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ペットボトルに段ボール……廃材で彩られる舞台版「もののけ姫」 日本で上演スタート公開舞台げいこリポート

ビデオテープ廃材で作られたタタリ神。アクロバティックな発想は吉と出るか凶と出るか。

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 スタジオジブリ作品としては異例の舞台化で反響を呼んでいる「Princess MONONOKE〜もののけ姫〜」の日本公演が4月29日に始まった。イギリスの若手劇団「Whole Hog Theatre」による作品で、第1幕と第2幕の2部構成。せりふは英語となっている。

 注目は舞台装置の数々。なんと廃材を使って表現しているのだ。例えば、全身がウネウネしたタタリ神はビデオテープ廃材で作られている。テープ……そのアクロバティックな発想が吉と出るか凶と出るか。

大量のテープに包まれて

 幕が上がり出てきた巨大な物体。赤い目を怪しく光らせ、全身のテープをワシャワシャと鳴らしながら、大暴れしている。なるほど、確かにタタリ神である。

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カセットテープ何個分だろう……
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映画では“ブニュルブニュル”という感じの音だったが、舞台では“ワシャワシャ”

 そして、映画の筋書き通り、次はアシタカとヤックルの出番。ヤックル役の人は右手に人形(頭部)を掲げてアカシシを表現……! アシタカ役の人は、ヤックルにおんぶされている。

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観ていると段々ヤックルに思えてくるんです
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アシタカがヤックルに乗るときはおんぶで

 一歩間違えば“学芸会”になってしまうところだが、思いのほかそうは見えないのは、基本的には原作に忠実に進んでいるから。映画を見たことがある人なら「このシーンあったあった」と世界観にすんなり入り込める。

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アシタカが唐傘のジコ坊と初めて会うシーン
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エボシ御前が石火矢衆を率いてもののけ退治をするシーン
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映画ポスターにもなったもののけ姫を象徴する場面

 舞台脇のディスプレイにはせりふの日本語訳が表示される仕組みになっている。日本語訳は映画にかなり忠実で、有名な「生きろ。そなたは美しい」や「あのコを解き放て! あのコは人間だぞ!」、モロの君の「黙れ小僧!(中略)お前にサンを救えるか!」などがそのまま使われていたのには胸が熱くなった。またタタラ場ではキャストが劇中歌を日本語で歌うなど、原作へのリスペクトが感じられる。

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ディスプレイに日本語訳

巨大なディダラボッチはどう表現

 ご存知のように「もののけ姫」では、中盤以降一気に動物や神の登場数が増える。舞台も廃材で作ったパペットを駆使し、クライマックスに向かってどんどん盛り上がっていく。素材はペットボトルや段ボール、新聞紙などだ。

 コダマは小さなコダマの人形を、後ろに森の精のような格好をした黒子が持つ。「人間、食う……」と迫ってくる猩々は、黒い布を揺らして表現。モロの君や乙事主は、パペットが大型のため3人でムカデ競争のようにして操作していたほか、セリフも3人で同時に言うことで声を響かせ、風格を漂わせていた。

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コダマはこんな感じ
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黒い布を揺らして表現する猩々
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モロの君
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手作り感がある
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乙事主
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3人がかりで操作している

 極めつけは、第2幕のクライマックスで、シシ神がディダラボッチになるシーンである。ここは残念ながら写真でお伝えすることができないのだが、ビニールやテープを揺らして大きく舞い、巨大なディダラボッチになっていく様は圧巻。廃材をここまで豪華に見せられるのか……と感動を覚えた。

 ただそれと同時に、某仮装大賞の審査時の効果音が頭の隅で流れたことも、正直に記しておく。クライマックスに向かってパペットの動きが激しく、大掛かりになっていくのを見て思わず連想してしまったのだ。とは言え、パペットは質感にこだわって作られている様子。手作り感はあるものの、丁寧な細かい動きや照明が加わることで豪華に見える工夫が施されていた。

(C)Princess Mononoke 実行委員会In association with WHT.

朝井麻由美(@moyomoyomoyo)は、体当たり取材・イベント取材を得意とするフリーライター。一風変わったスポットに潜入&体験した記事は100本を超える。主に「週刊SPA!」や「DIME」などの男性誌で執筆するほか、「日刊サイゾー」ではB級スポットを巡る「散歩師・朝井がゆく!」を好評連載中。ゲームと雑貨とパズルが好き。コスプレするのもわりと好き。ウニとイチゴがあればだいたいご機嫌。


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