やしろあずきの調査―― 今の若者ってSNSをどう使ってるの? インタビューから見えた光と闇(女子高生編)(3/3 ページ)
中高生のころにSNSがなくて本当によかった……。
Twitterってどう使ってた?
「じゃあTwitterなんですが、やっぱりいくつもアカウントって持っていました?」
「私は6個あります」
「6個!? 業者!?」
「業者じゃないです。6、7個持ってる女子って割といますよ! まあ普通の子は2個ぐらいだとは思いますが……趣味垢が趣味別で結構な数があって、あとはリア垢、愚痴垢ですね」
「愚痴垢?」
「鍵をかけてフォロー0、フォロワー0でただただひたすら愚痴や呪詛(じゅそ)を垂れ流すアカウントです。持ってる女子、多いですよ」
「怖すぎる。そういうのは寝て忘れようよ……」
「私はアカウントは2個ですね……普通すぎて申し訳ないです」
「いや、比較できるから全然ありがたいわ。それはリア垢と趣味垢?」
「はい。ただどっちも匿名にしています。顔写真も載っけてません。いろいろ怖いので……」
「え、そうなんだ。リア垢って基本本名とか写真ドカーンと乗っけてるもんだと思ってた。ダグラブ二世さんはどうなの?」
「私はそれに関しては嫌な思い出があり……。Twitterを始めた時は趣味垢1つだけだったんですけど、全くネットの怖さとか知らなくて……フォロワーが3000人ぐらいいるアカウントで自宅の位置情報を付けたまま顔写真とか学校の制服、本名をツイートしたりしてました」
「うわあ、考えただけでも恐ろしい……身内垢ならまだしも、フォロワーがそんだけいるオープンアカウントで……どうなったの? それ?」
「はい、変なおじさんからDMが来たり学校や家まで来られたりもしました」
「事案じゃねえか」
「当時は全然理由が分かってなくて、なんで分かったの!? って……自分が悪いんじゃなく、そのおじさんがハッカーか何かだと思ってました……。その後詳しい人に教えてもらって、ああ、顔写真とか位置情報をアップするのは危険なんだなって。そのあとはリア垢も趣味垢も写真は載せず、本名も隠すようになりました」
「身をもって危なさを学んだって感じだな……無事でよかったです。ジェノサイド杏子さんも何かそういうトラブルがあって匿名オンリーにしたの?」
「いえ、姉がTwitterを始めたときに、本名で登録していたせいで父親にアカウントがバレていて……うわ、ネット怖ッ……ってそこで思って」
「姉の犠牲でネットの怖さを知ることができたのか……」
「天国のお姉ちゃんには感謝してます」
「殺すなよ」
「でも、2人ともそういう事例が直接あったり見てきたからリア垢も匿名で運用するようになったんだね。これでTwitterは安全に使えるってわけだ」
「……そういう訳にもいかなかったんですよね。私自身はネットの怖さ、リテラシーに関して学んだんですが、友達はそうではないので」
「確かに」
「ある日、友達のアカウントに自分の顔と本名をドッカーンと載せられたこともあります。それで『もうダメだ!』って頭抱えて、リア垢には鍵かけてるんですけど……」
「自分だけがSNSの正しい使い方、危険じゃない運用方法が分かっても、周りにそれを知らない人がいると思わぬところで巻き添えをくらいかねないのが怖いところだな……」
SNSのメリット・デメリット
「では最後になるんですが、学校生活とSNSが密接に交わる今、そのような状況で良かったこと、悪かったことを教えてください。まずデメリットから……ぶっちゃけ面倒だとか、そういう話でいいんで」
「面倒ですね」
「面倒です」
「やっぱりそうなんだ。結局のところ面倒なんだなみんな……」
「勉強ができないんですよ。クラスLINEとかグループLINEとかで、会話が弾んでいる時に『勉強するね〜』とか言って反応しなくなるとハブられますからね。あとは会話にうまくのらないとノリが悪いとか言われたり……もう集中したい時は完全に無視して、翌日『寝てた』って言ってごまかします。めんどくさい」
「寝てたんならしょうがないもんな。伝家の宝刀『寝てた』、僕が会社をサボる時によく使っていた技『腹痛のために様子見』と同じ空気を感じるね」
「最低ですね」
「TwitterはTwitterで、一応フォローする人は好きに選べますが、嫌いな人からフォローされても絶対にフォロー返さないといけなかったり。LINEだけじゃなくTwitterでも絡めば好感度が上がるから、クラスの人気者をLINEとTwitterで持てはやしまくってる人とかもいますし……」
「もう学校内ではSNSなんかないほうがいいです、禁止にしてほしいです」
「めちゃくちゃ嫌がってる。まあこれまでの話を聞いてたから納得できるわ……ジェノサイド杏子さんは?」
「うーん……私はLINEの通知がめんどくさい……ってぐらいですね」
「なるほど、ジェノサイド杏子さんはダグラブ二世さんと違ってなんか特にLINEやTwitterの面倒ごとに巻き込まれてない気がするんだけど、これはやっぱり学校側がMLを導入するとかで対策してるからなのかな」
「いえ、それも少しはあると思うんですが、結局SNSはみんなハマってるとは思いますし……私自身が頑固だからかもしれません」
「頑固」
