一般的にTwitterの鍵アカウント※の投稿内容を、本人に許可なく拡散することはマナー違反とされています。ところが一部の報道番組で、亡くなった電通社員の鍵アカウントの投稿がそのまま放送され、「問題ではないか?」とネットで議論を呼びました。
(※承認した相手にだけ投稿内容の閲覧を許可しているアカウント)
電通の件に関しては、公益性があるという理由で番組側が放送に踏み切ったと考えられます。しかし鍵アカウントの情報をマスメディアが本人への許可なく拡散することは本当にプライバシーの侵害にならないのでしょうか? この疑問について、IT関連の法律問題に詳しい内田・鮫島法律事務所の伊藤雅浩弁護士に聞きました。
鍵アカの内容を放送するのは罪に問われるか? 弁護士に聞いた
―― 鍵アカウントの投稿内容を公に放送することで「罪に問われる」ことはあるのでしょうか。
伊藤弁護士: 内容がアカウント主の名誉を毀損(きそん)するようなものでもない限り、刑罰法規に該当することはありません(「プライバシー侵害罪」というものはありません)。
他方で、民事の観点でいうと、プライバシー侵害には当たるケースもあるでしょう。プライバシーの侵害と、表現の自由(報道の自由)との関係は常に衝突関係にあり、ご指摘の通り「例外的に侵害にならない」ケースはあります。最高裁の判例でも「その事実を公表されない法的利益」と、「公表する理由」を比較して、前者が優越する場合には不法行為(プライバシー侵害)が成立すると述べたものがあります。上記は抽象的な基準ですので、各事例に応じた個別の判断にならざるを得ません。本件のようにイメージ映像で一部のツイートが表示されたくらいであれば、プライバシー侵害が成立する可能性は低いと思います。
なお、死者のプライバシーについては、もう少し別の考慮も必要です。プライバシーというのは人格権の一つとされており、死亡によって権利が消滅するというのが一般的な考え方です。遺族との関係を考慮するとまたもう少し複雑となるため、ここではその点は割愛します。
明確に本人の名誉毀損に当たる取り上げ方でない限り、公益にかなった理由があれば罪に問われることは無いようです。ただし、「事実を公表されない法的利益」が大きい場合は民事でプライバシー侵害と見なされることもあるということでした。いずれにせよ、「鍵を掛けている」というのは本人の「見られたくない」という意思表示。基本的には許諾なく拡散しない方が無難でしょう。
※12月29日21時20分追記
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