コンテンツサービスで相次ぐ突然のクレカ決済停止の問題点 今後どう対応できるのか、議員と弁護士に聞いた(4/5 ページ)
重要なのは「自由を保障させる」こと
―― この問題には政府としてどのような対応ができるのでしょうか? 以前の放送では、独占禁止法や情報流通プラットフォーム対処法を挙げておられましたが……。
山田議員 今の既存の法律では直接的には対処はできないんです。表現の自由は憲法で保障されていて、その内容や限界等を正面から規律している法律はありません。とはいえ、直接的ではなくとも、プラットフォーマー規制や消費者保護の観点から、「プラットフォーマーが勝手に自分の考えで取引してだめなもの、いいものを決めてはいけない」というような規律を行うことは可能なはずです。
例えば、今年(2024年)成立した「情報流通プラットフォーム対処法」では、プラットフォーマーに「投稿を削除するなら削除基準を策定し公表しなさい」とする一方、「理由もなく削除したり、削除申出を無視してはいけない」とするなど、規律を行っています。
また、企業には「契約の自由」もありますが、ガスとか水道といった公共インフラは「この人は会社のポリシーに合わないから、私たちの電気を使わせないでおこう」といったような、特定のユーザーの利用を運営の勝手な判断で停止するなど、できないようになっています。
これらと同じように、クレジットカード側に規律・対応を求めて行けないか、というのは1つの考えです。特に国際的なクレジットカードブランドとなれば、決済におけるプラットフォーム、公共インフラとして扱われてもおかしくはないでしょう。
あとは、公正取引委員会ではいわゆる「優越的地位の濫用」という考えがあります。こちらは業者同士が適切な競争をしているかなどの経済的な部分を前提にしており、今回の件に関してはスコープに入っていません。
しかし、取引全般におけるクレジットカード会社の優越的な地位というのを考えれば、独占禁止法のような法律で規律していくのはあり得ると思います。
―― 実際、大手クレジットカードブランドくらい大きな影響力があれば、こういった部分についても何かしらのルールがあっても良いのかとは思います。
山田議員 そして、クレジットカード会社もプラットフォームであると考えると、この話はSNSや検索エンジンにも関わってきます。
今回の規制と同じようなロジックで、投稿やサイトの内容に問題がないにも関わらず、特定の言葉を使っただけでアカウントを停止されたり、検索で表示されなくなったり……。実際、SNSで理由もわからずBANされているケースもありますよね? それがどんどん拡大していくかもしれません。
そういった足元で起こっている事態と合わせれば、今回の出来事はしっかり議論と検討されるべきだと思います。
決済手段はさまざまにあるとは言え、クレジットカードはネット取引の決済の主要な手段と言っていいでしょう。その点を鑑みれば、山田議員の指摘するようにクレジットカードをインフラのような存在として扱うのは十分納得できます。
また、山田議員が言うように、こういった自主規制が検索エンジンやSNS上でも波及すれば、ネット上の表現により深刻な事態が起きる可能性もあります。
例えば2024年1月31日に開かれた米議会公聴会では、MetaやX(旧Twitter)などIT大手5社に対し、子どものユーザーをSNSの投稿から保護することに真剣に対処しなかったとして、委員会のメンバーから厳しく糾弾されました。
このように、ネット上の投稿をめぐり、投稿者だけでなくプラットフォーム側にも責任を問う声が強まっています。もちろん、違法性のある投稿には対処する必要がありますが、そのために表現の自由が侵害されるとしたらそれもまた問題です。
違法なコンテンツへの対応と表現の自由、どちらかではなく両方が実現されるような規律について議論がなされるべきでしょう。
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