朝日新聞社採用チームのTwitterが3月26日、「各社の採用担当者のみなさん、『リクルートスーツで来なくていいですよ』と共同宣言しませんか?」と呼びかけて話題に。後日28日に、実際にFacebook上でリクルートスーツで来なくても良いとする宣言を掲載しました。
同社採用Twitterは「採用担当者は受験者の個性を見たいわけで、服装もひとつの自己表現」と、リクルートスーツ以外の服装で面接する有効性を説明。ただし投稿には、「そう宣言すると、逆に受験者たちが迷ってしまうんですよね。どうしたらいいか、簡単なようで難しい……」とも書かれており、リクルートスーツが定石化している現状では一筋縄にいかないことを示唆しました。
このツイートはまたたくまに5000リツイートを突破。SNSでの反応は賛否両論で、賛成意見は「『来なくていいですよ』でなく『禁止』にしましょう」「当社は昔からなるべく私服でくるように言ってます」といったもの、否定的な意見は「(就活生は)一日何社も受けるのでスーツと普段着の両方を持ち歩くことになる」「服装で優秀な人間を判定できるわけがない」といったものが見られました。
同社は28日、自社Facebookアカウント上で「朝日新聞社の採用関連イベントには、黒や濃紺のリクルートスーツで来ていただく必要はありません」という宣言を掲載。ただしこれはリクルートスーツの着用を禁止するものではなく、「(リクルートスーツ着用は)まったく問題ありません」としつつ、「リクルートスーツを着るのが苦痛、自分らしくないと思われる方は、無理して着る必要はありません」と呼びかけました。
朝日新聞のこの「宣言」にはどういった背景があったのか? そのねらいについて、朝日新聞の担当者に取材しました。
朝日「内定者の声を反映」
――スーツで来なくて良いと提案した理由は?
朝日:スーツ全般ではなく、「黒や濃紺のリクルートスーツ」という、いまの就活生で一般的なリクルートスーツで来る必要はないと提案させていただきました。
「就活生の負担を軽減したい」ということです。弊社の内定者に聞くと「リクルートスーツを着るのは嫌だった」「ヒールのある靴でさまざまな会社を訪問しなければならず、足が痛くなった」という声が多くありました。ただでさえ就職活動はきつい経験なのに、服装についてもつらい思いをさせているのであれば、それを少しでも和らげたいと思いました。
ただ、Facebookの「宣言」でも書かせていただいた通り、リクルートスーツにはメリットもあり、そのメリットを感じる就活生も少なくないと思われますので、リクルートスーツで来ていただいても構いません。
――説明会だけでなく、面接でも私服OKということ?
朝日:面接も「黒や濃紺のリクルートスーツ」で来ていただく必要はありません、ということです。また「マナーは少しだけ意識してください」とも表明しました。それぞれの方がその場にふさわしいと考える服装で来ていただければと思っています。
――批判的な意見も上がっていますが。
朝日:さまざまな意見を参考にさせていただきたいと思います。
既に私服面接を試みている自治体も
朝日新聞は「リクルートスーツで来なくていい」という提案でしたが、さらに踏み込んで「1次面接はスーツ禁止」を表明した自治体もあります。昨年(2017年)7月に私服での面接を行った兵庫県西宮市の人事課に取材しました。
――スーツ禁止の手応えはいかがでしたか。
西宮市:受験生にリラックスしてもらい、できるだけ普段通りの姿を見せてもらえた感触はあります。ただ、役所内で特段大きな盛り上がりがあったわけでもなく、いつも通りの採用試験が行われたというのが率直な感想です。来年度どうするかについては検討中です。
――受験生の反応は?
西宮市:入社は4月になってからですので、受験生が実際にどう感じたかのフィードバックはまだ拾えていません。
――面接官も私服?
西宮市:面接官も私服です。片方だけ私服では、圧迫感が出てしまいますので。
――服装で人間を判断するのはいかがなものかという意見もありそうですが。
西宮市:服装は採点基準ではなく、あくまで面接の中でのやりとりを見て判断させていただいてます。あくまで当日リラックスしてもらうための試み、ということです。
――ちなみに、奇抜なファッションの人はいなかったですか。
西宮市:一般的な夏服だなあという感じで、皆さん常識的な服装でいらしてました。
私服で面接を行った担当者の感想は、スーツでの面接時と比べて「あまり変わらない」という少し意外なものでした。ただし、受験生がリラックスした状態で面接に臨みやすいという点ではやはりメリットも感じられたとのこと。
「宣言」を行った朝日新聞の採用過程が次年度にどうなるのかも気になるところ。結果を受けて、また情報発信してもらいたいですね。
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