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「BLOOD+ 10周年ファンミーティング」レポート&キャラデザ箸井地図インタビュー(3/3 ページ)

新作小説「BLOOD♯」などの発表も行われました!

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 藤咲監督がColors of the Heartを口ずさみながら登場した第3部では、引き続き監督への質問に答えるコーナーからスタート。

監督に質問

――主役である小夜に喜多村英梨さんを起用したきっかけのエピソードを教えてください。

藤咲: 80人くらいの方がオーディションに来ていて、最後の4人に絞り込んだ時に「こういう子がいます」と持ってこられたのがキタエリさんのテープでした。リクとの会話のシーンが課題だったんですが一番お姉ちゃんっぽい話し方ができていたんですね。そこで「この子にしたい」と決めました。キャストへの演技についてはやりながら固めていきました。キタエリさんは最初声が出ていなかったので、山田稔さんに特訓してもらいましたね。あとソロモン役の辻谷耕史さんにはかなり無理を言っています。


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――ハジと小夜の間で血を授ける行為は「口移し」の設定なのでしょうか。また「目覚めの血」の設定は最初からありましたか

藤咲:割と早い段階で、翼手の女王は女王蜂であるという案が出ました。その女王には働き蜂的な守護者・シュヴァリエがいて、眠りにつく案が出た時点で最初に血を飲むのはそのシュヴァリエの血であろうと思いました。


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――1部と2部の間にあった「空白の一年」について教えてください

藤咲:実は何にも決めていません。ただハジと小夜が各地で発生する翼手を狩っていたとは思います。でもそれ以上は決めていないので、ハジがチェロを弾いて日銭を稼ぎ、小夜のためにソーキそばを作っていたとかは、二次創作自由です。この期間で小夜たちは成長はしていますけれど、彼らの時間が止まっていたという方が良いのかなと思います。あとチェロも弾くし、踊りも踊るけれどハジは料理だけはできないはずです。


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――小夜が序盤に病室で食べていたサンド状のおにぎりの正体はなんでしょうか

藤咲:(実際のシーンを出しながら)ポークサンドおにぎりです。沖縄の取材で食べました。スパムが入ってるんですよね。

アシ:おいしかったですね、四角くて。

――ソロモンのプロポーズに勝算はあったのでしょうか

藤咲:ありません。彼は自分の思いをぶつけてみたかった。言わずにいられなかったんですね。彼の性格を考えると争ってまで何かを勝ち得るよりも誰もが幸せになれる世界を考えてしまうため、最終的には相手の気持ちを優先させてしまうでしょう。


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――ネイサンは一体何者だったのでしょうか

藤咲:最初はただのシュヴァリエで、ヒトラーの画家の友人という設定でした。しかしデューヴァがオペラを歌うということもありプロデューサー的な奴が居てもいいのかなと。裏設定的には頭をつぶされて死んでいたSAYAのミイラのシュヴァリエで、「観察者」の立ち位置になりました。


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――翼手の女王は必ず双子とのことですが、SAYAにも姉妹がいたのでしょうか

藤咲:世界のどこかには小夜と同じような翼手がいると思います。ただその数は少ないでしょう、いたとしても隠とん生活だと思います。


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――シフたちが口にしたのが、ディーヴァの血であれば延命できたのでしょうか

藤咲:難しいと思います。あらかじめ「滅びる」ようにされているので、ディーヴァの血を手に入れても延命は一時的なものだったかもしれません。小夜もそうですが、シュヴァリエやシフたちは兵器であるという設定がありました。特にシフは戦争の道具に使われるため全員滅びるというイメージでしたね。ただルルゥに関してはジュリアの第5塩基の研究のおかげで定期的な透析治療を受けているため、「赤い盾」の保護を受けて元気です。沖縄の太陽の下で、モーゼスたちの思い出を語り継いでいます。


