「郵便体操」という、伝説の体操があるらしい。情報を求めてネットで検索してみたが、確かな情報は見当たらない。動画投稿サイトなどで検索してみたものの、あったのは音楽のみ。体操している動画らしいものは一切なかった。
郵便体操とは何なのか。気になったので日本郵便に電話してみた。ところが、電話に出た担当者さえ「郵便体操についてあまり知らない」と言う。いよいよ踏み込んではいけない世界に踏み込んでしまったのかもしれない、と少し恐怖を覚えながらも、郵便体操を知っている担当者を探す。――いた……!
そんなわけで、実際に見せてもらうことに成功。午前8時、日本郵便 豊島郵便局の朝ははじまった。作業をしていた郵便局員たちは、音楽がかかり始めるとわらわら位置につく。前奏が終わると「今日も元気に郵便体操いきましょう!」という声が流れ、体操が始まる。
郵便体操は約3分。途中鳥のようなポーズをしたり、両手を上に上げて伸びをする姿が印象的だ。そして最後はやはり深呼吸。体操のあとには「安全確認トレーニング」などを行う。
なるほど、これが伝説の郵便体操か。
ところで、この体操はなぜ作られたのか。日本郵便豊島郵便局局長の富澤敦氏に聞いてみた。
「日本郵便は保険も扱っているが、保険は人が長生きするともうかるという仕組み。だから、『健康で長生きしてもらえる体操』としてラジオ体操が生まれている。郵便体操もその延長線上にあるもので、社員の健康と規律を守るためのもの」(富澤氏)
郵便関係の資料によれば、そもそも郵便体操ができたのは昭和50年(1975年)。腰痛症などの対策として取り入れられた体操だった。
それから約40年。一時体操をあまり行わない時期もあったが、郵政民営化と共に再び積極的に行うようになったという。ちなみに、「郵便体操」の英語表記は「Gymnastics for postal」。作曲者・振付けを行った人は不明。
郵便体操を行うのは、主に郵便関係の仕事に携わる職員。配達をする局ではたいていこの体操をしているが、郵便関係の仕事ではない部署ではラジオ体操のことも多いという。
業務運行の安定を図るために考案されたこの体操だが、実は今回見学したのは「郵便体操(その1)」。「郵便体操(その1)」は、基本的な動きの中から郵便の作業特性にふさわしいものを選び、職場で気軽に行えるよう構成したもの(12種類56動作)だという。
そしてなんと、これには続きがあった。その名も「郵便体操(その2)」。
「郵便体操(その2)」は、郵便作業は腰への負担がかかることから背筋や腹筋を鍛えるための体操。専門の医師が推奨する背腹筋の強化運動で、こちらは1人で実施することが想定され作られている(3種類6動作)。その2は郵便局員でもほとんど知られておらず、今では幻の体操となっている。
郵便体操の全編が公になるのは今回が初めてのこと。今日も郵便局の朝は郵便体操から始まる。
(太田智美)
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