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「きのこの山」VS「たけのこの里」――あの国民的論争は誰が始めたのか “歴史”を明治に聞いた(1/3 ページ)

第三勢力の“幻の村”の存在も。

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 日本国民の間でしばしば「どっち派!?」と“派閥争い”が起こる、明治の「きのこの山」「たけのこの里」。それぞれを推す人々の戦いは、真剣ながらも楽しいお祭りといった風情があります。そんな国民的お菓子はどのように生まれたのか。また“きのたけ論争”はいつどのようにして始まったのか。「きのこの山」「たけのこの里」を巡る“歴史”を、製造・販売元の明治に聞いてみました。


おなじみの「きのこの山」「たけのこの里」

「きのこの山」「たけのこの里」の誕生 “幻の村”の存在も

―― 本題である“きのたけ論争”の話に入る前に、まずはそれぞれの商品が生まれた経緯について聞かせてください

明治カカオマーケティング部・日吉さん(以下、日吉さん): きのこの山は1975年の発売ですが、開発は1969年にさかのぼります。当時明治の大阪工場ではアポロチョコの生産がはじまり小粒チョコが当社の得意商品として販売実績をあげていました。これらの実績をもとに、大阪工場全体の稼働をあげるべく、従来のようなコーティングではなく、チョコレートの成型機を活用したものを開発したいと考えました。

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アポロチョコ。太陽神アポロンにちなんで名付けられ、その後アポロ11号の司令船をイメージした形になりました

発売当時のアポロチョコ

現在のアポロチョコ

 そのような状況で、大阪工場の担当者が提案した「アポロにカシューナッツを刺した」試作品が独特な形で面白いということで、商品化につながりました。ただし量産化に向けては、カシューナッツは粒の大きさや形にバラツキがあり、大量生産に使うのは難しいため、カシューナッツの代わりにクラッカーをきのこの軸の部分に使うことになりました。


1975年発売の初代きのこの山。宇宙船がきのこの笠にジョブチェンジ

―― きのこの山はアポロチョコから着想を得ているのですね。では、たけのこの里にはどのような歴史があるのでしょうか

日吉さん: 発売は1979年です。「きのこの山」に引き続き、自然や田舎といったイメージをシリーズ化するアイデアは、「きのこの山」の開発後すでに生まれていました。きのこの山は、ぱりぱりサクサクのクラッカーとチョコレートの組み合わせが特徴です。姉妹品は、それとは対照的に、ほろほろのクッキーを主役にしたチョコスナックにしようと考えました。当時のクッキーは、せんべいのように生地の形を整え焼いていましたが、たけのこのような形を作るために「型焼」という新たな手法がとられました。これは、日本初の試みでした。また、「たけのこの里」のネーミングは、「きのこ」に続くシリーズ品として、自然で温かみのある商品名として検討され、山には「きのこ」、里には「たけのこ」といった具合でゴロも良かったため「たけのこの里」と決められました。


1979年発売の初代たけのこの里。「おいしいさかり」というキャッチコピーが魅力的

 また、1987年には、さくさくビスケットにクラッシュアーモンドとミルクチョコをコーティングした「杉の木」をイメージした「すぎのこ村」を発売しました。一時はヒットしましたが、きのこ・たけのこに比べて出荷も少なく、残念ながら現在は販売を終了しています。


1987年発売のすぎのこ村。これはこれでおいしそう……!

―― そんな“幻の村”ともいえる第三勢力がいたとは驚きです。論争が起こるほど根強いファンがいる両商品ですが、あらためてそれぞれの特徴について教えてください

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日吉さん: どちらの商品も、カカオの香り引き立つコクのあるチョコレートと、ミルクでまろやかに仕上げたチョコレートの2種類を使っています。きのこの山はサクサクのクラッカーがおいしさのポイントで、実はたけのこの里よりもチョコの量が多いというのが意外な事実です。たけのこの里は、ほろほろの味わいクッキーがおいしさの秘密で、売れ行きとしてはきのこの山に勝っています。


きのこの山の断面図

たけのこの里の断面図

きのこ・たけのこ論争はどうやって始まったの?

―― いよいよ本題なのですが、結局のところ“きのこ・たけのこ論争”は誰がいつ始めたのでしょうか

日吉さん: きのこの山、たけのこの里は発売以降人気となり、その後1986年にきのこの山とたけのこの里がアソートされた袋商品も発売され、より多くの方に楽しんでいただける商品へ成長していきました。そのころから次第に、消費者の皆さまの間で「きのこ、たけのこ、どっち派?」という風潮が広がってきたと感じています。

―― 明治発ではなく、消費者発だったのですね……! その後論争はどのように展開されましたか?

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日吉さん: 2001年に公式に「きのこ・たけのこ総選挙」を開催し、たけのこ党が勝利を収めました。2018年には2回目の総選挙として「きのこの山・たけのこの里 国民総選挙」を開催し、またしてもたけのこの里が勝利しましたが、続く2019年の総選挙ではきのこの山が勝利したことで、2010年代はそれぞれ1勝1敗となり、ノーサイド協定が締結されました。


このパッケージのころには公式さんも論争を把握していたとのこと

 2020年には「きのこの山・たけのこの里 国民大調査 2020」を実施し、きのこ愛とたけのこ愛の深さを調査しました。結果は、日本で最もきのこ愛・たけのこ愛が深いのは千葉県であることが判明し、福島県だけが、きのこ愛がたけのこ愛を上回っていることもわかりました。

 今後は、2023年11月開催したきのたけグローバルサミットにて宣言した通り、「きのたけグローバル総選挙」を開催します。世界各国で「きのたけどっち派?」旋風を巻き起こしていきたいと考えております。


きのたけグローバルサミット。両派が一堂に会しました

 意外にも明治発ではなく、自然発生的に始まっていたという“きのたけ論争”。日本国民を長年とりこにしてきた議題は、ついに日本を飛び越え世界規模へと拡大されつつあるといいます。世界進出にあたり、きのこの山をモチーフにした同時翻訳機能付きイヤフォンの商品化が発表された際には、ネット上で話題を呼びました(関連記事)。

 2010年代には1勝1敗と引き分けで終わり停戦状態となっていますが、果たして2020年代には世界を巻き込んだ大論争になるのか……。今後の展開から目が離せません。

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「きのたけ」が言葉の壁を越えていく……!

※取材・画像協力:明治

文:近藤仁美(こんどう・ひとみ)

クイズ作家。国際クイズ連盟日本支部長。テレビ番組「高校生クイズ」「クイズ!あなたは小学5年生より賢いの?」などの他、日本人として初めてクイズの世界大会で問題を担当する。2023年「Trivia Hall of Fame(トリビアの殿堂)」殿堂入り。

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