BLOOD+

――小夜以外のキャラクターを主人公にして話を作るとすればどうされますか

藤咲:外伝的なもので良いのであれば、シフかなと思っています。何度も考えてはいますが、終わりが悲しいので……精いっぱい生きた感というのは出せるかもしれませんね。


BLOOD+


BLOOD+

――主要キャラクターが非業の死を遂げることもありますが、スタッフの皆さんはどう感じておられましたか

藤咲:リクやイレーヌなどのシフたちが死ぬことは当初から予定されていました。ただ視聴者の方からの反響は大きかったです。


BLOOD+

――絵コンテを切る際に気を付けていることはありますか

藤咲:画期的な意味での分かりやすさと、テンポです。「BLOOD+」は沖縄の時間を意識してゆっくりめです。


BLOOD+

――作品をBlu-rayで出すことは考えていますか

藤咲:現時点は予定はありません。しかし全ては皆さん次第です。


BLOOD+

――ハジはピーマンが苦手という設定があったと思うのですが、どこから出てきた話なんでしょうか

藤咲:ピーマンに関しては後付けですね。今日来ているアシスタントがピーマン嫌いなので、その影響だと思います。


BLOOD+ 会場にスタッフが持ち寄ったグッズ(一部)

――今の技術を使って作品を作るとしたら使ってみたい技術はありますか

藤咲:VRですかね。小夜の視点でハジを見てみたりしたら面白いかもしれません。


BLOOD+ 当時センター街に飾られていた横断幕

――キャラクターが大きく動いたり、揺らぐ演出でこころがけていることはありますか

藤咲:本作のキャラクターは一度決めたことでも揺らぐことがあるということです。やっぱりみんな人間ですから。


BLOOD+BLOOD+ 喜多村英梨さんからのメッセージ(左)と摩天楼オペラさんからのメッセージ(左)

 また会場には、ヤマザキコレさん、石井明治さん、箸井地図さん、摩天楼オペラさん、 喜多村英梨さんらのメッセージが届いており、会場には石井さんの姿も。当時、藤咲監督からの「版権物は基本的に断らずにどんどんやる」という方針からアニメージュやアニメディアなどのアニメ誌に数々の版権イラストを掲載していた本作。アニメ誌でも作画を担当していた石井さんに当時のイラストを見せると「懐かしいです。いろいろやったなぁ」と笑顔で話してくれました。


BLOOD+ 藤咲監督がこの日のために用意した「シャトーデュエル」風ボトル(作中登場するワイン)画像提供:ぴりぽ(@piripo_st )さん

 またイベント前に、本作のキャラクターデザインやエンディングイラストなどを担当した箸井地図さんにもインタビューを行いました。

箸井地図インタビュー

――「BLOOD+」の魅力のひとつといえばキャラクターのデザインです。どのキャラクターも本当にステキなのですが、主人公・小夜のイメージについてはどのような要望がありましたか

箸井:当初は「BLOOD THE LAST VAMPIRE」の続編になると思っていたので、小夜はカッコイイ路線のキャラクターになるんだろうとイメージしていました。しかしまずは「そこを切り離して考えてください」と最初に言われました。メインキャラ数体と同時に案を出していたのですが、やっぱり一番時間がかかったのは小夜でしたね。ぽってりした唇には(監督から指定があったかもしれませんが)「(無印の)BLOOD」へのリスペクトとして小夜というキャラクターに残したいという思いがこもっています。髪型も、ロングバージョンやショート、ボブ等色々考えたんですが最終的にショートに決まりました。後のディーヴァとの対比を考えてもショートにしたことは大正解でしたね。

――ハジのイメージはどのようにして作り上げられましたか

箸井:ハジはわりとすんなり決まったように思います。藤咲監督から「長身痩躯、翼手の手を持つ」などのイメージをデザインに入る前に説明を受けたうえでデザインしました。顔の造形は「ビヨルン・アンドレセンのような感じで」と言われ、イメージ的には納得したのですがあの「この世のものとは思えないような美しい顔」を自分の絵柄で再現するのは難しく……結局、自分の絵柄の中で「ハジらしい顔」を模索しました。OKが出た後も正解だったのかどうかしばらく不安だったのですが、石井(明治)さんの絵になって動いているハジを見たときにその不安は一気に消し飛びました。