「私、LINEの友達が30人しかいなくて……その内学校関係の友達は9人しかいないんですよ」
「少ない」
「ダグラブ二世さんが言うような面倒ごとに関わりたくなくて……あんまり仲良くない子からLINE教えてって言われても普通に断ります。Twitterも」
「すげえな、メンタル強い。頑固ってより意志が強いんだな」
「忙しかったら普通に既読無視もします。『なんで返信してくれないの?』って言われてもそういうスタンスだからしょうがないじゃないですか。日常生活だけでも精一杯なのでSNSでも縛られるのは嫌です」
「なるほど、自分のスタンスをしっかり持ててるから周りに振り回されることなくSNSが使えるんだね。だから面倒だとは思っててもそこまでSNSにストレスはないんだな」
「私、社会人の友達がいて……休憩中に既読は付くけど忙しくて返信する暇がない……とかの話を聞いて、既読無視はしょうがないことなんだなって気付きました。学生だってそういう時は絶対あるじゃないですか」
「すごい、全国の既読無視で悩む中高生たちにこの言葉を届けたい。……ただ、既読無視をしても別に問題なかったのはやっぱり学校がそういう雰囲気だからっていうのもあるんだろうな。仮にダグラブ二世さんの学校で同じようなことをしてたら大変なことになってただろうし」
「裸にされて校庭に磔にされると思います」
「蛮族なの?」
「……ではメリット、学校生活でSNSが普及していて良かったことは何かあります?」
「友達がつくりやすいことですかね。会話せずにプロフィールだけでも相手のことがある程度分かるから……」
「私もそうです。Twitterを介して仲良くなった子が今一番仲が良い子なんですよね。やっぱりTwitterがなければその子と出会えてなかったわけで……」
「やっぱり良いところはそこになるんだ。前回の取材でも同じ答えだった」
「SNSがなかった時代は、話しかけるのが億劫でぼっちになる人もいたもんね。それがSNSのおかげで簡単に気の合う友達ができるようになったっていうのは良いことだよな。ただ、簡単につながれるせいで不要なトラブルに遭って逆にぼっちになっちゃう原因にもなるし……」
「まあ、SNSは距離を近付けるキッカケにもなりますし、遠ざけるキッカケにもなるってことですね」
「すげえ、綺麗に締めてきた……。SNSについてのいろいろな闇やメリット・デメリットも一通り聞けたので、取材はここまでにしたいと思います。本日は本当にありがとうございました!」
「ありがとうございました!」
「ありがとうございました!」
まとめ
さて、2週にわたり若者のSNS事情を調査してきました。
前回は大学生、今回は高校生にお話を聞いてみて、学校生活とSNSが密接しているのって実際どうなの? というようなことを聞いてきたのですが…………。
めんどくせえわ!!!!!!!!!!!
もう当人たちもそう思ってるんだもん。めんどくさいよ! これ! もう仲良い人達同士でグループ作ってればいいじゃん!?
驚いたのがスクールカーストが普通に目に見えて存在してるってことですよね。あんなもんあるのアメリカの学校だけだと思ってました。
僕ら世代が中高生の時も、もちろんそういったものはあったと思います。クラスのトップはあいつだな〜とか……だけど、別にそのトップと関わりたくなければ関わらなければよかったし、それぞれ別々のグループで分かれていれば済んだ話だったんですよね。
それが今はSNSというもので全員が1つにまとまってしまい、結果クラスのリーダーに気を使わなければいけない空間が存在してしまっている……。SNSによってスクールカーストが具現化されてしまっている感じがします。
ただ、もちろん悪いことだけではありません。今回インタビューした4人中4人が「SNSがあったことで友達ができた」と答えました。
クラスで隣の席になった人と仲良くはなったけど、結局性格や趣味が合わずに疎遠になってしまった……なんて昔はよくありましたが、SNSで先につながっていることで、自分と気が合う人を簡単に見つけることができるようになったわけです。これに救われた人も相当いるのではないでしょうか。
SNSというものでクラス全員がつながる時代、便利の裏でさまざまな要因からストレスを抱えてしまう人も多いと思われます。
ですが、ジェノサイド杏子さんと話していて思ったのは、自分なりのスタンスを持ってSNSを使っていると不要なストレスを受けることは減るのではないかということ。もちろん、ジェノサイド杏子さんは学校の環境にもかなり恵まれているとは思います。ですが、ジェノサイド杏子さんほど徹底して自分の意見を貫かなくても、ちょっとSNSへの気の持ちようを変えてみるだけで、SNS疲れした心や体が少しだけ楽になれるかもしれません。
さて、中高生のSNS事情。どうでしたか?
僕と同じ世代、またはもっと上の世代の皆さんは今の若者の学校生活と当時の自分たちを比べ、そこにある変化を面白く思っていただければ幸いです。今、現役の中高生の皆さんは、この記事から混沌とした学校とSNSの世界を生き抜くためのヒントが得られればうれしいです。
……僕が中高生のころ、SNSがなくて本当によかったです。
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