“睡眠の質” お家との違いを比べてください 東京の名門ホテルが異例の「睡眠計測プラン」を導入した理由(2/4 ページ)
新たな観光スタイルとなるか。
5日間の計測結果は……
翌朝、起床してホテルでの計測を終えると、自慢の朝食を食べた後、ホテル内の再生医療専門クリニック「N2クリニック」で、5日間の計測結果をもとに医師の診断を受けられる。
計測をする前は、「ちゃんと眠れていないような感覚」に毎日悩まされていた編集部員。家での4日間の測定スコアはいずれも800点前後と決して悪い数値ではなかったものの、「深い睡眠の質」が相対的に良くないという結果が出ていた。
しかし、ホテル宿泊日には深い睡眠の質が5日間の中でもっとも良好という診断結果が出た。心なしか、5日間でもっとも「よく眠れた」と感じたのは、ホテルの宿泊日だった。
N2クリニックホテル椿山荘東京院の野村紘史院長はプラン利用者の傾向について、「いらっしゃる方の悩みは千差万別だが、日中の疲労感など睡眠の質に関する悩みや、いびきの問題、寝ている間に起きてしまうといった問題を抱えている方が多い」と話す。
実際に測定をすると、睡眠に問題がないと思っている人でも眠りが浅かったり、いびきをかいていることが分かる場合がある、と野村院長。測定結果を受けて測定日の行動を振り返ると、「深酒をした」「遅くまで仕事をした」などと睡眠の質に影響を与える可能性がある行動を洗い出せるという。
測定をした利用者は、生活習慣を整えたり、症状が重い場合は別の病院で検査をするなど、睡眠を改善するためのなんらかの行動につなげていく。家とホテルの計測結果を比較することで、寝具や部屋の明るさなど、睡眠環境の違いを考えるきっかけにもなるとしている。
プラン導入の背景は
ホテルはなぜ、こうしたプランを始めたのか。ホテル椿山荘東京を運営する藤田観光の担当者は「スリープツーリズム」への関心の高まりが背景にあると説明する。
スリープツーリズムとはその名の通り、良質な睡眠を目的とした観光スタイルのこと。2020年代に世界中でブームとなり、海外の調査会社によると、2024年の世界の市場規模は日本円で10兆円を超えると予測されていた。
かつて「24時間戦えますか」というキャッチコピーが流行したこともある日本。経済協力開発機構(OECD)の2021年の調査によると、日本の平均睡眠時間は主要先進国の中でもっとも少なく、世界でも屈指の「睡眠負債国」だ。
一方、近年では“睡眠の質向上”を売りにした飲料「ヤクルト1000」のヒット、楽しみながら睡眠を計測できるアプリ「ポケモンスリープ」の登場など、睡眠をテーマにした国内市場が活発化。睡眠を観光資源の一つにしようとする動きも注目されている。
ホテル椿山荘東京では、自慢の庭園を生かしたリラックス体験、ホテル内にクリニックが入居しているという強みを生かし、3月から睡眠に特化した2つのプランを導入。インバウンド需要が活況な宿泊業界だが、家での睡眠測定を必要とするプランであることから、主なターゲットは健康や睡眠に関心がある日本人の利用者だという。
担当者は利用者からの反響について「実際に診察まで受けられてよかった」と、サービス内容に納得する人が多いと説明。2025年以降もプランは継続予定だとしている。
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