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「中身は全く同じ」なのに……売り上げは“歴然の差” アサヒ「白湯」が“8年前の失敗”から大逆転した理由(1/3 ページ)

開発担当者に取材しました。

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 アサヒ飲料が販売するホットドリンク「アサヒ おいしい水 天然水 白湯」。2022年に販売を開始すると、想定の3倍のヒットを記録し、23年9月のリニューアル後もさらに売り上げを伸ばしている。

ヒット商品「アサヒ おいしい水 天然水 白湯」を手がけたアサヒ飲料マーケティング本部の鈴木慈さん(編集部撮影)

 実は商品が登場する8年前、中身が全く同じ商品を発売していたものの、売り上げが伸びず失敗に終わっていた。アサヒ飲料の開発担当者が語った、8年前との「決定的な違い」、そして「逆転ヒット」をもたらした要因とは。

8年前に販売も……売り上げ伸びず

 東京都内にあるコンビニのホットドリンクコーナー。お茶やコーヒー、ココアといった定番商品に並んで置かれているのが、アサヒ飲料の「白湯」だ。

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アサヒ おいしい水 天然水 白湯(アサヒ飲料ニュースリリースより)

 消費者や店から「温かいお湯を売ってほしい」という要望を受け、2022年11月に発売した同商品。当初はコンビニ中心の展開だったが、現在はスーパー、ドラッグストア、病院などにも販路を広げている。

 購買者の中で売り上げ上位を占めるのは、20代と30代女性。一方で、10代、30代、40代男性の購買率も高く、全体の約4割が男性消費者だ。開発を担当したアサヒ飲料マーケティング本部の鈴木慈さんは「インフルエンサーが白湯の魅力を発信していることや、男性の間で健康・美容志向が高まりつつあることなどが背景にあるのではないでしょうか」と男性人気の要因を推察する。

白湯の購買層。女性人気が目立つが、男性からも支持されている

 実は、アサヒが「お湯」を売りだしたのは、これが初めてではなかった。2014年に販売した「富士山のバナジウム天然水 ホット PET340ml」も、今回と同じコンビニ向けのホット飲料。この時も「お湯を売ってほしい」という消費者の声を受けて開発されたものだった。

2014年に発売した「富士山のバナジウム天然水 ホット PET340ml」(アサヒ飲料提供)

 しかし、セールスは思うように伸びなかった。鈴木さんは「当時も需要がないわけではありませんでしたが、白湯を飲むという文化が今ほど定着していなかったことが大きかったように思います」と失敗の要因を振り返る。

 アサヒ以外の飲料メーカーも、過去にペットボトルのお湯を販売している。だが、定番商品として定着したものはなく、飲料メーカーにとっては「鬼門」のジャンルだった。

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 苦い失敗から8年、そんな「鬼門」にアサヒは再び挑むことになる。前回と同じものは売れない――。そう誓った鈴木さんたちは、新商品に主に2つのポイントを盛り込むことになった。

開発時に盛り込んだ「2つのポイント」

 1つはパッケージデザインの変更だ。2014年に発売した「富士山のバナジウム天然水 ホット」では、オレンジ色をベースに、商品名にも含まれている富士山のイラストが青く描かれたデザインを採用していた。これに対し、新商品では「温かさ」を強く訴求するため、オレンジ色を全面に打ち出したデザインを施した。

 もう1つは、商品名を変えるという決断だ。従来の商品名は、同社のミネラルウォーターブランドの名前に「ホット」をつけたものだった。新商品では「富士山」や「バナジウム」といったワードを取り、「白湯」というシンプルな商品名をつけた。

パッケージと商品名に変更を施した

 商品の中身には一切手を加えずに行われた「再出発」。ふたを開けると、商品は想定の3倍を超えるヒットを記録した。2023年9月のリニューアルでは、それまでホット向けの「十六茶」で使われていた「保温ラベル」をパッケージに巻いたことで保温性が向上(※)。2023年12月の出荷は前年同月比で173%を記録するなど、直近でも売り上げを伸ばし続けている。当初は冬季限定だった販売期間も、人気を受け「通年販売」に昇格した。

※アサヒ飲料は商品を55℃まで加温し、気温10℃の環境で温度変化を測定する実験を実施。現行品と比較して温かさ(液温40℃以上)が約1.3分長く持続し、最大で1.0℃の液温差が確認された。

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 鈴木さんはヒットの背景について、シンプルな「白湯」という言葉の訴求力が大きかったことや、健康志向の高まりを受けて白湯を飲む文化が定着してきたことなどが要因ではないかと分析。また、家庭では白湯を作るのが手間なことも、手間のいらない「白湯」ニーズにつながっているのではないかと見立てている。

 開発当時には予想していなかった需要も生まれた。当初は「忙しい朝に手軽に飲んでいただくような飲用シーンを想定していた」という鈴木さん。しかし、購買データを調べると、薬やサプリメントと一緒に白湯を購入する消費者が多いことが分かった。こうした需要を受け、ふだんホットドリンクを置くことが珍しい調剤薬局が、わざわざ保温機を導入してまで商品を売るケースも出てきているという。

 最近ではイオンのブランド「トップバリュ」やJR東日本グループのブランド「アキュア」など、他社も続々白湯市場に参入している。白熱する競争を、アサヒはどう戦っていくのか。

イオンのブランド「トップバリュ」も白湯を販売している(画像は商品公式ページから)

「市場が活性化しているからこそ、他社さんが参入してきているのだとは思いますが、戦々恐々としているというのが本音です。これからは、『白湯だったらアサヒを買おう』と消費者の方に思ってもらえるような、よりブランド力の強い商品を作り続ける必要があると思っています」(鈴木さん)

 不遇の時代を経て、ようやく沸き出した白湯のニーズ。現在の「ミネラルウォーター」がそうであるように、コンビニで白湯を買う光景が当たり前になる日も近いのかもしれない。

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