なぜ大穴は理不尽がいっぱいなのか 『メイドインアビス』の作者つくしあきひと、初インタビュー(2/3 ページ)
「虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!」第85回。アニメが絶賛放映中『メイドインアビス』の作者・つくしあきひと先生に、緻密なファンタジー世界はどうやって生み出しているか根掘り葉掘り聞いてみました!
リコはドラえもん、レグはのび太 ありがたい“招きナナチ”
―― 主人公ってレグなんですね。何となくリコが主人公だと思っていたのですが……。
仕掛け絵本の時は、1人で穴に潜っていく話だったんですが、その時の主人公の個性を2つに分けたのが今の2人です。絵本の主人公が男だったので、リコも少年性を残した女の子という感じなんですが、そういうのもあって、他の少年たちより前のめりなんです。
『ドラえもん』で言えば、リコがドラえもん、レグがのび太という感じで。能力的には逆なんですけど、リコはどんな状況でも「こっちに行けばいい」と意思を示してくれるんです。レグはリコがいないと途方に暮れるんですよ。
最初は第3話のレグが目覚めるところから物語を始めようと考えていたので、レグの視点から物語を描いていこうとしていたんですね。だからレグの方がいわゆる主人公として、読者の感情移入先としていてくれているのかな、と思っています。
感情移入できる主人公はあんまり男の子のおケツに棒を刺したりしないと思うんですよね。物語はだいたいレグ視点で描いています。
―― キャラクターを語るうえで欠かせないのは、やはり「成れ果て」のナナチですよね。登場してから、ネット上でも作品への注目度が一気に高まったような気がします。
2巻のオーゼンとのバトルでちょっとだけ話作りに手応えがあったんです。当時、1巻ごとに「いいもの読んだな」と読み応えのあるものを作っていこうという考えが僕の中に大きくて。ただ、3巻では徹頭徹尾悪役の黎明卿・ボンドルドを出すと決めていたので、彼を引き立てるためにナナチが生まれました。
実は2巻の売れ行きがあまりよくなくて、3巻収録分の途中で「畳み方をどうするか考えなければいけませんね」という話になったんですよ。でもその時にはもうナナチが出てきてたので、この子をめちゃくちゃ面白くしてやろうと思いました。
その3巻から不思議なほど反響が変わったので、完全に「招きナナチ」ですね。
―― ナナチの魅力は「んなぁー」という口調や見た目といった単なる属性的なかわいさだけではないですよね。抱えている背景がよりキャラクターの魅力を高めているというか……。
最初「ナナチは死ぬかもしれない」って担当編集さんに言ったんですよ。リコとレグを先に行かせるために、ボンドルドと刺し違えて死ぬだろうと。ただ描き進めていくうちに「案外生きそうだぞ」と。それと「OZ」の経験で、1人より2人、2人より3人の方がより強固な形で支え合えるんだと思ったんですね。「OZ」のパッケージにも「なぜOZは3人なのか?」って書いてあるんですが、このゲームは僕の中で根深いです。
枠線の手書き、破壊 「マンガってもっと自由だ」
―― 枠線が手書きだったり、画用紙のような紙に描いてあったり、温かみある雰囲気の紙面も印象的です。これはアナログで作画されているんですか?
いえ、何から何までデジタルです。清書した後、水彩で色を塗るのと同じように濃淡を重ねていって、最後にハイライトを入れます。背景はスキャンした画用紙の模様が入ってます。
―― こういう表現だからマンガとして面白くなったところなどはありますか?
2巻でレグとオーゼンが戦う時に、オーゼンがレグを踏んづけるシーンがあるんですけど、そこでコマを割ってるんです。
2話目から実験的にコマを手書きにしていたんですが、そこで初めてやってよかったなあって。マンガってもっと自由だってことをいろんなマンガを読んで知ったので、他にも吹き出しでスピード線をつけたりだとか、不思議なこともやってます。
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