徹底考察「名探偵コナン 黒鉄の魚影」　コナンファンが語り尽くす5つのポイント【ネタバレあり】：赤いシャムネコ・将来の終わりが語る（4/7 ページ）

シャム　分かります。しかも「えっ、この情報、初出では!?」みたいなことがさくっと出てきません？　例えば組織のコードネームが「蒸留酒は男、カクテルは女」も、たぶんこれまで言われたことがなかった。だって、もしその情報が明らかになっていたら、原作で15冊かけてやっていた「誰がラムなのか？」のラム当て編が成立しなくなってしまう。ラム候補3人のうち一気に2人にしぼられちゃったはずですから。

終わり　そう、一番怪しかった若狭留美先生が外れてしまいます。今は原作・アニメともにラムの正体は脇田兼則で確定しましたが、若狭先生は声優にうる星やつらの初代ラムちゃん＝平野文さんを起用していて、そうした意味でもミスリードの塊のようなキャラクターでした。

シャム　本作で僕が特に興奮したのは「ベルモットの行動」です。原作で書かれている範囲の彼女の事情を整理すると、どうやらAPTX4869で幼児化する可能性があることを隠したいらしい。そしてある種の取引条件として、銀の弾丸（シルバーブレット）＝工藤新一を守っている。灰原＝シェリーがバレればコナン＝新一も危機なんだけど、どうやらベルモットにとってもまずいらしい。

　これまで薬の秘密はベルモット＝クリス・ヴィンヤード＝シャロン・ヴィンヤードにとって重要なんだとずっと思っていたんですよ。ところが今回、ベルモットが「老若認証システムは開けてはならない玉手箱かもしれません」「予想を超えて精度が高い」とボスに伝えて、おそらくボスが破壊命令を出している。だから、実は薬の秘密を明かしたくないのは、ベルモットじゃなくてボスの可能性もあるのかもしれない。

終わり　「玉手箱」という、ちょっとベルモットらしくないダサめの言葉を使っているのは、浦島太郎の話を踏まえた匂わせですよね。いつものベルモットだったらたぶん「パンドラの箱」と言ってると思う（笑）。玉手箱を開けた浦島太郎が一気に年をとってしまったように、クリス＝シャロンということがバレてしまう……ということかと思いきや、実は破壊命令を出したのはボス。ということは、浦島太郎はベルモットじゃないのかも、ということですよね。

シャム　そう。そしてラムが明かす、「最近ボスの所在が分からない」という衝撃的事実。ボス側にはなにか大きな事情があって、ナンバー2であるラムにはその事情が明かされていない、ベルモットは知っているらしい、ということが整理されたのは、原作読者にとっても大きな進展でした。

　今回非常に複雑なのは、組織のメンバーの目的がそれぞれ違い、老若認証システムへのスタンスも違い、その結果終盤の展開が生まれているということ。それぞれの登場メンバーについて、箇条書きで整理しておきましょう。バーボン＆キール、ジン＆ウォッカ、ラム＆ピンガ、ボス＆ベルモットで分けると分かりやすいでしょうか。

　最重要なのは、ボスとラムが老若認証システムについて別々の目的を持っていること。そしてベルモットとボスがつながっていることだと思っています。

終わり　声を大にして何度でも言いたいのは、今、原作が面白いことになっているということで。どうやら黒ずくめの組織の中では大変なことが起こっているらしい――というのが、作中や青山先生のインタビューで示されているんですよ。で、今回の映画のラムの発言を踏まえると、その「とんでもないこと」というのは、「ボスの不在」なのではないかとにらんでいます。ボスが姿を見せないから、指揮系統がめちゃくちゃになっているんじゃないか。「コナン」は映画と原作をリンク＆シンクロさせるので、そろそろ原作でもそのことを明かしてくるんじゃないかとワクワクしています。