亡き夫が連れて来た子犬が成長し、虹の橋を渡った日…… 家族をつないだ14年と「これからの幸せ」を願う姿に涙がとまらない(1/2 ページ)
「ペットの介護エピソード」第10回はイングリッシュ・ポインターの悟空くんです。
近年、飼い主の「ペットは家族の一員である」という意識が高まり、ペットに対しても健康で長生きできるように、生態や習性に合わせた適切な飼養管理が行われるようになってきました。生活環境や栄養状態の改善、ワクチンや駆虫薬の普及、獣医療の進歩などさまざまな要因で、ペットの平均寿命が延びています。
「一般社団法人ペットフード協会」による「令和2年(2020年)全国犬猫飼育実態調査」では、犬の平均寿命は14.48歳、猫の平均寿命は15.45歳。10年間で犬は0.58歳、猫は1.05歳寿命が延びています。成犬・成猫は1年で人間の4歳分の年齢を重ねるといわれており、大きく寿命が延びていることが分かります。
寿命が延び、愛するペットとともに長く暮らしていけることはとても幸せなことですが、長寿化ゆえに新たな課題も発生しています。それは加齢により生じる体の不調です。
ペットも人間と同じで、歳を重ねるにつれ体力や免疫力が落ち病気にかかりやすくなったり、足腰が弱ってきたりします。それだけでなく、認知症や寝たきりになって、人と同様に介護が必要になるケースも。もちろん加齢だけでなく、病気やケガなどが原因で介護が必要になることもあるでしょう。
そこで、ねとらぼ生物部ではペットを介護した経験のある読者にアンケートを実施。寄せられた数々のエピソードと写真を紹介するとともに、介護の現実や厳しさだけでなく、その経験から生まれるペットへの深い愛情や命の尊さを伝えていきます。
第10回 イングリッシュ・ポインターの「悟空」くんと飼い主のあこさん
―― 介護が始まったときのペットの年齢と、きっかけを教えてください
きっかけは加齢とガンの発症です。14歳の誕生日を過ぎ、15歳になるはずの年を迎えたころ、徐々に立ち上がることができなくなり、私と娘、再婚予定の男性と介護を始めました。そして14歳で虹の橋を渡りました。
―― どのような介護をしていたのでしょうか
まずは楽に立ち上がらせることができるよう、背中部分に取っ手の付いた服を着せ、介助を始めました。
―― 介護する中で一番大変だと感じていたことを教えてください
大型犬だったので、病気でだいぶ痩せたとはいえ体が重く、抱き上げたり世話をしたりするのに苦労しました。また、トイレは外でしかしない子だったので、オムツをしていても昼夜関係なく「外に出して」と要求されたことも大変でした。
―― 介護生活の中での学びや気付いたことがあれば教えてください
犬の介護も人間の介護と変わりなく、とにかく介護する側が元気でなくてはいけないことを学びました。また、たとえ犬相手だとしても、1人での介護は無理だということを痛感しました。
―― 介護生活の中で心掛けていたことがあれば教えてください
介護をする側が身体を壊さないように、時間があれば睡眠を取って体調を整えることを意識していました。
―― 介護していたペットへの思いを教えてください
悟空は、今は亡き夫が「近所で子犬が生まれた」と聞き、家族の承諾を得ないままもらってきた大型犬でした。私は「これから子どもたちにお金がかかる時期なのに……」と飼うことを反対しましたが、連れて来られた悟空が飛び跳ねて遊ぶ様子やすぐに疲れて寝てしまう姿がとてもかわいく、もともと動物好きだったこともあり、半ば諦めの気持ちで一緒に暮らし始めました。
イングリッシュ・ポインターは元々猟犬の犬種なので、運動量が必要です。また、私にとっては初めて飼う犬だったためしつけも難しく感じました。くわえて、悟空の性格はやんちゃそのもの。家の中をたくさん破壊され、大変な思いをすることも多々ありました。
私の夫は、悟空が6歳のときに亡くなりました。悟空は夫が2度と帰って来ないことを理解していたのかもしれません。玄関でいつまでも待ったりせずにいてくれたのが、私にとっては救いでした。
その後2回ほど一緒に引っ越しをし、再婚予定でこれから夫になる人にもとても懐いていました。彼がいてくれたおかげで、私は悟空をしっかりみとることが出来たのだと思います。
結婚して独立した娘や息子も、最後に悟空に会いにきてくれました。介護期間は半年ほど、本当に大変になったのは3カ月ほどだったので、最後に飼い主孝行をしてくれたのかもしれません。
正直、自分が飼いたいと思って暮らし始めた犬ではなかったし、手がかかった子なので、連れてきながら置いて逝った夫を恨んだこともありました。しかし、悟空が虹の橋を渡った瞬間は、自分でも信じられないほど大泣きしました。
悟空がそばにいるのが当たり前だった日々。いなくなって心に穴が開くとは、まさにこのことだなと感じました。
大好きだった亡き夫と悟空が、今は一緒に幸せに暮らしていてほしいと思います。
―― 介護中の方へのアドバイスがあれば教えてください
とにかく1人で頑張らず、頼れる人がいたら頼って手を抜けるところは抜いてください。
(了)
少しでも健康で長生きしてほしいからこそ、介護に全力を尽くし、自身の生活や心身に大きな負担を掛けてしまう飼い主さんも少なくありません。状況によってはペット介護サービスを利用する、同じく介護をしている人たちと情報を共有するなど、1人で抱え込まない環境づくりも大きな助けになるでしょう。
これからペットを迎えようと考えている人や、現在介護の必要がない飼い主さんは、健康寿命を伸ばす対策をする、介護の知識を取り入れるなど、少しずつ準備を始めておくと良いかもしれません。介護も含めて大切なペットとの一生です。その時間も愛せるようにペットと寄り添い続けていきたいですね。
※「ペットの介護エピソード」の応募は締め切りました。たくさんのご応募ありがとうございました!
「ペットの保護エピソード」応募フォームはこちら
「ペットロスとの寄り添い方」応募フォームはこちら
画像提供:悟空とプリンとあこ(@akogoqoo)さん
オススメ記事
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.