野生のクマは絶滅したとされている九州――その福岡と佐賀の県境にある脊振山(せふりさん)でクマを目撃したという情報が10月17日と18日に1件ずつ、登山者から地元の警察署へ相次いで寄せられました。警察署はほかの動物との見間違いの可能性が高いとしながら、周辺へ警戒を呼びかけています。
脊振山は福岡県福岡市早良区と佐賀県神埼市三ツ瀬の県境にまたがる、標高1054.6メートルの山です。神埼警察署によると、1件目の目撃情報は30代男性が早良区の駐在所へ通報したもの。17日午前に脊振山の九州自然歩道で西側の椎原峠(しいばるとうげ)周辺を歩いていたところ、20〜30メートル先でクマのようなものが走っていくのを見かけたそうです。男性は下山後に駐在所へ連絡しました。
2件目は40代男性によるもの。18日朝7時20分ごろ九州自然歩道の東側・気象レーダー観測所あたりで、クマザサの茂みのなかからクマのような動物がヌッと立ち上がってきたとのことです。男性は最初は怖くて動けなかったもののなんとか引き返して逃げ去り、警察へ110番通報しました。
環境省によると、九州で野生のツキノワグマが最後に捕獲されたのは1957年。50年以上経過していることからすでに絶滅していると考え、2012年にレッドリストの「絶滅のおそれのある地域個体群」から「九州地方のツキノワグマ」の項目を削除しました。九州にクマはもういないはず。しかし2日間で同じ山での目撃情報が別々の人から相次ぐとなると、クマ出現の信ぴょう性は高いです。
通報後に福岡県警は現場近くにあった動物のフンを採取し、九州環境管理協会に調査してもらいましたが、アナグマの種類のフンだったことが判明。また佐賀県警では県庁技術員でクマの生態に詳しい人に現場を調べてもらったところ、木で爪を研いだあとといったクマの生息が確定できる痕跡は見つからず、代わりにイノシシの足跡が見つかったそうです。地元の猟友会のハンターは「イノシシも立ち上がることがあるので見間違いではないか」と推測しています。
神埼警察署では、ほかの動物の可能性はあるものの、住民が人に隠して飼っていたクマが外へ逃げ出したケースも万が一に考えられるとして、九州自然歩道に警戒の看板を設置。パトカーでも歩行者へ注意を呼びかけます。果たして目撃者が見たのは一体何だったのか、正体が気になるところです。
(黒木貴啓)
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