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「派遣会社なんてないほうがいい」 派遣業界の闇に一石を投じる派遣会社「リツアンSTC」社長が語る本音

「ピンハネ屋」などと言われる派遣業界の実態について詳しく聞いてきました。

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 「派遣会社」と聞くと皆さんはどんなイメージが浮かぶでしょうか。ネットではあまりよくない実態が取り上げられることも多く、「ブラック」「低賃金」「ピンハネ屋」などネガティブな印象を持っている人も少なくないかもしれません。実際、筆者もそういうイメージでした。

リツアンSTC リツアンSTC

 今回、エンジニア派遣会社の「リツアンSTC」からPR記事の相談があったのですが、そんなイメージだったので正直最初は「うーん、派遣会社か……」と不安な気持ちになりました。ところがこの会社、調べてみると派遣するエンジニアをちゃんと正社員待遇で雇用していたり、給与や社員への還元率を堂々と公開していたりといわゆる「ブラック派遣会社」とは毛色が違うもよう。むしろそうしたネガティブなイメージに真正面から向き合っているようで、社長のブログ名も「『ピンハネ屋』と呼ばれて」というむちゃくちゃド直球なものでした。

リツアンSTC 社長ブログ「『ピンハネ屋』と呼ばれて」

 ということで、こちらも「派遣会社ってぶっちゃけ労働者から搾取する『ピンハネ屋』じゃないの?」というド直球な質問をリツアンSTCの野中久彰社長にぶつけてきました。かなり率直な話を聞かせてくれたのでぜひご一読ください。

 ちなみに会社と同じくらい野中社長もユニークな人で、「社長なのにインタビューや講演が極度に苦手」「お酒を飲まないと話せない」という特性の持ち主だったため、今回はリツアン社員の皆さんがお酒を飲ませて半ば騙すようにインタビューの場に引きずり出してきました。どんな社長だよ!

派遣会社社長が本音で語る「派遣業界の闇」

―― インタビューを受けるのが相当苦手らしいですが……今日はよく来てくれましたね。

野中さん:そうなんです、すいません。飲み会は大好きなんですけどインタビューっていうのはどうもダメで。今日は居酒屋で話すだけって聞いてたんですけど……。

―― 会議室に連れ込んじゃってすみません。お酒飲みながらで構いませんので。

野中さん:あっ、そうですか、すいません。

リツアンSTC 最初はえらく恐縮していた野中さん。お酒が入るといろいろとぶっちゃけたトークを展開してくれました

―― 野中さんはもともと別の派遣会社で営業マンとして働いていたんですよね。そこで派遣業界の悪い部分に嫌気が差して自らリツアンを立ち上げたそうですが。

野中さん:そうですね。そこで派遣社員の給料があまりにも安いことを知りました。手取りで10万円台前半しかもらっていないエンジニアがいる一方、派遣会社はそのエンジニアから30万も40万も搾取してるんです。

―― そんなにひどいんですか……。

野中さん:あるエンジニアと飲みに行ったとき「子どももいるしこれじゃ生活できない」と相談されました。それで上司に彼の給料を上げることはできないかと掛け合ったんですが、もう完全無視ですよ。しかも「そんなことよりもっと利益を上げろ」って言われたんです。僕が仕事を頑張れば頑張るほど世の中に不幸な人を増やすことになる、って思って嫌になったんです。

―― なるほど。

野中さん:派遣会社って結局は収益源が「労働者の労働対価」なんですよ。「労働者」という呼び方も僕はあまり好きじゃないんですけど、その方が汗水たらして働いてくれた給料の中から中間搾取して利益を出しているのが派遣会社。だから本当は派遣会社なんかないほうがいいんじゃないかと思ってます。

―― まさか派遣会社の社長がそんなことを言うとは……。

野中さん:いや、本当にそう思ってます。だからリツアンの社員が派遣先で「派遣じゃなくうちの正社員になってくれ」って誘われた場合、リツアンは喜んで送り出してます。エンジニアの人たちにはうちを踏み台にしてどんどんステップアップしていってほしいんです。

―― すごいですね……。でも、それじゃあなんで野中さんは派遣会社を立ち上げたんですか?

野中さん:現状の派遣会社の問題点は何かと言うと、中間搾取の割合が大きすぎることなんですよ。仕事を紹介してほしいという需要がある以上、派遣会社がそれを仲介してある程度のマージンを取るのはしかたがないことではあると思うんです。でもたった1回社員と企業をつなげてあげただけで、その社員は未来永劫労働対価から収益の大部分を中間搾取されていく。これって社会としてあんまりよくないと思いません?

