1月もまもなく終わり。暦の上ではもうすぐ「立春」ですが、まだまだ寒い日々が続きそうですね。こんな寒い季節に食べたくなるのが、シチューなどの温かい汁もの料理。冬に美味しくなる牡蠣が入ったチャウダーや、かぼちゃのポタージュなど……皆さんそれぞれにお気に入りのメニューがあるのではないでしょうか? 日本の食生活にすっかりなじんだ、これらの料理の来歴をひも解きます。
シチューはいつから日本で食べられている?
シチュー(stew)とは英語で、肉や魚介、または野菜をソースで煮込んだ料理の総称。日本には明治維新の前後に伝わったようで、明治初期の洋食店のメニューに「シチウ」が登場しています。
大正時代に創刊された主婦向け雑誌には、早くもシチューのレシピが掲載されていました。大正〜昭和初期の食卓というと「和食中心では?」と想像しがちですが、実際はかなりの家庭に洋食が普及しており、多くの人びとがカレーやシチュー、魚のフライなどに親しんでいたようです。
その後、イギリスやアメリカとの戦争により、洋風の文化が禁じられた時代に。そんな時代を経て、1950年代に始まったのが現在も続くNHKの番組「きょうの料理」です。この番組でも、開始から間もない時期にビーフシチューが紹介されています。
シチューの普及にさらに影響を与えたのは、「牛乳」の流通事情です。かつては缶入りや瓶入りの牛乳を配達してもらうのが一般的でしたが、1960年代ごろになると、スーパーマーケットなどで牛乳が1リットル単位で買えるようになりました。クリーム仕立てのシチューやグラタンなどを手軽に作れる環境が整ったというわけです。
チャウダーの発祥はアメリカ!
一方、チャウダーとは「とろみのついた濃いスープ」を指すアメリカ発祥の言葉。「chow(食事)」を意味するアメリカの俗語からきているとも、フランス語の「chaudiere」から転じたものとも言われています。
「移民の国」アメリカでは、その土地に住む人びとの出身地や、入手できる具材によって、さまざまなチャウダーが作られました。たら(鱈)の入ったコッドチャウダー、とうもろこしを使ったコーンチャウダー、クラム(二枚貝)を入れたクラムチャウダー……。
同じクラムチャウダーでも、イギリス系の移民が多かったボストンでは、クリーム仕立ての「ニューイングランド風チャウダー」が作られるように。そして、イタリア系の意味が多かったニューヨークでは、トマト仕立ての「マンハッタン風チャウダー」が一般的になったのです。
ポタージュは、実はスープ?
日本の食生活では、ポタージュといえば「コーン」、それに「かぼちゃ」。そこから、ポタージュと聞いて「とろみのある濃厚なスープ」と連想する人が多いかもしれません。
しかし、「ポタージュ」とは実はフランス語で「スープ類」を表す言葉。フランス語で「鍋」を意味する「pot」で煮込んで作ることから、その名がついたと言われています。
ロシアの「ボルシチ」や「シチー」、ハンガリーの「グーラッシュ」……世界じゅうに、その土地ならではの特色あるスープ料理が伝わっています。もともとは外来の料理である、シチューやチャウダー、ポタージュ。とはいえ、今や家庭料理として日本の食生活に定着していることは疑いの余地もありません。ことこと煮込んだシチューを食べて、この冬の寒さを乗り切っていきましょう!
参考:岡田哲「明治洋食事始め とんかつの誕生」(講談社学術文庫)、阿古真理「昭和の洋食 平成のカフェ飯 家庭料理の80年」
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