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災害時にコインランドリーで洗濯、ガス、電気、水を無償提供 「災害対策ランドリー」はこうして始まった(1/2 ページ)

どのような災害対策用設備があるかは、店舗入り口のステッカーに表示。

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 台風や豪雨、地震など自然災害でライフラインが失われ、調理やシャワー、洗濯などができなくなり、被災地域では生活の根幹が揺らいでしまうことも珍しくありません。そんな状況に遭遇した地域を、コインランドリー事業から支援する「災害対策ランドリー」という取り組みがあります。9月1日の「防災の日」を前に、「災害対策ランドリー」を推進するTOSEIに話を聞きました。

直営店の「TOSEIコインランドリー東中野店」(東京都中野区)

 TOSEIは業務用コインランドリー機器・真空包装機の製造販売を営む企業。TOSEIが提供する「災害対策ランドリー」は、災害時の生活に最低限必要な衣類の洗濯・乾燥や、電気・ガス・水などライフラインの無償提供を行います。

 プロパンガス(LP)の備蓄を災害時に活用し、コインランドリーでの洗濯、カセットコンロによる炊き出しステーションでの調理、簡易シャワーでの入浴、さらにガス発電機により電気・電源が利用可能。貯水タンクには飲用水を備蓄しています。

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ガス、電気、水を提供する仕組み

 「災害対策ランドリー」が生まれたきっかけは、2011年3月11日の東日本大震災。TOSEIは宮城県多賀城市にて、洗濯機と乾燥機を積んだ移動式コインランドリーで津波によって泥で汚れた衣類を洗濯するというボランティアを行いました。被災地でのボランティアを通して、「着替え・洗濯に関する需要」の大きさに気づくと同時に、「着替え・洗濯」のニーズが多いのにもかかわらず、それに関する支援はあまり行われていないことに気付いたといいます。

 そういった気づきや経験から、同社のコインランドリー事業で「災害対策コインランドリー」の推進、真空包装機事業では「衣類備蓄」「食料備蓄」の推進に取り組むことに。台風を迎えるこれからの季節、「災害対策ランドリー」は全国にどれくらいあるのか、どのように利用されているかなどをTOSEIに聞いてみました。

社会貢献、地域貢献などの役割もあるコインランドリー

 東日本大震災では、TOSEI静岡事務所のある伊豆の国市と姉妹都市である宮城県多賀城市も津波の被害を受けました。TOSEIは4トントラックにコインランドリー機1台、乾燥機2台、発電機、LPGガスを積んで被災地に駆けつけ、約2週間滞在し、1日当たり50人ほどの洗濯物に対応したそうです。

トレーラーに洗濯機・乾燥機を積んだ「災害ボランティアトラック(移動式コインランドリー)」

 「『災害時、食料、お風呂、衣類などの供給物資は届くようになるが、洗濯ができない』という多くの声を被災先でいただき、また、トラックでの移動や対応できる数の限界も感じ、現地に『災害対策ランドリー』があれば同じ対応ができると考えました」(TOSEI)

 2011年のボランティア経験を受けて、TOSEIは2016年から自社のランドリー機器を扱う販売代理店とともに「災害対策コインランドリー」を推進。また、共同で災害対策ランドリーステッカーを作成しています。ステッカーは店舗入口などに貼り出しているとのこと。

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「災害対策コインランドリー」であることや、備えている設備を示すステッカー

 災害対策用の設備はLPガス、貯水タンク、ガス発電機、炊き出し釜の全部で4種類。これらを使って洗濯、シャワー、ガス、電気・携帯充電対応を行います。なお、店舗によって設備は異なるので、店舗に貼ってあるステッカーで確認が必要です。自治体と災害協定を結んでいる店舗では、給水車で水を提供することもできます。

貯水タンク

 現在、「災害対策コインランドリー」は全国で130店舗弱。開業を検討しているコインランドリー店に、検討の段階で「災害対策ランドリー」取り組みについて話し、賛同が得られた場合、お店に災害対策を施してもらうという流れで協力をとりつけています。なお現状では一定の規模に達していないため、近くに対応店舗があるかどうかの問い合わせには回答できないとのこと。知りたい場合は実際に近隣の店舗をチェックするのがよさそうです。

 またTOSEIは災害時のコインランドリーの役割について、次のように語ってくれました。

 「そもそもコインランドリーは、災害時にオーナーにより使用金額を減額したり、解放したりすることが多く、全店舗が、災害時に社会的インフラとしての役割を担っているとも考えております」

「TOSEI コインランドリー東中野店」の内観。普段便利なコインランドリーが、災害時を支える頼れる存在に

 「災害対策コインランドリー店」の設備を利用した例はまだないとのことですが、「近年の土砂災害や水害、停電によって家庭で洗濯ができないお客様に稼働しているコインランドリーを無償でご利用いただきニュースにも多数取り上げられたりしています」と、対応店舗であるかどうかに関わらず、立地している地域が災害に見舞われた時、洗濯を通した支援を行っているようです。

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 「『災害対策ランドリー』はビジネスというより、災害時のライフラインが止まった時の人助け・コミュニティーの場としてお使いいただくことが役割です。コインランドリーは洗濯の場だけではなく、社会貢献、地域貢献、福祉の労働の場として社会的役割が広がっております」とメッセージを送るTOSEI。災害に備えて自宅の防災グッズ、避難所の場所だけでなく、近隣のコインランドリーをチェックしておくとよさそうですね。

画像提供:TOSEI

※LAUNDRY Ene×Spa はTOSEIの登録商標

(谷町邦子 FacebookTwitter

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