―― そうだと思います。

野中さん:僕たちも生業ですからもちろん中間搾取はさせてもらっています。でもなるべくそれを低くやろうというのがコンセプトです。理不尽な搾取をしてもみんなが幸せになれないじゃないですか。多大な中間搾取をしてる派遣会社がある中で、リツアンという会社のやり方でちゃんと売り上げも伸びて利益が出るということを証明すれば「お前らもこうしたほうがいいよ」っていうのを社会に知らしめられるじゃないですか。僕が派遣会社を作った理由ってそれだけなんですよ。

リツアンSTC 「ピンハネ率」はかなり抑えめ

リツアンSTC 年収の実例や「給料早見表」を公開するなど具体的な数字を多く使っているのが特徴

―― でも他の派遣会社とまったくやり方が違うわけですよね。それで本当にやっていけるんですか?

野中さん:うちの営業マンとか事務員は年収相当もらってますよ。事務をやってくれてる主婦のおばちゃんも年収1千万超えてたりとか。だからやっていけるんですよ。

―― そんなにもらってるんですか! やっぱり働いてるエンジニアの人からあくどく中間搾取してるんじゃ……。

野中さん:いやいや、うちの会社ってやり方がセコイんですよ。例えば派遣会社の経費の多くは宣伝広告費なんです。大きな求人雑誌に1カ月求人広告を出すと100万円とか普通にかかっちゃうんですけど、それをいくつかやるだけでもう経費が何億とかかってしまう。なんでそれでも求人広告を出すかって言ったら、そうしないと人が集まらないからなんですね。でもうちの場合、派遣のエンジニアの人たちが口コミで求人をしてくれるんです。

―― と言うと?

野中さん:例えば田中くんという人をA社に派遣する契約があるとします。リツアンでは「あなたを1時間5000円でA社に派遣するよ。その中から70%を田中くんの給料として払うよ。そうすると年収が700万円くらいになるよ。OK?」みたいに情報を全部オープンにして確認をとるんです。そうすると田中くんも納得した上で働いてくれるし、派遣先で他の派遣会社から来てる人に「リツアンのほうが給料がいいよ」という話をしてくれる。そうすると求人広告を出さなくても人が集まってきてくれるんです。

リツアンSTC ハイボールを「田中くん」と「A社」に見立てて説明する野中さん

―― なるほど……。というか他の派遣会社ってそういう内訳を教えてくれないんですか?

野中さん:そうなんですよ! だから日本全国の派遣社員はみんな自分の派遣会社のこと大っ嫌いなんです。だってクソピンハネしてるから! 「請求単価いくらですか?」って会社側に説明を求めても全部ブラックボックスになっていて無視されるからイラっとするし、自分の本当の給料が見えないから不安も膨らんでいく。うちの会社はそこを全部オープンにしていて、しかも他の派遣会社より給料が高いわけです。そうなるとそりゃ口コミで人が入ってきてくれますよね。

―― 確かに。

野中さん:そうすると大手に高いお金を払って求人広告を出す必要がないから、浮いた経費を営業マンやエンジニアのお給料に還元できるわけです。目先の利益を追わずにエンジニアを正当に評価して給料にも反映してあげたら、どんどん副産物のようにいろんなメリットが出てきて好循環が生まれました。大事なのは最初の「田中くんからいくら利益を取ろうか」って考えるところなんです。そこで目先の利益を追うとその1人が全体になってどんどん悪循環になる。それを隠そう隠そうとして、今度はクレーム対応のための営業マンを雇うことになってまた無駄なお金がかかるんですよ。

―― めちゃくちゃわかりやすいですね……。逆になんで他の派遣会社はそうやらないんですか?

野中さん:最初からそうなっちゃってるからですよね。多分営業マンの方も矛盾を抱えてやってると思うんです。調子こいた言い方をすると、派遣業界の中でリツアンのやり方でうまくいくことを証明してあげればそれに追随してくる会社が出てきて、皆さんにディスられたりしないクリアな派遣業界になってほしいという期待を持っています。

―― それって派遣業界だけでなく多くの会社にも当てはまりますよね。目先の利益を追求するとどうしても1人1人の負担や無駄な仕事が増えていくという。みんなそんなのよくないってわかってるのにどうして止められないんでしょう。

野中さん:どうしても企業の経営者って会社の利益とか大きなところに目がいっちゃうと思うんですけど、会社や組織も1人1人の人間が集まって構成されてるわけじゃないですか。 もっと個人に落とし込んで考えていかないとこれからの時代についていけないような気がするんですよね。

―― それは具体的にはどうしたらいいんでしょう。

野中さん:結局、金です。まずは企業が労働者にどんだけ金を払うかっていうことですよ。

―― 明確だ。誠意は言葉ではなく金額……!

