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「クイズ王」はクイズ王になる前には何者であったのか?(3/3 ページ)

さえない1人の中学生が、世間から「クイズ王」と呼ばれるようになるまで。

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 テレビでの活躍も目覚ましいクイズ作家・古川洋平さんは、テレビで「クイズ王」として有名になるはるか昔、高校時代からその強さでクイズ界をリードしていました。かつては民間企業での営業や公務員などの職種を経験し、幅広い経験を積んだ後に作家、そしてクイズ王の道へと進まれました。

 『THEクイズ神』第1回で優勝した渡辺匠さんは、2000年台後半から圧倒的な知識量でその名を轟かせていました。こちらは社会人になってからクイズキャリアをスタートさせており、それまではまったくクイズと無縁の生活だったそうです。

 一方で、クイズ業界でその名が轟くのを待たずしてテレビでブレイクする、つまりハナから「クイズ王」として有名になるパターンもあります。

 『頭脳王』シリーズ2連覇の亀谷航平さんは、高校時代『高校生クイズ』準優勝という実績を挙げてはいましたが、注目のプレイヤーとは見られていませんでした。しかし、『頭脳王』で一躍「クイズ王」に名乗りを上げています。ご本人も「あまりクイズの勉強はしない」とハッキリ仰っていますし、生活の中での吸収力が段違いなんだと思います。

 2016年の『東大王』で優勝した僕の後輩・鶴崎修功もまた、一気に「クイズ王」を手にした男です。大学生の中では急成長株として知られていましたが、クイズ業界ではあまり名の通ったプレイヤーではありませんでした。『東大王』優勝時のクイズキャリアはわずか2年半。力があることを知っていた僕も、収録中「この男、こんなに強かったとは……」と底知れぬ恐ろしさを感じた相手です。

クイズ王になるために唯一必要なもの

 このように、クイズ王の「クイズ王以前」は人によってさまざまで、クイズの鍛錬を長く積んで称号を得る場合もあれば、いきなり栄誉を手にするパターンもあります。

 これらはやはり「クイズ番組ができたタイミング」「実力をつけるための期間」に左右された結果だといえます。「クイズ王」の出現はテレビのタイミングに左右されるため、たまたまパワーを付けた時期と番組が被る人もいれば、長年実力を維持してきてようやく番組に恵まれる人もいるのです。もちろん、機に恵まれていてもその時期に練習を怠っていればクイズ王にはなれません。

 このような状況の違いから、ひとくくりに「クイズ王」と言っても実にいろいろな経歴の人間が集まるわけです。しかし、僕はこれら多様な経歴を持つ「クイズ王」たちにおいても、全員に通底する素質がある、と考えています。クイズ王になれるのはどのような人間なのか。クイズ王とは一体何者だったのか。

 それは、「人一倍好奇心が強い人」です。

 テレビカメラの前で、歴戦の猛者を退け優勝するというのは並大抵のことではありません。優勝までにはウン十問という問題を正解しなければならないわけです。そのために必要な知識の幅広さは、趣味趣向でカバーできる範囲を優に超えます。興味の幅が広く、何事にも面白さを見いだせる人。分からないことを強く知りたいと思う、前向きな欲深い人。このような素質を持つ者こそが、知る楽しさを努力に変え、クイズ王になれるほど鍛錬を積むことができる人間なのです。

 逆にいえば、クイズ王になるためには好奇心以外は不要です。学歴、出自、職業、年齢、全てがバラバラ。先ほども述べたように、経歴の差が認められているのです。それゆえ、どのような人生を歩んできた人でも、クイズ王になるチャンスはあります。

 ひとたび試合が始まれば、階級も何もない、ただ己の人生経験の全てを競わせる競技、それがクイズです。クイズは言語さえ共通していれば人を差別しません。

 クイズ王を作るためのパーツは、好奇心と努力、ただそれだけ。さあ、あなたは今、「クイズ王以前」の場所にいるのかもしれませんよ?

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