。2021年5月24日の放送で明らかになった「メタルサーガ 叛逆の狼火」は、人間対人間という「ゼノ」とは明確に差別化を図った方向性を打ち出しており、コンセプトが明確でした。開発が延期になった発表の場でも、まだ開発者同士の意見の相違で対立している場面を見せられたり、ピントがやっと合った発言が出たり、どこまでもズレていた「ワイルドウェスト」の発表より期待できたのも本音です。正直、外に見せていい姿ではなかったので見ていてハラハラしました。

 一方、サーガの方は別荘のカスタマイズといった売りの要素も分かりやすく見せていました。久々の家庭用ゲーム機での復活ですし、旧作の家庭用版は「砂塵の鎖」と「鋼の季節」しかなく現行ハードでどうなるのかは未知数であるものの、現状では「叛逆の狼火」にメタルシリーズの今後を託すしかない状況です。あまりプレッシャーをかけてこちらも潰れられると困りますが、無理をしない範囲で「多くのユーザーが面白いと言える」作品を作り、サーガ及びマックスシリーズの復活ののろしになることを期待しています。個人的には、面白ければメタルらしさにも叛逆していたって構わないのです。マックスじゃなくてサーガですし。まずは、面白くて売れなければ話になりません。頑張っていただきたい。

 メタルサーガだけではなく、メタルシリーズ全体の未来を担う「叛逆の狼火」。このシリーズがどこへ向かうのかは未知数ですが、「叛逆の狼火」がメタルマックスとメタルサーガの未来に希望をもたらし、新規ユーザーを多く取り込める作品であることを祈っています。そしていつか、かつてのようなブレない芯と「ゼノ」や「ゼノリボーン」で新たに培った良い部分を併せ持ち、捨ててしまった多くの無駄を取り戻した「メタルマックス」シリーズの新作が、再び復活することを願ってやみません。なあに、メタルマックスが死ぬのは1度や2度じゃありませんぜ。こちらはもう慣れたものですよ。今は英気を養いつつ、IPが受けたダメージをサーガで回復してから、改心の出来といえる作品を今度こそ問題のない宣伝や露出で出せると信じています。

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