「『リケジョ』って呼ぶのはやめてください」 高校生4人が性差別の改善を訴える動画制作 ジェンダーに関心を持った理由を聞いた(1/2 ページ)
「『男子がチアダンスやるの? ちょっと気持ち悪いし、似合わないよ』にモヤモヤ……」。
「『リケジョ』って呼ぶのはやめてください」──。4人の高校生たちがジェンダーバイアス(性別による無意識の思い込み)に関するショートムービー5本を制作し、YouTubeに公開しました。編集部では高校生たちにジェンダーに関心を持った理由や、ショートムービーに込めた思いについて話を聞きました。
今回、高校生たちは脚本・絵コンテ制作・監督を担当。女性が文系ではなく理系を選択すると「リケジョ」と言われたり、男性が日焼け止めを塗ると驚かれたり、高校生たちが日常で抱いた違和感が反映されています。また、夫婦の家事分担が妻に偏っていることを問題視した動画や、同性の同級生に告白されて、友達としてその思いを受け止めるまでを描いた動画も存在します。
高校生たちはNPO法人ジェンダーイコールに所属。同団体はセミナー登壇や企業向けジェンダー研修・コンサルティングなどを通して、ジェンダー課題に取り組んでいます。メンバーは社会人が約4割、学生は約6割と、学生の割合が多いのが特徴です。
「『男子がチアダンスは気持ち悪い』にモヤモヤ……」
そもそも、なぜ高校生たちはジェンダーに関心を持ったのでしょうか。また、ショートムービーに込めた思いとは──。編集部では高校生たちと、NPO法人ジェンダーイコール代表の田渕恵梨子さんに話を聞きました。
当時高校3年生だったAさん(現在は大学1年生)がジェンダーに興味を抱いたのは高校のころに所属していた、チアダンス部でのある出来事がきっかけでした。
「私が所属していたチアダンス部に男子生徒が入部を希望したとき、まわりの部員から『男子がチアダンスやるの? ちょっと気持ち悪いし、似合わないよ』『チアダンスって女子がやるものでしょ』という反応があり、モヤモヤを感じたことがきっかけです。チアダンス部のモヤモヤについて調べていると、学校生活のなかで当たり前のようにジェンダー差別が存在することに気がつきました」
自分自身の脱毛について「男なのに」と感じていたことに違和感を抱き、ジェンダーバイアスの存在に気づいた生徒もいます。当時高校2年生のBさん(現在は高校3年生)です。
「僕は今、脱毛しているんですけど、最初は『男なのに』と恥ずかしく感じていました。また、通っている男子校で、仲の良い友達に脱毛を勧めたところ、僕と同じように『男なのに』という理由で恥ずかしがっていました。知らないうちに僕やその友達はジェンダーバイアスを抱えているのだな感じ、興味を持ちました」
田渕さんは、ショートムービーのテーマが高校生が日常で感じるジェンダーバイアスのみならず、夫婦の家事分担、性的マイノリティなど幅広いことについて、「作品を手がけたメンバーが複数人おり、それぞれが抱えている違和感をテーマにしてもらったことが理由だと思います」と話しています。
実際、制作メンバーには海外在住の経験があり、日本だけではなく、海外でも差別を経験したという当時高校2年生のCさん(現在は高校3年生)や、中学生のころ、LGBTQなど性的マイノリティについて関心を持ち、調べ始めたことがきっかけで、ジェンダーに興味を抱いた当時高校2年生のDさん(現在は高校3年生)も参加しています。全員、生い立ちや性別などはさまざまですが、ジェンダーに関心を持ち、現状の改善を訴えるために動画制作に挑みました。
例えば、脱毛をきっかけにジェンダーに関心を持ち、夫婦の家事負担について描いたBさんは、「ジェンダー問題に取り組むのは男性より女性のほうが比率が多いと思います。ジェンダー問題は男女共通の問題なのに、男性の取り組みが少なかったらダメなのではないか。そこで、僕のような男子高校生がジェンダー問題に取り組み、友達などにも伝えることで少しでもジェンダー問題の解決に貢献できるのではないかと思っています」と問題意識を明らかにしています。
また、同性愛について描いたDさんは「セクシャリティで悩んだり、まわりからの発言などで違和感を持ったりしながら生活している人が社会にたくさんいると思います。今の社会では自分から調べた人しかLGBTの問題や女性差別の問題についての正しい情報に触れる機会がありません。ジェンダーの問題についての考えを発信し、『人の性格や体質が変わるようにセクシャリティも変化することがある』という認識を持った社会にしていけたらなと思います」と希望を語りました。
動画を見た視聴者からは「仕事の合間に旦那に動画をシェアしました。帰宅したら、普段料理をしない旦那がカレーを作っていました。確実に動画の影響力です。あの動画に感謝します。人の気持ちが動かせる、動画ってすごいよって伝えてあげてください」など、高校生たちを応援する声が寄せられています。
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