さらば、そして…… 「ULTRAMAN」FINALシーズン、神山健治×荒牧伸志が紡いだ「ウルトラマン信仰」の行方:インタビュー(2/3 ページ)
シリーズを締めることの難しさを「ある意味不可能」と回顧した神山監督。
神山「初代ウルトラマンを見て胸を熱くした部分はぶれないようにしたかった」
―― FINALシーズンまで続けたことで、デジタルアセットが蓄積され、再活用も進んだということですね。話を少し変えます。お2人があらためて感じたウルトラマンらしさはどういったものと言えますか?
荒牧 らしさの話ではないかもしれませんが、最初にこの話をお受けしたとき、ウルトラマンという題材ではありますが、どこかである種の別物感がありました。
でも、神山さんたちとワイワイやりながらここまで作ってきた中で、自分の中にウルトラマンの存在が再発見された。それこそ「ウルトラマン信仰」のようなものが自分にも根付いているのを感じられたのが新鮮で面白い驚きでした。
神山 この作品を作っていく上であらためて感じたのは、僕にとって「正義のヒーロー」の原点は初代ウルトラマンだったということ。初代ウルトラマンによって、正義のヒーローはかくあるべし、というのが自分の中に形成されました。
これは推察ですが、『ULTRAMAN』の原作を手掛けた清水さんと下口さんは、そこをひっくり返そうというアプローチなのではないかと最初に原作を読んだときは思いました。それも面白いから生かしつつ、でも僕が初代ウルトラマンを見て胸を熱くした部分はぶれないようにしたかった。そこは違うアプローチでウルトラマンを描く作品でも、一番残したい部分でした。
「道徳」ですら今日ではその読み解き方が変わってきているように、「正義」も50年前と比べて違ってきている、ともすれば、「正義こそが悪」みたいになってきているようにすら感じます。
―― 興味深いので少し掘り下げたいのですが、神山さんが初代ウルトラマンで心打たれたのはどういった部分なのでしょうか?
神山 やっぱりウルトラマン第39話「さらばウルトラマン」。怪獣から人々を守ろうとして命を落としたハヤタシンという男の性根に心打たれ、命を託したウルトラマン。通りすがりの宇宙人が、ハヤタシンの心に触れたことで、人類から見ると正義のヒーローとして誕生した。そこに僕は心を打たれました。
荒牧 昔のウルトラマンはしゃべらず、何の言い訳もしない巨大で崇高な存在。その姿に心を打たれて毎週一生懸命見ていた昭和の僕らにはそれがすり込まれている。よくも悪くも古い価値観かもしれないけど、それが若い人の行動や考え方につながるといいなと思って。世代交代というときれい過ぎますけど。
今作で主人公がみんなからディスられて、みんなに対して分かってもらおうと雄弁になるのではなく、ただ無言。やられても立ち上がって戦うのが、みんなを変えるきっかけになるんじゃないかなと。そこが最初のウルトラマンにつながる感じになるといいなという思いでしたね。
―― 元科特隊メンバーの早田進や井手光弘、あとは嵐大介。彼らが進次郎らと比べても妙に頑張っているように感じましたが、そういう意図を踏まえると見え方も変わりますね。そのドラマは十分に堪能できた一方で、ネタバレは避けますが、ラストは余韻を残したようにも感じました。
荒巻 1つの物語が終わったのは明確ですが、世界は続くことを示したかったんです。ちょっと味が濃かったかもという説はありますが(笑)。
神山 進次郎らヒーローの物語が続く中、異星人側も日常は続く感じになったので、すごく良かったんじゃないかなと。
「ある意味不可能」 シリーズを締めることの難しさ
―― お話を聞いていると、シリーズを締めることの難しさを感じます。
神山 もう本当に、今の時代、シリーズを締めるというのは、ある意味不可能だと思いました。名作とされる最終回というと、主人公の死など決定的に終わったり変わったりするもの。でも、時代の流れもあるのかもしれませんが、そうしてはいけないというか。
そういう中で、“完結させる”というのは、自分たちで用意したテーマに対してのみピリオドが打てるのであって、キャラクターや全体のシリーズにピリオドを打つことはできません。それでも、印象的かつ、作り手がシリーズを締めた証跡を残す必要もあり、最終回を作ることの難しさだと感じます。
―― 最後に、お2人がタッグを組まれて数年がたちました。「ULTRAMAN」や「攻殻機動隊 SAC_2045」「Blade Runner - BlackLotus」などが生まれましたが、相対的な視点で、「ULTRAMAN」はどういう作品になったと言えるでしょうか。
神山 2人の持つ異なる要素が一番対等に出て、うまく昇華した作品だと思いますね。
荒牧 お互いの持ち味をうまく出した感じはありますね。絵作りやシナリオ、基本的にはお互いが見ながら、でもできるだけ全部見ようというのがやれましたから。
(c)円谷プロ (c)Eiichi Shimizu,Tomohiro Shimoguchi (c)ULTRAMAN 製作委員会3
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