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「X(Twitter)のロゴはフリーメイソンのシンボルに似ている」 荒唐無稽な陰謀論に人々が熱狂する理由(1/3 ページ)

陰謀論に詳しいライターの雨宮純さんが解説。

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 「Twitter」が「X」に名称変更された後、「Xのロゴが友愛結社『フリーメイソン』のシンボルに似ている」という陰謀論が国内外のSNS上で浮上した。思わず一笑に付してしまいそうなトンデモな言説に思えるが、ロゴにまつわる陰謀論はこれが初めてではない。陰謀論に詳しいライターの雨宮純さん(関連記事note)にその歴史と、一部の人々が陰謀論に熱狂する理由について解説してもらった。

Twitter X フリーメイソン 陰謀論 陰謀論の対象になったXのロゴ

(文: 雨宮純 編集:上代瑠偉)

「Xのロゴはフリーメイソンのシンボルに似ている」という陰謀論

 Twitterの名称がXに変更されてから2日後の7月26日、筆者のタイムラインに次のような投稿が流れてきた。Xのロゴを隣に2つ並べると、フリーメイソンのシンボルに似ている、すなわちXがフリーメイソンと関係しているのではないか、という内容だ。

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Twitter X フリーメイソン 陰謀論 海外で拡散されている投稿の1つ(画像はXより ※編集部でモザイク加工)

 「Twitter X Freemason」とXで検索すると、同様の投稿が多く見られ、日本でも同様の陰謀論が密かに広がっていることが分かる。

 ロゴが陰謀論の餌食になったSNSは、Xだけではない。対抗サービスとして登場したMeta(旧Facebook)の「Threads」も、そのロゴに獣(けもの)の数字「666」が含まれているのではないか、とうわさされている。

 さまざまな企業やサービスのロゴに陰謀の「証拠」を見いだす思考パターンは、陰謀論の世界では典型的なものだ。

 2022年3月に英語圏では、ディズニーとコラボしたオムツに小児性愛者が使うシンボルや666が隠されている、という陰謀論がXで拡散(拡散源になった投稿は3万2000件のいいねを獲得)したため、メーカーのハギーズ(Huggies)が該当投稿に反論のリプライを飛ばす事態にまでいたった。

陰謀論に対するメーカーの反論「当社の製品とデザインは、決して楽しく遊び心のあるデザイン以外を意味するものではありません」

 一般的な感覚で言えば荒唐無稽の一言で片付けたくなるが、企業がさらなる対抗措置を取らざるを得なかった例もある。1980年代、大手一般消費財メーカーであるProcter & Gamble(P&G)のロゴに関する陰謀論が広まった。

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 当時のP&Gのロゴは、三日月を思わせる男性の横顔と13個の星が描かれている図案だった。正確な発生源は不明だが、このロゴに666や角が隠されており、13個の星をつなげると666が現れるのは悪魔崇拝の証拠だ、といううわさが流行したのである。

1980年代に陰謀論が流行したP&Gのロゴ(画像はWikipediaより)
2023年現在のP&Gのロゴ(画像はP&G 公式サイトより)

 このデマの拡散は相当なもので、1982年の6月と7月だけで約1万5000件の電話や手紙がP&Gに届き、1985年にはP&Gによる悪魔崇拝の支援を告発するかのようなビラがニューヨーク市内で出回った。ついにはP&Gはサタン教会(※1)に献金している、という話までが飛び交うようになった。

(※1)サタン教会:1966年4月30日のワルプルギスの夜、作家・オカルティストのアントン・ラヴェイによって設立された宗教団体。悪魔崇拝をしているとしてよく攻撃されるが、サタン教会の悪魔は誇り、自由、個人主義などの概念を表すシンボルであり、悪魔を実在するものとして崇拝しているわけではない。またその教義は無神論的であり、基本理念はかなり常識的なものである

 P&Gに関するデマは1980年代から1990年代にかけて沈静と流行を繰り返したが、P&Gは拡散させた人物などへの訴訟を複数起こしている。その中でも最も有名なのは1995年、アムウェイがボイスメールを使って数千人にデマを広めたというもので、P&Gはアムウェイとの20年にわたる民事訴訟を経て、2007年に1925万ドル(約25億5000万円)の賠償金を勝ち取った

 このようなデマが大きな騒ぎになった背景には、当時の米国を覆っていた「サタニック・パニック」という社会現象がある。1980年に出版された『Michelle Remembers(ミシェル・リメンバーズ)』という本(※2)のヒットを大きな契機として、米国では「悪魔崇拝集団が各地で児童虐待をしている」というパニックが広がった。

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 悪魔崇拝の入り口になっているとして、ロールプレイングゲーム「ダンジョンズ&ドラゴンズ」やヘヴィメタルまでが攻撃され、悪魔崇拝による虐待をしたとして逮捕者まで出る騒ぎになったが、結局そのような事態は起きていなかった。

サタニック・パニックの発端となった『Michelle Remembers(ミシェル・リメンバーズ)』(画像出典:Amazon.co.jp

(※2)『Michelle Remembers(ミシェル・リメンバーズ)』:カナダの精神科医ローレンス・パズダーと、患者であるミシェル・スミス(後にパズダーと結婚)による共著。内容はミシェルが悪魔崇拝儀式による虐待を受けていたというものだが、実際の記録や証拠と食い違う証言が多く見られ、現在ではその信憑性にかなりの疑いが持たれている

 「悪魔崇拝集団が児童虐待をしている」という陰謀論は、近年のピザゲートやQアノンでも見られ、そこにはサタニック・パニックの影響が見受けられる。陰謀論はより多くの人に信じられる=感染できるものが流行する。人々がハマりやすい物語設定はそう多くないため、同じような話が使い回されたり、繰り返されたりするのだろう。

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