なぜオッサンはかわいいに憧れるのか 「バーチャルのじゃロリ狐娘YouTuberおじさん」独占インタビュー(前編)(3/3 ページ)
バーチャルYouTuberが脚光を浴びる中、昨年末にわかに知名度を上げた「バーチャルのじゃロリ狐娘Youtuberおじさん」こと「ねこます」氏にインタビューしました。
「俺、ずっとこんなことやってるのかな」と目覚めた
── そもそも何かものづくりを始めようと思ったきっかけというのはなんだったんでしょうか?
ねこます:そこは結構熱く語りたいところで、自分の創作歴は5年半ぐらいなんです。始めたきっかけは、昔、工場勤務で自分のせいでできてしまった再製作品(不良品)を抱えて走って、いろいろな方に「すいません」と頭を下げて回って新しいものを作り直してもらっていたときに、「俺、ずっとこんなことやってるのかな」と思ったんです。
── えー!
ねこます:要は「この狭い工場で仕事できない奴として一生走り回っているのかな」と思ったときに、何か技術を身に付けたいと思ったわけです。で、いろいろ悩んだ結果、自分ができることを増やそうとして絵を描き始めて、その延長にLive2Dがあったり、それをFaceRigに持って行ったり、ゲームにしたわけです。3DもVRが好きだったので始めて、やっていたうちにここにたどり着きました。
── でも思い立っただけで、この可愛いモデルをつくるところまでたどり着くのはなかなかできないことです。
ねこます:MMD(「Miku Miku Dance」※編集註:フリーの3DCGソフト)の世界なら、これくらいのモデルをつくれる人はいっぱいいると思います。
── とはいえセンスもありますし、かなり細部までこだわられてつくっているのが伝わってきます。今の前にも猫耳のキャラもつくっていたわけですよね。
ねこます:そうですね。FaceRig用にもキャラをつくっていました。Live2Dで動かしてて、FaceRigで使ってましたが、一通り遊んでそのあとに3DでMMDのキャラをつくろうと思ったんです。ちょっとプログラムにも触ったりしてましたし。
── それっていつぐらいの話ですか?
ねこます:3Dを触り始めたのは、去年の9月ごろが初めてですね。
── 去年!? わずか1年でここまできてるわけですか。
ねこます:でもテクスチャとかはその前の絵をやってる期間があった。実質3D自体を始めたのは1年ちょっと前なんですが、全体で見たら過去に学んだことを生かしている部分があったりします。
── 工場で思い付かれる前というのは、絵やCGの創作活動はやったなかったんですか?
ねこます:一切してなかったです。
── マジで!?
ねこます:自分がちょっと変わってまして、昔からお絵描きが好きだった人がやり続けたというタイプじゃなくて、ある時突然やろうと思い立ってやった感じです。
── それはおかしくないですか。なんかモノリスとか触りませんでした?
ねこます:でももしかしたら、そのときの再製作品がモノリスだったのかもしれません(笑)
── なかなかありえないです。プログラミングも昨年9月からですか?
ねこます:プログラミングはそこから半年ぐらいですね。絵は2年ちょっとぐらいの工場勤務の間に描いていました。そこから辞めてニートやバイトしたりしなかったりという期間で、FaceRigや3D、Unity、プログラミングをやっていたという感じです。そんな感じで中途半端にいろいろ手を出して行った感じです。
── でも5年の努力がここに実っているわけです。
ねこます:なんか怖いですけどね。今の状況が。
── Unityを覚えるのって、大変じゃないんですか?
ねこます:それも言いたいところで、ただ漠然とUnityや3Dを覚えるのは大変で続かなかったりしますが、例えばVRChatみたいな出口があれば、やった成果が直に返ってくるのでモチベーションにつながるんです。実際、VRChatの人たちは何かつくっているアクティブな人たちも多いです。3DやUnityをやりたいという意欲が高まって、成果がVRで返ってくるので、学習の場としてかなりいいと思います。
── それは「創作を見せて直でコメントをもらえる場」として機能しているniconicoみたいな感じですね。
ねこます:そんなニュアンスであってます。しかも1からアプリをつくるとなると、題材を選んだり、完成させるのも大変だったりしますが、VRChatの場合は自分でやるのは一部なので小分けに学習できるわけです。ある程度ゲームの土俵が決まっている上なので、自分のやりたいことも見つけやすい。完全にゼロだと大変じゃないですか。VRコンテンツつくろうとなったときに、ライブなのか、それとも音ゲーなのか、銃撃戦なのかというところから考えてやっていくのは大変ですが、土台ができているところに乗っていくのなら楽だと思います。
── しかし、Unityの中の人も喜ぶいい話だと思います。
ねこます:ほんとUnityには感謝しています。「魔力Unity」ですよね。VRの住人は、Unityと「Unreal Engine」なくしては生きていけないですから。
── モデルはMMD向けに作ってる感じですか?
ねこます:3Dモデリングソフトの「Blender」でつくってFBXで書き出して、Unityに持って行ってる感じです。一応、「Metasequoia」(メタセコイア)も使ったことがあります。根底にあるのが、絵もLive2Dも3Dも、ケモミミの女の子を作りたいというのがあったので、やってることの本質は同じで手段が変わっているだけです。
── そのケモミミの女の子をつくりたくて、最終的に自分がなってしまったわけですが、その理由は何でしょうか。
ねこます:まずケモミミの女の子がむちゃくちゃかわいい。ケモミミがついていない女の子が90点だとすると、ついてる子はまぁ1058点で、補正のつき方がグイッと上がるんです。好きだからつくるんですけど、なぜ好きかと掘り下げると答えれないです。多分、DNAがかわいいものだと認識するようになっているのかなと。なのでケモミミの女の子に引かれていて、つくりたいし、なりたいです。
── きっかけとなるアニメやゲームがあったりしたんですか?
ねこます:特別好きな作品がありますが、それをトレースしようとは考えていないです。
── なぜ巫女(みこ)なんですか?
ねこます:それはVRChatの中にutauの「櫻歌ミコ」(おおかみこ)という人気キャラがいて、それにあやかって巫女にしました。
── 髪の毛がオレンジなのは、狐ベースだから?
ねこます:そうですね。キツネ色のデザインってことです。
── 全部1人でやってるわけですよね。
ねこます:そうですね。ただ、動画に関しては結構素材を使わせていただいていますが、だいたい1人でやっています。
── でも会社としてバーチャルキャラに参入するところも多い中、1人でっていうのがすごい。
ねこます:なんというか山賊みたいな感じですね(笑)。「ヤッホ〜、やってきたぞー!」っていう。「やってるかーい」みたいに乗り込んだ感じです。
※後編はこちら
(TEXT by Minoru Hirota)
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