野中さん:「想いだ〜」「夢だ〜」とかわけわかんないポエムみたいなので従業員さんを鼓舞してやらせてもダメですよ。そんなの騙してるだけです。まずお金を与えてあげて、想いとか夢とか人生の幸せに関わる部分は1人1人に勝手にやってもらうべきなんです。社員さんがちゃんと豊かになって余裕ができた上で初めて「じゃあ俺たちもう1回なんか面白いことやろうよ」って言葉に求心力が生まれるじゃないですか。

リツアンSTC お酒も回ってきてどんどん率直な言葉が増えてくる野中さん

―― ほんとそうだと思います。

野中さん:昭和世代のおっさん連中で「経営がどうの、道徳がどうの」ってもっともらしいこと言う人いるじゃないですか。あんなのウソですからね。僕たちはもうガキのころに道徳を学んでるんです。僕の世代だったら『仮面ライダー』だったりもっと若い世代だったら『ONE PIECE』だったり。僕たち大人の役割はガキのときに学んだその道徳が社会でも通用するって証明してあげることじゃないですか。それなのに派遣社員からえげつない中間搾取をして自分たちだけ利益を得るって思いっきり道徳に反してますよね。

―― 大人になればなるほどウソつきになっていきますよね。

野中さん:もう昭和のおっさん連中はダメなので若い世代がこれからの日本をなんとかしないといけないと思うんですよ。だからリツアンの東京オフィスは東大駒場キャンパスの近くにしたんです。普通の一軒家なんですけど、この一部を「KOMAD」というコラーニングスペースにして学生たちに開放してます。

リツアンSTC リツアン東京オフィスにはなぜか学生たちがたくさんいます

―― オフィスの一部を学生に貸してあげてるんですか?

野中さん:そうです。もともと東大の学生と飲んでいるときに「学びの場がない」って言われたのがきっかけだったんですけど、リツアンの社員と学生が一緒にメシを食ったり同じ風呂とトイレを使ったりするちょっとした共同生活のような環境ってなんか昔の「トキワ荘」みたいでいいじゃないですか。そういう青春っぽいものが好きなんですよね。

―― なんか普通のオフィスと違いすぎてあんまり想像できないです(笑)。

野中さん:ぜひ一度遊びに行ってみてください。僕はそういう若い才能にお金を使いたいんですよ。「BeHub」っていう会社も作ったんですが、これは日本の優秀なエンジニアたちを集めてその人たちが中心になって勝手にお金儲けをしてもらいます。で、利益は彼らに全部あげちゃいます。投資じゃなくて「お金だけあげるから自由に使って世の中をよくしてくれ」っていう試みです。

―― え、それじゃ一切儲けにはつながらないと思うんですけどいいんですか?

野中さん:いいんですよ。いい使い方をしてくれる人にお金が回ったほうがいい。僕そうやって資本主義をバカにしてやりたいんです。

―― すごい……! 自分の欲みたいなのが全然ないじゃないですか。

野中さん:いや欲はありますよ! お姉ちゃんのいるお店でちょっといいお酒飲んだりはしたい!

―― それはあるんですか(笑)。

野中さん:でも自分のお金の使い方なんてそれくらいでいいんですよ。ビルを買いたいとか船を買いたいとかそんなチンケな夢じゃなく、もっとみんなが酔える夢を買ったほうがかっこいいじゃないですか。僕はお酒飲んでるだけで基本的には任せっきりなんですけどね(笑)。

いろいろ斬新なオフィス「KOMAD」に行ってみた

 そんなわけで、お話の中に出てきたリツアンの東京オフィスと「KOMAD」にも行ってきました。

リツアンSTC リツアン東京オフィス

 駒場東大前駅からほど近い一軒家。主に1階が学生たちに開放されているコラーニングスペース「KOMAD」で、2階がリツアンのオフィスとして使用されています。リツアンの人たちが普通に仕事をしてる隣の部屋で学生がシャワーを浴びてたりと、なかなか斬新な環境。

リツアンSTC 共有スペースは学生たちが自由に出入りすることが可能

 会社がこうしたスペースを提供する場合、優秀な学生を「青田買い」したいという目的もあるそうですが、KOMADはただ学生を応援したい、若い世代から刺激をもらいたい、ということなんだそうです。ここで出会った学生同士が新しい活動を始めたり、ときにはリツアン社員と学生たちで一緒にバーベキューをするようなこともあるそうで、いい意味で部室的な雰囲気が流れていました。確かにトキワ荘っぽい。

