販売停止になった玩具「有害無罪玩具」を集めた博物館の漫画に反響 「いろんな人に読んでもらいたい」(1/2 ページ)
「生きているシャボン玉」「未来が見えるメガネ」「多重世界眼鏡」などの玩具を体験していくSF漫画です。
有害無罪玩具館へようこそ――販売停止になった玩具を集めた博物館の創作漫画がTwitterで注目を集めています。さまざまな有害指定された架空の玩具を体験していく漫画で、それらはどれも不思議なだけでなく心を揺さぶる内容です。最初の「生きてる!! しゃぼん玉」から一気に引き込まれる……!
物語は、同博物館に社会見学で来た中学生の坂本が、柳原館長に解説を受ける形で進行します。イントロダクションとして登場するその特殊なしゃぼん玉は、吹いて形になると膜が神経網になって動き出す、名前通りの“生きているしゃぼん玉”です。それは人魚のような見た目で漂い、笑ったり踊ったり、記号を覚えさせたりもできますが、普通のしゃぼん玉同様にすぐに割れて死んでいきます。そしてそれに対し、
「これは生命の死を楽しんでいて、道徳上良くないのではないか?」「ペット同様それが寿命では?」「自我や知性があるからって生命と呼んでいいのか?」「そもそも自我や知性とは何か?」
といった議論が生まれ、結局のところ結論が出る前に販売中止に。このように明確な理由無く世に出なくなったものが、「有害無罪玩具」としてこの博物館に集められています。上記のしゃぼん玉を生命とするなら、“ソレ”がはじけた液は死骸なのかどうか。「あなたはどちらに感じられますか?」という館長の質問の答えは……。
もし、少し先の未来が見えたら――というのは誰しもが考えたことがあると思いますが、次に登場するのは「0.5秒後の未来が見えるメガネ」です。絶対にジャンケンに勝てるようになるし、危険だって察知できるだろうし、この玩具は良いことずくめのように思えます。しかし、“自分の動き”が予知され、それが像として見えるというのは、思わぬ脳の混乱を引き起こします。
普通はそんな体験ができないので考えもしませんが、この漫画では実際に起こり得るリアルな出来事として考察され、分かりやすく描かれています。現実でも本当に作られたら、最終的には販売停止になるのかどうか。
ちなみに同漫画は、作者のチラシのウラ(@KurumaYoi)さんが自身のWebサイトで公開しているもので、そんなWeb漫画ならではの仕掛けもあります。特に「万能デザイン人形」はちょっと衝撃的で、全ての人にとって“最も好ましいデザイン”に感じさせる人形がなぜ販売停止になったのかを独自の表現で描いています。人形自体の発想と表現方法が面白くて興味深い……。
こんな調子で、いろいろな“SF道具”と言いたくなる玩具を体験していきますが、どんどんと人間というもの、または自分というものについて考えさせられる内容に。「脳コピー箱」や「多重世界眼鏡」など難しそうな内容も出てきますが、図なども使って説明されているので、グングンと止まることなく読み進められます。
そしてラストの方には背筋がゾクゾクするような展開も。もしかしたら考え過ぎて軽く酔うような感じになるかもしれませんが、きっと悪い気分にはならないでしょう。新鮮に反応する坂本と、常に冷静な柳原館長、2人のせりふ回しの浮遊感は心地よく、その絵柄も魅力的なので、人を選ばずオススメできます。是非一度読んで欲しい……!
同作は2017年11月に最終話が公開され(全59ページ)、たびたびTwitterなどで話題に。今回再び注目を集めると、コメントでは「素晴らしい」「すごい漫画だ」「天才」と称賛の声が寄せられ、「いろんな人に読んでもらいたい」と拡散される流れになっています。
チラシのウラさんは、他にもさまざまな漫画をWebサイトで公開しており、8月18日には、かつて人に作られた不死の人魚が登場する『金魚の人魚は人魚の金魚』(97ページ)が完結。また、無限の時間の中で生きる『虚数時間の遊び』などは雰囲気やラストが情感にあふれていたりと、作品によって受ける印象が違うので、気になった人はモーメントにまとめられている漫画10本を上から読んでみるといいかもしれません。
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