「コミケで将棋倒しは起きない/起きていた」論争が勃発 → 過去に雑踏事故が発生 女性に“面白いから踏んでいこうぜ”など暴言か(1/4 ページ)
ねとらぼ編集部はコミックマーケット準備会に問い合わせ、5点で正誤を整理しました。
韓国・ソウルの繁華街「梨泰院(イテウォン)」で発生した雑踏事故を受けて、SNS上では過去にコミックマーケット(通称コミケ)で雑踏事故が起きたことがあるのか、ないのかといった論争が起きています。ねとらぼ編集部がコミックマーケット準備会に問い合わせたところ、コミケでは過去に雑踏事故が起きていたことが確認できました。
SNS上では「コミケで将棋倒しが起こらない理由、これは社会学、文化人類学の課題として真剣に研究すべきだと思うよ」など、コミケでは雑踏事故は起きたことがないとする意見が複数見られます。
一方で、それらの意見に対して、「コミケで将棋倒しは『起きています』。C58(2000年夏)3日目西館将棋倒し事件」「将棋倒しでなくても転んだ女性を大勢の男がわざと踏んで移動して救急車が呼ばれた事もあります」などと反論する投稿も多く寄せられていました。
これらの投稿の正否について、ねとらぼ編集部が準備会に問い合わせたところ、共同代表の安田かほる氏・筆谷芳行氏・市川孝一氏から回答が得られました。その内容を元に、論点を以下の5点に分けて整理しました。
- 「コミケで将棋倒しは起こらない」という投稿は本当か
- 「2000年の夏に開催した『コミックマーケット58』で雑踏事故が起きた」という投稿は本当か
- 「コミックマーケット58」の雑踏事故の際に「1人の女性は内臓破裂の重症だった」という投稿は本当か
- 「転んだ女性を大勢の男がわざと踏んで移動して救急車が呼ばれたことがあった。「『面白いから踏んでいこうぜ』と言いながら踏んだ男もいた」という投稿は本当か
- 「長いエスカレーターの事故もあった」という投稿は本当か
1.コミケで将棋倒しは起こらない → 誤り
まず、「コミケで将棋倒しは起こらない」という投稿については、誤りであることが確認できました。過去にコミケで雑踏事故が起きたのは事実です(※詳細は2に記載します)。
2.2000年夏の「コミックマーケット58」で雑踏事故が起きた → 事実
2000年の夏に開催した「コミックマーケット58(※)」で雑踏事故が起きたという投稿については、 事実であることが確認できました。
※「コミックマーケット58」は2000年8月11日~13日に東京ビッグサイト(東京国際展示場)で開催されました。公式サイトによると、約3万4000のサークルが参加したとのこと
準備会によると、2000年の夏に開催された「コミックマーケット58」の3日目、開会にあたってシャッターが開放された際、参加者がトラックヤードに殺到したとのこと。一部サークルの机や頒布物が倒されたほか、数人が転倒して怪我をしたとしています。
一方で、準備会は「この事故は、参加者の混雑対応における準備会の不手際によるもので、これを契機に、混雑対応のやり方を抜本的に見直し、安全な行列形成に努めており、以後は同様の事故などは起きておりません」との見解を示しました。
3.1人の女性が内臓破裂の重症 → 根拠不明。ケガの詳細は判定留保
「コミックマーケット58」で起きた雑踏事故の際に、「1人の女性は内臓破裂の重症だった」という投稿については根拠不明です。ただし、ケガの詳細については判定留保とします。
まず1人の女性が雑踏事故に巻き込まれたのは事実か。ねとらぼ編集部では、その翌年に開催された「コミックマーケット59」のカタログに、前年の雑踏事故に巻き込まれた女性に関するレポート漫画(※)が収録されていることが確認できました。
※『コミックマーケットカタログ59』834頁~835頁に収録されたレポート漫画「1-13:人なだれ」。ねとらぼ編集部では国会図書館で閲覧しました
レポート漫画では、当日の会場には大勢の男性がおり、スタッフが「走らないで」と呼びかけると、競歩をする人もいたことなどが描かれていました。雑踏事故については、「将棋倒しでケガ人も出、あろうことか関係ない女の子まで巻きこみ、ケガをさせたそうです!!」などと説明しています。なお、「開場と同時に走り出した男どもに、無惨にもふみつけられた友人」との記述があるため、作者は雑踏事故に巻き込まれた女性の友人とみられます。
当時のインターネット上にも、「その後私が目にしたのは、コンクリの床に倒された女の子。服ぼろぼろ、サンダル破壊、体中赤アザだらけ」「実際骨折してたかどうかは不明だが、スタッフが車椅子出して来てたから、その女の子がケガによってすぐ歩けなかったのは事実だ」など、1人の女性が雑踏事故に巻き込まれたという書き込みが見られました。
一方で、準備会はケガについて、20年以上前の事故で詳細な記録は残っていないとしつつも、「お怪我をされた方は救護室にて、準備会の医師の処置を受けていますが、骨折などの重大事故ではなかったようです」との見解を示しています。なお、雑踏事故が起きた「コミックマーケット58」のカタログには、救護室の体制について、「コミックマーケットでは、気分が悪くなったり、怪我をした人のために、医師・看護婦(原文ママ)の資格を持つスタッフが常駐する救護室を設けてあります。しかし、医療施設ではないため、学校の保健室程度の簡単な対処しかできません」などと記載されています(※『コミックマーケットカタログ58』22頁)。
また、前述のレポート漫画では「そのまま病院に行った…」「大手の前に殺到する男ども。後にはボロボロになった巻き込まれた女の子…。後でスタッフさんが車イスで救護室へ連れていってくれました」などの記述があるものの、ケガの内容については具体的には言及されていません。
インターネット上では、「骨折・脱臼した人が10人前後で、そのうち女の子が1人 倒れて動かなくなった人が1人、担架で運ばれていって救急車で病院に行ったのはこの人。(脳震盪と骨折?) 内臓破裂の人が居た、というのはデマ」「おれは3人って聞いたけどな(重傷者) 打撲が5名ほど軽傷者」などの投稿があり、すでに当時から情報が錯綜(さくそう)している様子です。
いずれにせよ、「1人の女性が内臓破裂の重症を負った」ことを裏付けるものは見つけられなかったため、その点については根拠不明としました。ただし、ケガの程度を裏付ける確固たる証拠がないため、ケガの詳細ついては判定留保としています。
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