――キャラクター原案初期から放送まで(決定稿まで)でもっとも印象が変わったキャラクターは誰ですか

箸井:ネイサンはオネエ言葉だったりして当初どんなキャラクターになるのかが読めませんでした。髪型案が大量にあったりして、イメージする際に悩んだ形跡がみられますが結果的にすごく深みのある面白いキャラクターになりましたね。デザイン時と放送でもっとも印象が変わったキャラクターというとなんといってもルルゥでしょうか。彼女があんなにかわいくなるとは全く思ってなかったんです。シフは人数も多いし衣装も全員同じということもあって、それぞれ個性的な特徴をつけないとと考えたときに日野日出志先生の恐怖漫画のような顔のキャラクターが1人くらいいても面白いんじゃないかと。あとソロモンは当初の案では線のような目(常に笑っているような顔、目を開けない感じ)だったんですよ。意外かと思いますがそういう案もあったということで……。

――このキャラクターはここがコダワリ! というものがあれば教えてください

箸井:メインキャラではありませんが、リーザの下睫毛とカルマンの眼鏡でしょうか。リーザは最初の登場回以降、ほぼ中身がアンシェルにすり替わっていた訳ですが、あの下睫毛が怪しさを演出していて素晴らしいなと思いました。またカルマンはシフだから必要ないのかもしれませんが、眼鏡にしたかったんです。藤咲監督、カルマンってだて眼鏡なんでしょうか(のちに筆者が確認したところ、だて眼鏡とのことでした)。あと個人的にはテッド・A・アダムスが大のお気に入りです!

――最終回をはじめ、BLOOD+はED絵は放送当時から大きな話題となりました

箸井:EDは藤咲監督や演出の松本淳さんのコンテをいただいて、それに沿った絵を描きました。どれも思い入れが深いです。

――今回の10周年イベントでは「箸井さん直筆のオリジナルイラストをプレゼント」という企画がありますが、どのように思い立たれたのでしょうか

箸井:なんせ10周年ですから! 10年も応援して下さるファンの方がいるのは本当にうれしいことです。私自身もBLOOD+に特別な思いがあるので、10周年のイベントをやるのであれば微力ながら何かできるることがあれば……と考えました。

――最後にファンの皆さんへメッセージをお願いいたします!

箸井:BLOOD+のキャラクターを愛してくださってるファンの方に喜んでもらえたらと思い、今回色紙を描きました。BLOOD+をずっと好きでいてくれるファンの皆さん、本当に有難うございます!


BLOOD+BLOOD+ 箸井さんのイラストは女性の方にプレゼントされました!

 イベントでは藤咲監督によるプレゼント抽選会が行われ、藤咲監督デザインのキャラクターカード全種セットや箸井地図さん直筆の色紙、石井明治さん直筆のメッセージカードなどがプレゼントされ、引き当てたファンはとびきりの笑顔を見せていました。


BLOOD+ 入口でランダムに3枚プレゼントされていたカードの全種類セットは1人にプレゼントされた

 抽選会の後には新作となる続編小説「BLOOD#(仮)」と朗読劇「BLOOD+ 1945(仮)」が藤咲監督により発表(関連記事)され、会場から割れんばかりの拍手が贈られました。「BLOOD#(仮)」に関するものとしてスクリーンには、肩まである髪に優しい目をした奏とショートヘアーに落ち着いた雰囲気で眼鏡姿の響が並ぶイラストでが投影されました。

 もちろんデザインは箸井さんで、制服姿の2人はともに中高生くらい。舞台は東京になり、デヴィッドとジュリアの息子・アダムと新たな物語を紡いでいくとのことです。最終的には沖縄を目指すという話も……?


BLOOD+BLOOD+ 会場にはファンやCLAMPさんから贈られたお花

 今回新作発表の場を「ファンミーティング」としたことについては、「やっぱりファンの皆さんに一番にお伝えしたかったからです。僕の宿題をこれで片付けられるのではないかと考えているので、楽しみにお待ちください」語った藤咲監督。

 元ちとせさんの「語り継ぐこと」が流れるなか「この作品は私が初めてアニメ作品に関わった作品で、自分の人生を決めた作品でした。今日ファンミーティングに参加させていただけて本当にありがたかったです。ありがとうございました」とアシスタントさんもあいさつ。「本当に10年もの間応援してくださってありがとうございます。今日やっとこの言葉が言えました」と話す藤咲監督はこの日一番の笑顔を見せていました。


BLOOD+

 2017年2月には新たな物語が展開する「BLOOD+」シリーズ。翼手と人間の未来はいかにして紡がれていくのでしょうか。新たな物語のスタートまで、小夜とディーヴァの物語はファンによって語り継がれていきます。

(Kikka)

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