オスカー有力候補から感じるクレしんテイストに全米がハマった 「エブエブ」ネット民大ウケの“指ソーセージ”バースが解禁
ダーウィンもビックリの進化を遂げた世界線。
オスカー有力候補の新作映画「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」(3月3日公開)からツッコミ待ちとしか思えない劇中シーンが公開。今年度最多10部門11ノミネート作でありながら、試写会では「エブエブはA24が全力で作ったクレしん」「めくるめくカンフーアクションの味がするクレヨンしんちゃんです」と斜め上の評価が連続しています。いや、どういうことなの?
今回解禁されたのは、登場人物の指がソーセージになっている奇妙すぎるシーン。「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(以下、エブエブ)」は幾つもの世界が並行して存在するマルチバースを扱う作品で、私たちが住む宇宙の傍ら、どこかにソーセージの指をぷらぷらさせている人類の存在する世界が存在する、という可能性を描いています。
とっぴな設定にはまだ人類が進化の過程にあったころ、ソーセージ指のサルが普通の指をした一派を打ち倒し、人類の未来が決まったというダーウィンも腰を抜かしそうな背景を提示。主役のエヴリンを演じるミシェル・ヨーは、「脚本を読んでいて思ったの。“頭がまともな人は、ソーセージの指なんて発想はしない”とね」とぶった切っていますが、すでに公開された海外ではこれがバカウケした結果、ネットミーム化しトレンドに。BAFTA授賞式でネタにされたり、悪乗りしたA24が公式グッズ化したりとさらなる進化を極めています。
一見ばかばかしいシーンではあるものの映画ファンの視点で見れば、サルの場面はスタンリー・キューブリックによるSF映画の金字塔「2001年宇宙の旅」へのオマージュ。同作には他にもSFアクションの金字塔「マトリックス」や、タランティーノ監督の「キル・ビル」、ウォン・カーウァイ監督の「花様年華」からディズニー作品まで、さまざまな名作へのオマージュが詰め込まれ単なるコメディー映画の枠を越えた快作に仕上がっています。
「エブエブ」の主人公エヴリンは、気の弱い夫にボケた父親、反抗期の娘を抱え、さらに経営するコインランドリーは破産寸前、国税局からもイチャモンをつけられもう爆発寸前。そこへ突如“別の宇宙から来た”と語る夫とそっくりなウェイモンド(キー・ホイ・クァン)が現れ、「全宇宙にカオスをもたらす“強大な悪”を倒せるのは君しかしない」と告げられ……。さらに悪の正体は娘のジョイ(ステファニー・スー)だと知り、幾つもの並行世界(マルチバース)に存在する違う人生を歩む自分自身の力を駆使しながら、壮絶な戦いに挑んでいくというストーリーです。
一足先に試写会で鑑賞した観客からは、まるで劇場版「クレヨンしんちゃん」のようだという評価も。「すがすがしいほどくだらなさすぎるのに、何度も死ぬほど胸熱で、いつの間にか泣いている。劇場版クレヨンしんちゃんに詰まっているものが全て濃縮還元された前人未到の実写映画」「こんなわけわからんアホみたいなことやってる映画でわたしは爆泣きしてんだ。悔しすぎる。なんかあれ、クレヨンしんちゃんだよ。ビックラブがあふれてる映画だよ」といったコメントが寄せられています。
なお監督ダニエルズ(シャイナート&クワン)は「エブエブは湯浅政明監督や今敏監督、宮崎駿(「崎」はたつさき)監督まで、日本のアニメ作品などあらゆるものからインスピレーションを受けて作った」と言及。ファンと公言する湯浅監督は、実際に「クレヨンしんちゃん」のテレビシリーズや劇場版の制作に携わった経歴を持ち、あながち当たらずとも遠からずという感想なのかもしれません。
「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」
2023年3月3日(金) TOHO シネマズ 日比谷 他 全国ロードショー
監督:ダニエル・クワン ダニエル・シャイナート『スイス・アーミー・マン』
出演:ミシェル・ヨー、キー・ホイ・クァン、ステファニー・スー、ジェイミー・リー・カーティス
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