全ての謎コラボにドラマがある　“洋楽×サウナ”AI時代にアナログ発想がたどったルートを発案者に聞いてみた（1/2 ページ）

　米ミズーリ出身のシンガー・ソングライターSZA（シザ）が東京・新宿の「ソロサウナtune」とコラボ。洋楽とサウナ。一見接点がなさそうな両者を結び付け、謎コラボに導いたモノはなんだったのか。AI隆盛時代にヒトの頭で考えたからこそ生まれた奇妙な“縁”について聞きました。

　今回のコラボはSZAが5月にリリースしたばかりの最新アルバム「SOS」の国内盤CD＆アナログ盤にちなんだもの。軽くプロフィールを紹介すると、米ミズーリ州セイント・ルイス生まれでニュージャージー州メイプルウッド育ち、現在32歳のSZAはクラシック/アバンギャルド・ジャズ、ソウル、ヒップホップなどから影響を受けているシンガー・ソングライター。グラミー賞に複数ノミネート歴を持つ人気実力派で、この通りどこにもサウナ要素は感じられません。

　レーベル担当者はそもそも「疲れたときにはマッサージにいくよりもサウナでリフレッシュ」（Aさん）「施設によって温度や湿度、水風呂の温度や、チルできる環境などが異なりあちこちを巡ることができるというのも魅力」（Bさん）と語るほどのサウナ好き。よもや趣味の延長なのではと勘繰りたくなりますが、企画実現までには3週間という期間を要し「SZAの現状（どんな年齢層の人が聞いているか、口コミ分析など）をリサーチ、そこからSZAの現在の情報やアルバム『SOS』の要素を基に、どういったトライができるか模索／検討を経て」と1クリックでAIがたいていの質問には答えを出してくれる時代に、相応の時間と手間はかかっています。

　そしてついに、大海原をバックにしたカバー写真から発想を膨らませ、たどり着いたのがサウナ。水辺で遠くを見ているようなビジュアルがサウナ後の外気浴っぽい→ジャケットのブルーのカラーリングがサウナや湯舟に映えるんじゃないかという結論に。SZAが作品に込めたパーソナルな歌詞やサウンド、孤独感といった作品の世界観を最大限に楽しみ、没入感を味わうためにはサウナこそ最適解。早い話が「SZAの音楽を聴いてサウナで整おう！」という企画意図が降りてきたといいます。チルの勝利だ。

　対する「ソロサウナtune」は本格的なフィンランド式の施設ながら、着替え、サウナ浴、冷水浴、休憩の全てが個室内で完結するというチル初心者にも優しい施設。今回のキャンペーンでは、SZAにちなんだネーミングのオリジナル・ソフトドリンクの販売や、オリジナル・グッズなどが配布されています。

　ソロサウナtune女将の遠藤香さんは、企画担当者自ら持ち込んだというコラボ話に“即決で快諾した”そうです。「開業時から特にサウンドに関しては【浴びるように音楽を聞く】という事を大切にしてきました」ともともと抱いていたこだわりもあって、一見無関係に思える両者の親和性を強調。新サウンドシステム導入直後の打診というタイミングも運命的で、「彼女の美しい歌声やリアルなリリックは、サウナ室にいる一人で過ごす時間をより空間や己に没入できる体験に導いてくれる」と新体験への期待を寄せています。

　キャンペーン開始後の反響を聞くと、SZAや洋楽への関心の有無を問わず、「たくさんのお客様にお聞きいただいている」と整い目的の利用者から好評を得ているとのことで、「サウナ室で聞いていた音楽が退店後もカフェでかかっているので、入店から退店の体験がリンクしていてとても好感触」と自ら体験した女将も太鼓判。20代～50代まで幅広い年代が利用する施設だけに「洋楽になじみがなかったり、SZAさんをご存じない方も興味を持っていただくきっかけになるのでは」と新たな出会いを提供する喜びも語っています。

　ちなみになかなか言葉ではつかみにくい「チル」という感覚について聞いてみると、「日本語では『まったり』が近い言葉でしょうか」との答えが。常にスマートフォンを介して誰かとつながっていることが当たり前になった時代だからこそ、これを遮断せざるを得ない空間に隔離されるサウナは貴重な存在。「現代社会に生きる私たちには、都市の中で、短時間で、手軽に心身ともにリラックスできるチューニングが必要」「今回の取り組みは、ひととき、日常から離れて、疲れた気持ちをリセットする自分だけの時間に身を委ねることができる、ザ・ベストなチル体験を導いているのでは」と自信をうかがわせています。

（C）ソロサウナtune