ヤマト運輸が、日本郵便の優遇措置について論じる特設サイト「いい競争で、いいサービスを。」を公開しました。同社が2015年11月12日に全国54紙でメッセージを掲載してから1年ちょっとが経過しましたが(関連記事)、特設サイトではその後の経過を報告し「いまだに公平・公正なものとはいえない状況が続いている」としています。
ヤマト運輸が2015年に出したメッセージでは、主に以下の2点について訴えていました。
- 「信書」制度の不便さ
- 日本郵便が国際スピード郵便(EMS)として優遇を受けながら荷物を運んでいる
ヤマト運輸では1年強この2点について国に改善・是正を求めてきましたが、現時点では何も改善されていないとのこと。今回の特設サイトでは、あらためてこれらが問題であると主張するとともに、ユーザーの意見を求めています。
「信書」制度の問題
「信書」は「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書」と郵便法で定められたもの。送付する状況や文面のわずかな違いにより、信書であったりなかったりします。
信書規制の最大の問題は「何が信書に当たるのか分かりにくい」にもかかわらず、郵便または信書便以外で信書を送った場合、運送事業者だけでなく送り主も罰せられること。ヤマト運輸は信書を送達した運送事業者のみを罰するべきであると主張し続けてきましたが、罰則規定の見直しは行われていません。この問題を重く見たヤマト運輸では、2015年3月にクロネコメール便のサービスを廃止しました。
また、クロネコメール便の廃止後に、日本郵便が幾つかのサービスを値上げしました。「人件費単価の上昇」「持戻り・再配達を行うことによるコストが増加」が理由であるとしていますが、クロネコメール便との競争があればこの値上げは防げたのではないかと主張しています。
日本郵便と国際スピード郵便(EMS)
EMSはExpress Mail Serviceの略称で、レターなどの郵便物を国際間で迅速に輸送するためのサービス“でした”。さまざまな優遇措置の適用を受けており、民間事業者に比べ運用面・コスト面で圧倒的に優位な状況にあります。
しかし、現在ではEMSで「紙」だけではなく「物」も運べるようになり、ヤマト運輸のような荷物を運ぶ民間業者と競合となりました。にもかかわらず、EMSは現在も優遇処置を受け続けており、公平・公正な競争を損なっているというのがヤマト運輸の主張です。
さらに、簡易な通関手続きが不正薬物や未知の細菌、病原菌を国内に持ち込む原因になる可能性があると指摘。EMSに対する通関手続き上の優遇措置は、日本社会の安心安全を脅かし、国際的な信用を低下させかねないものであるため、民間事業者と同様の「申告納税方式」を適用するべきとしています。
ヤマト運輸はこれらの問題について国に改善・是正を訴えるとともに、特設サイトで意見を募っています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ヤマト運輸の”日本郵便優遇”提起 利用者からの質問・批判に回答した特設サイト開設
「公平・公正な競争条件」を求めたメッセージを全国54紙に掲載していた。 - 佐川急便、「ドライバーが伝票書き換え料金を多く取った」とするTwitter上の指摘認める
利用者には返金と謝罪を行ったとのこと。 - 「ブラック企業大賞2016」ノミネートが発表 電通、佐川、日本郵便、仁和寺など10社
2016年、大賞は一体どこの企業の手に……!? - 郵便物の封にマスキングテープは使用厳禁 「マステだけ使う人を改心させたいマンガ」が話題に
はがれやすく中身がこぼれる恐れ、他の郵便物への迷惑にも。 - 「ブラック企業大賞2016」発表 大賞は電通 Web投票賞は日本郵便
業界賞はプリントパックとディスグランデ介護でした。