立命館大学ゲーム研究センターが古いゲームの寄付を募り「炎上」していた件で、ゲーム研究者の井上明人氏が「立命館大学『ゲーム資料現物寄付』のページは、なぜ炎上してしまったか」という記事をYahoo!ニュースに寄せています。
「こいつら何様」「ただの物乞い」と炎上
同センターの活動・呼びかけについては別の記事で紹介したとおりですが(関連記事)、一方、2ちゃんねるやまとめサイトではこれを「立命館大学『昔のゲームソフト・本体・攻略本下さい。汚いのやダブリは要らないです。送料は負担ヨロシク』」といった見出しで紹介。これがきっかけとなって、公式サイトのコメント欄にまで、「こいつら何様なんだ?」「ただの物乞い」「とっととつぶれろ」といった非難のコメントが多数寄せられる形となっていました。
確かに、元のエントリにも説明不足な点はあったかもしれません。井上氏の説明を要約すると、「近ごろ着払いで不要なゲームを送ってれる人がいるんだけど、さすがに無断でいきなり着払いは困る」という事情が背景にあり、今後問題が大きくならないためにも「あらためてしっかり説明しておこう」というのが記事の趣旨だったそうですが、元の文章からでは、このニュアンスはあまり伝わってきません。同センターもこれは認めているようで、現在は「下記の募集要領は、本センターへの現物寄付をお考えいただいている方々に対してのご案内になります」とのコメントを追記しています。
そもそも立命館大はそんなこと言ってない
ただ、ネットで叩かれているような「上から目線」「物乞い」といった姿勢が、本当にセンター側にあったかは疑問です。そもそも「上から目線」だと受け取られた一番の原因は、2ちゃんねるやまとめサイトの「立命館大学『昔のゲームソフト・本体・攻略本下さい。汚いのやダブリは要らないです。送料は負担ヨロシク」という見出しではないでしょうか。
言うまでもなく、この「昔のゲームソフト・本体・攻略本下さい。汚いのやダブリは要らないです。送料は負担ヨロシク」発言は、あくまで元記事の「要約」(それもかなり作為的にねじ曲げられた)であり、立命館大がこれを実際に発言したわけではありません。こういう「実際には言っていないのにあたかも発言したかのように書く」メソッドで読者を釣るのはまとめサイトがよくやる手口ですが、これは言い換えれば「発言のねつ造」であり、悪質な印象操作だとも言えます。
ついでに補足しておくと、デジタルゲームはその性質上、古いソフトはハードの世代交代とともに次々切り捨てられてしまうため、他のメディア以上に「アーカイブ化」が急務だと言われています。今こうしている間にも、メディアやハードの劣化・故障により古いゲームは“物理的に”遊べなくなっていっており、こうした消えゆくゲームをきちんと保管し、後世に残しておくためにも、同センターのような試みはもっと評価されるべきでしょう。無料で寄付を募っていることに対する批判もありますが、貴重なゲームを個人レベルで保管し続けるには相応のコストがかかりますし、中には自分のゲームがアーカイブの一部として永久に残ることに価値を見出す人もいるはずです。いずれにしても今回の「炎上」は、2ちゃんねるやまとめサイトの「スレタイ」の操作によるところが大きかったのではと思います。
さて、ところで本当の「ネット乞食」とは誰だったのかな?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 80年代以前のゲーム資料寄贈を 立命館大ゲーム研究センターが呼びかけ ゲームアーカイブ実現に向けて
貴重なゲーム機やソフト、資料がある人はぜひ! - 「よんどしい破産」→まとめ「STUDIO4℃破産!」→STUDIO4℃「ピンピンしているんですけど」
またデマかよ。 - まとめサイト「アフタヌーンの部数が半分以下に」→公表前の不完全なデータに踊らされていた
アフタヌーンへの誤解が広まり、まとめサイトはアクセスが稼げました。 - 雑誌の「フラゲ投稿」で逮捕者 運送会社で雑誌の仕分けを担当
「携帯電話で撮影」でも当然アウトです。 - 「荒らし行為は趣味やライフワークのように行っていた」 情報流出騒動で大手2ちゃんねるまとめサイトが閉鎖
人気のまとめサイト「僕自身なんJをまとめる喜びはあった」が、管理人の書き込み履歴流出を受けて閉鎖に。 - 「渋谷駅で銃乱射」デマはどのように広がったのか “まとめ”が生む危うい伝言ゲーム
実際には「銃の形をしたライター」だったというこの事件。ネットでは「発砲事件」「銃の乱射事件」といった誤情報に変換されTwitterやNAVERまとめなどによって広く拡散される事態となっていた。 - 【注意】「『進撃の巨人』に障害者団体が抗議」はデマ? 講談社広報は否定
2ちゃんねるの書き込みが発端で、多くの人が掲示板やTwitterで反応していた。