リツアンSTC 集まってくる学生たちはほんとにめちゃくちゃしっかりしてました

 筆者が訪れたときは数人の学生が机を囲んでノートPCを開いており、僕にはよくわからない難しい資料を作ったりしていました。「Slack」などのビジネス向けアプリも当然のように使いこなしていて「マジで東大生って優秀なんだ……」と圧倒されました。誰も昼間からゲームやったり酒飲んだりしてない。

リツアンSTC こんな風に場の規律を守るルールも自分たちで作っています

 お互いの仕事や学びの場は邪魔にならないようにルールが設けられているため、両者の接点はキッチンが多いとのこと。「何作ってるの?」といった何気ない会話をきっかけに交流が始まって、お互いの知識を共有したり息抜きをしたりできるんだとか。ちなみに最初はカレーも作れなかった東大生が研究してめちゃくちゃうまいカレーを作るようになったりすることもあって、リツアンの人たちはそんなところでも若い優秀な学生に刺激をもらっているそうです。

リツアンの派遣社員にも本音を聞く

 最後に実際にリツアンの派遣社員として仕事をしている人にも話を聞いてみました。某大手企業でITエンジニアとして働いているTさんです。

リツアンSTC Tさん

―― リツアンを選んだきっかけを教えてください。

Tさん:もともと別の会社でデータベース管理の仕事をしていました。そのときは正社員だったんですが資格とかも結構あるのにあまり給料が上がらなくて、収入面でステップアップしたいと思ったんです。転職を考えていろいろ探しているうちにリツアンを見つけました。それで面接を受けに行って。

―― あの駒場の一軒家に行ったんですか?

Tさん:そうです。オフィスについたら学生たちがキャッキャしてたので最初は間違えたかなと思って(笑)。面接自体もあまり試されている感じがなかったんですが、「この単価の案件があって給料はこれくらいになりますよ」って正直に教えてくれたので印象はよかったですね。

―― 条件などに特に不満はなかったですか?

Tさん:給与やマージンなどを具体的な数字で説明してくれるので納得感は強かったです。リツアンは派遣社員でも全員リツアンの正社員として雇用してくれるので、福利厚生などの面も安心できました。たまたま前職のスキルを生かせる簡単なプロジェクトがあったんですが、その仕事を評価してもらえて今は障害対応などの大きな仕事も任されるようになりました。

―― なるほど。それだけ順調だと、派遣社員でいることで自分の給料の一部を「ピンハネ」されて損してるなーとか思わないですか?

リツアンSTC

Tさん:……実は今の派遣先から「正社員にならないか?」って誘いも受けてるんです。

―― おお! リツアンだとそれを応援してくれるんですよね。

Tさん:そうなんです。でもしばらくは派遣でいいかなという気持ちもあって。

―― えっ、どうしてですか?

Tさん:例えば派遣だと正社員向けの会社行事とかミーティングとかに参加しなくていいっていうメリットもあるんです。自分はそういうのをめんどくさいと思ってしまうところがあるので、今のほうが居心地がよかったりして。

―― そういうパターンもあるんですね。

Tさん:今の現場には他の派遣会社さんから来てる人もいるんですが、「うちは待遇よくないんですよ」みたいな話もよく聞きます。そういうときにリツアンの話をするとやっぱり興味を持たれますね。フリーランスで行くのは不安だけど正社員になるのも大変かも……って思ってしまう自分にとって、リツアンは両方のいいとこどりができている感じですね。


 ということで、「リツアンSTC」という派遣会社についていろいろな角度から掘り下げてみました。実際のインタビューでは野中社長は5分に1回くらい「もう飲みに行きましょうよ!」と言っていて話を聞くのが大変だったんですが(本当にインタビューが苦手らしい)、エンジニアのことを第一に考えていて今の派遣業界を変えたいと思っていることは伝わったんじゃないでしょうか。

 リツアンの公式サイトでは求人広告などでありがちな「やりがいのあるお仕事」「明るく楽しい職場」のような抽象的な言葉ではなく、給与体系やスキルに応じた待遇などが具体的な数字で書いてあります。現在の待遇に不満があるというエンジニアの方は、一度チェックしてみるとよいかもしれません。

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提供:株式会社リツアンSTC
アイティメディア営業企画/制作:ねとらぼ編集部/掲載内容有効期限:2018年3月12日

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